3
■03
もしもし、夜分申し訳ございません……はい、私です。
あの、お時間大丈夫ですか?
え、そんなに遅くないですか?
いつも、何時頃お休みになるのですか?
……はい、はい。
そうでしたか、それではまだまだ時間の余裕はあるようですね。
え、私ですか?
あなたほどではありませんが、私もまだ十分に起きていられる時間ですよ。
たまには、寝てしまいますけど……。
もちろん、今日は大丈夫です。
このような時間に電話して良いものかと、しばらく悩んでいましたので、まったく眠気はありません。
あなたの声を聴かせていただいているので尚更です。
え、何時でも大丈夫、ですか?
深夜でも、日付が変わっていても、明け方だったとしても……ありがとうございます。
非常識な時間にかけることはありませんけど。
それでも、その様に仰っていただけるのが嬉しいです。
携帯電話だと、本当に何時にでもかけられるのがいいですよね……えぇ、私も持たせてもらえたのは今の学校に入ってからです。
以前は電話となると、必ずお父様かお母様のお許しがないといけませんでしたから……今も、利用料金のチェックはされますね……いやだ、私はお金持ちだなんてことありませんから。
お父様はほんの少し持っているかもしれませんが、それはお父様のものであって私のものではありませんし……ですから携帯電話も、お小遣いの範囲でしか使っていません……はい。
おかしな使い方をしていないか、チェックされているだけで……だからといって、さすがに発信や着信の履歴までは見られませんよ。
そこはプライバシーですから、家族であってもおいそれとは……。
えぇ、ですから、あなたとの交際については、まだ秘密のままです……だ、だって、なんて話したらいいのか……お夕飯の席でいきなり、私、男女交際を始めました、などと言おうものなら。
あぁ、どんな反応を見せられるか、私わかりません……もちろん、頭ごなしに怒られたり、反対されるようなことはないと思いますが……えぇ、ありませんよ。
ふふ、心配ですか?
ですから、うちなんて大した家柄ではありませんので……と、言いますか、もし大層な家柄だったとしたら、あなたは私に恋心を抱いてはくれなかったのですか?
違いますよね?
あぁ、良かった……けれど、本当は少し心配でした。
うちのような中途半端な家柄だと、おかしな気を回される方もそれなりにいらっしゃいまして……私、そういうの好きではありませんから。
あっ、すみません、つまらない話をしてしまいまして……今日はこれで失礼いたしますね。
眠る前に、あなたの声が聞けて嬉しかったです……また、電話してもよろしいですか?
はい、ありがとうございます……こ、恋人同士ですものね。
遠慮は必要ない、と……はい、嬉しいです、ありがとうございます♪
そ、それではですね、あの、その……。
最後にひとつ、聞かせていただきたい言葉が……お、思いを言葉にしていただければ幸いです……はぁ、はぁ……はい。
私も好きです、あなたのことをとても好ましく思っていますよ♪