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失礼いたします、お兄様。今、お時間の方よろしいでしょうか……あら? またお洋服のままでお休みになって……え? 起きて……あら、寝言ですか。
ふふ、私の夢を見ていますの?
それは良い夢ですか? それとも……最近は私のことで色々と気を揉ませてしまっていますものね。
悪い夢でないことを祈るばかりですわ……あら。ふふ、微笑んでいらっしゃる。
どうか、どうかあ夢の中の私には、無茶を言われないようにしてください……今の私のように、お兄様の心を乱すような真似はされないでください……性をもてあそぶような真似は……。
えぇ、分かっています。私がどんな無茶を言っているか、酷いことをしているか。
お兄様は決して私に手を出さない……それが分かっていて、ワガママを押しつけて……でも、それでも。
私は、お兄様と触れ合いたいのです。愛し合いたいのです。つながりたいのです。
心も体も、すべて混じり合いたい……愛しているから、愛していますから、愛されたいのです……もっと。
頬にキスされれば唇にも欲しくなるのです。
唇にキスされれば舌を絡ませたくなるのです。
お口を味わってしまうと別の部分も味わいたくなるのです。
首筋を、胸を、お腹を……股間を。
お兄様の男性の部分はとても美味しくて、一度味わってしまったらもう逃れられないんです。
その匂いからも、舌触りからも、手触りからも、カウパーのお味からも、そして精液からも。
離れられなくなって、もっともっと味わいたくなって、愛したくなって……それでも足りなくなって、愛されたくなってしまうんです。
たとえそれが、性をもてあそぶことであっても。
子供を作ることのできない性行為は生物的には無駄なことなのかもしれません。
それに蒙昧なことなのかもしれません。
ですが愛情を示す行為としての意味はあると思いませんか?
兄妹だから許されない行為だと一蹴してしまうのは、あまりにもむごいことだと思いませんか? いいえ、お兄様はそんなことはなさない……私にむごいことなど決してしない……。
でも、でも私はつながりたいのです。
ですがその望みは叶えていただけない。
私にとって、それはとてもむごいことなのです。
ワガママと分かっていても尚、欲してしまうのです。
ですからせめて、心の中でつながらせてください。
せめて、心の中でだけでもお兄様の愛を……お兄様から、私に愛をください。
私にねだられるのではなく、お兄様から、どうか……。
私はすべて受け入れます。お兄様のすべてを受け入れたいのです……愛しているから、愛しているから。
お兄様、たとえ兄妹でも、私は心からお兄様をお慕い申し上げております……。
あ……あら、お兄様。お目覚めですか? ふふ、いやだ。
何もしていませんよ……まだ何も……えぇ? 泣いてなどいませんわ。
お兄様の寝顔を拝見できて何を泣くことがありましょう。
……いいえ、幸せに涙がにじむこともあるかもしれませんね。
お兄様とこうしていられる幸せに、私の心が潤って……あふれた思いが滴となって、涙に変わることがあるかもしれません。