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……私は登校に電車を使っています。
駅まではお母さんに車で送ってもらって、それから電車で30分ほど。
学校は駅を降りてすぐのところにある、近隣では有名な私立校。
何が有名なのかというと、ちょっとお金のかかる所や、有名人や有名人の子供が通っていたりする所。
それと、制服が可愛い所……私も、この可愛い制服はとても気に入っています。
目立つ制服のせいでしょうか、学校でもよく注意が促されます。
寄り道はしないようにとか、町中で声をかけられてもついて行かないようにとか……痴漢に気をつけなさい、とか。
でも、私には分かりません。どのように注意すればいいのでしょう。
どう注意していれば、痴漢に遭わずに済むのでしょう……注意していても、さわられてしまうのです。今も、お尻を。
数日前から、登校する時も下校する時もお尻をさわられるようになりました。
最初はカバンが当たってるだけだと思ったり、人と擦れているだけだと思っていました……でも、違いました。
今、お尻に触れているのは明らかに男の人の手です。
お父さんと同じくらい大きな手が、スカートの上からですが、お尻を撫で回しているのです。
右のお尻を、左のお尻を、順々に……。
不思議なことに、手だと分かった瞬間、痴漢だと分かった瞬間から、一気に寒気を覚えるようになりました。
それまでは擦れているだけだと思っていたのに……それは恐怖なのでしょう。
知ってしまったことで恐怖を覚えてしまう。
知らなければ怖くはなかったのに……でももう、知らぬフリはできないのです。
きっと痴漢も、私が気付いたことを悟っているのでしょう。
それでも痴漢はさわるのをやめず、むしろ堂々とするようになってきました。
何度も声を出そうと思ったのですが、口は開けど声は出ませんでした……きっと恐怖で萎縮しているのでしょう。
今のところこの痴漢は私が1人でいる時にしかさわってきませんし、駅に着いてしまえばホームまで追いかけてくることはありません。
それに、ただお尻を撫でられているだけ……。
登校時は途中の駅で友達と合流することがあり、そうなればいなくなります。
下校時も途中までは友達がいるので、1人になるまではさわってきません……だからなるべく1人にならないよう。
友達に頼んで、なるべく登下校を一緒にしてもらうようにしています。
でも、その子にも痴漢されていることは恥ずかしくて言えません。
友達にも言えないのだから、悲鳴を上げるなんて……。
見ず知らずの大勢の人たちに、私は痴漢されています、なんて恥ずかしいこと、私はとても言えないのです……きっと痴漢は、そのことにも気付いているのだと思います、だから……。
だから、今も1人でいる私のお尻を執拗に撫で回しているのだと思います。
ゾワゾワとした怖気と嫌悪感が体中を這い回って、ため息ばかりが漏れ出します。
こんなことをして何が楽しいのでしょうか。
どうして私が、こんな恐怖を覚えながら登下校しなければならないのでしょうか……頑張って入った大好きな学校なのに、毎日が憂鬱で仕方ありません……私に、もっと勇気があれば。