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■いもうと08『兄と同居している社会人のいもうと』
■01
深夜0時を少し越えた頃。
厳重に閉めておいた鍵を難なく開き、こっそりとした足取りで部屋に入ってくる男がいる……その男は酒臭い息を潜め、私がいる場所に来て……倒れ込む!
こら兄貴っ、また酔っ払ってるわね!? どうしていつもいつも、ロクに飲めもしないお酒を飲んで帰ってくるのよ! ……はぁ? ただいまって……はいはい、おかえり。
さっさと寝ろ。
動けない? あっそ、それなら床で寝なさい。
私はもう寝るからね……って、ホントにグーグー寝るな! あぁもうっ、起きなさいよ……ん、んん! ほら、シャンとして。
ったく~~、これのどこが将来有望なエリート社員なんだか……上司の覚えが良くて毎度毎度飲みに連れて行かれるのはいいけど、その度に面倒見させられる私の身にもなりなさいよね。
それに、こ、この前なんて……ごくんっ……あ、こら! どこさわってんのよっ……って、また寝ぼけて~~! 妹のオッパイ掴むんじゃないわよっ。
こ、この前なんて……なんてっ。
前に酔っ払って帰ってきた時には、のしかかってキスしてきた! 愉快な夢でも見ていたんだろうけど、こっちはいい迷惑。
しかもこの馬鹿、翌朝にはまったく覚えてなかったし!
いやまぁ、覚えられてても困るんだけどさ……キスっていうか、顔をくっつけてきただけと言えなくもないし、ちょっと唇が当たった程度だから別にいいけど……いいんだけど!
あぁもう、抱きつくなって言ってんの! ここが会社なら、いくら酔ってるっていってもセクハラで即解雇よ!? 私の会社なら解雇どころか告訴されるんだからね!? ……ったく~~。
あ……ねぇちょっと、お風呂はどうするの……って、こんな状態で入れるわけないか。
目覚まし、15分前にセットしておくからね? いい? ……はいはい、って、まったくもう。
ほら、ネクタイ外して……ズボン脱ぎなさい。
シャツもよ……おとなしくしなさい! あ~~、お母さんの苦労がよく分かる~~……っていうか私はあんたのママか!
こんなんでよく今まで一人暮らししてられたわね……兄妹で2人暮らしなんてどうかと思ったけど、これなら確かに納得……って、苦労してるの私ばっかりじゃないのよ~~!
そりゃまぁ、転がり込んだの私だけどさ……だってしょうがないじゃん、この辺家賃高いし……兄貴の方が高給取りなんだし……家賃、半分以上出してもらってありがたいけど……。
お互いの将来のためにお金を貯めておきなさいって、それは分かるんだけどさ。
普通、社会人にもなって兄妹で同居したりしないわよね……誰にも言えないし、家に友達も呼べないし。
もちろん、彼氏も呼べないし! ……いたことないけどっ。
うぅ~~もぉ~~……え、なに? 私がなんだって? え……キミ、可愛いね? は、はぁあ!? 誰と間違えてんのよーっ!
ちょっと兄貴、そういう人がいるの!? それとも変な店行って、そういう台詞吐きまくってるワケ!? そんな軽い男に育てた覚えはない……ないって、お母さんもきっと言うわよ~~!?