01
ふぃ~、呑んだ呑んだ。
美味しかったわね♪
……っと。
だから、今日は私持ちだってば。
何度も言わせないの……今日はちょっと遅くなったけど、君の就職祝いなのよ。
だからここは、直属の上司である私が奢るのが当然でしょ……でも、じゃないの。
私の言うことが聞けないわけ?
会社の上司であり、しかも同じ母校の先輩でもあり、更にその上。
家庭教師もしたことがある先生であるところの……そもそも幼馴染みのお姉ちゃんである、この私の言うことは絶対なのよ、ぜーったい!
……はい、分かればよろしい♪
んふふっ。
それにしても、私たちの関係ってずいぶんと肩書きが多いわよね……最初はただ家が隣同士ってだけだったはずなのに、今や上司と部下にまでなっちゃうなんて。
本当、びっくりよ。
えぇ?
馬鹿ね、嫌なわけないでしょ?
うーん、気心が知れてる分、仕事的にやりにくくなる時があるかもしれないけど……な~んちゃって、ないない。
私は厳しい上司だからね?
覚悟しておきなさい?
仕事ではちゃんと厳しく接してあげる……え?
あぁ、家庭教師してた時も厳しかったかもね、あはは……でも、そのおかげで私と同じ高校に通えたんだから。
そうそう、良かったでしょ?
おかげで先輩後輩でもあるわけだし……そうね。
年の差で、同時期に通うことができなかったのはちょっと残念だったわよね。
……えぇ?
やだもう♪
この歳になって、高校時代のこと話せるなんて思いもしなかったわ。
あははっ、君の制服姿だってすぐに思い出せるわよ?
あの頃は可愛くってねぇ……あぁ、今でも可愛いわよ?
あはは、ごめんごめん。
だって、私にとっては年の離れた弟みたいなもので……そんな君と、こうしてお酒を飲める日が来るなんてねぇ。
いつの間にか、立派な大人になっちゃって……。
いやだ、なんだか弟どころか息子相手みたいになっちゃってるわね。
まだそこまで老け込んでは……え?
あぁ、今のところその予定はないわね。
あの人、家よりも仕事の方を選ぶから。
それに私もまだ仕事続けたいし……第一、今子供なんてできちゃったら、君と一緒に仕事できなくなっちゃうじゃないの。
長年の付き合いの中で、初めて同じ場所にいられるんだから。
でしょ?
私だってそう……近年稀に見る嬉しい状況なんだから、職場から追い出そうとなんてしないでよね?
……だから、ないってば。
そ、そもそも、その……そういうコトだって。
……って!
な、何言わせるのよっ、いやねぇ、もう!
あ、あははっ……まったくもう、オバサンをからかうもんじゃないわよ?
……え?
だって8歳差だもの、君から見れば十分。
そ、そう?
まぁ、気持ちはまだまだ若いまんまだけどね!
あはは、そう?
そう言ってもらえると嬉しいわ……って!
もう~、お世辞まで上手になっちゃってぇ、そんなことまで教えてないわよ?
いつの間にそんなに口先がお上手になったのかしら。
きっと女の子口説くのも上手に……え?
あら、そうなの?
そっか~、いないのね……うちの課にいる子たちって、今は……。
あぁ、そ、そうね。
余計なお世話だったわ……こほん……で、でも、うちの課だけじゃなくて、会社内恋愛にはいろいろ気を付けた方がいいわよ?
特に有能な子だと……あ、あははっ。
はいはい、ごめんなさい。
入社したてで考えることでも……なくはないわよ?
やっぱり、いい子には先に目を付けておいた方が……あぁハイハイ、ごめんなさいってば~っ。