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a.導入~深化(初回)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【01_a.導入~深化(初回)】 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ いらっしゃいませ。 また飲みたくなっちゃったんですか。 あなたはほーんと、お酒好きなんですね。 おいしいですもんね、お酒って。 でもそれだけじゃなくて、気分がスカッとしたり、 ふわっと心地よくなったり。 ちょっと嫌なことがあっても、お酒を飲めば気持ちも楽になって、 すんなりと、眠りにつける。 そういうこと、ありますよね。 でも、自分でも最近飲み過ぎてるな、ってわかってるんでしょ。 だから、あなたはここに来た。 ここは、催眠の世界を見せるbar。 お酒のかわりに、催眠で楽しんでもらうための場所。 適度なアルコールは健康に良い、という研究結果もありますが、 それは、お酒を飲まずに肝臓を休める「休肝日」をとって、 体に負担をかけないようにしているからこその話。 お酒を飲んだらその飲んだ分、しっかり肝臓を休める必要があるんですよ。 おいしく、お酒を飲みたいなら、 お酒を飲まない日をちゃんと作らないと。 この先歳を重ねていっても、健康的にお酒を楽しむために。 ……ちゃんとわかってますね。 じゃ、今夜も催眠の世界を楽しんでいってください。 眠る準備はできてますか。 催眠の後は、そのまま眠りについてほしいんです。 ここでの催眠は、寝酒がわりなので。 体を締め付けるようなものは身に着けてないですよね。 ゆったりした格好で、横になってください。 一日頑張ったその体と心。 力を抜いてほぐすところから始めましょう。 まずは、深呼吸から。 ストレスや不安を感じると、人は呼吸が浅くなるんです。 だから、落ち着きたいときは、深呼吸するのがいいんですよ。 最初に肺の中の空気を出し切ってから、始めます。 体の中にたまっている空気を全部吐き出すと、たくさん息を吸い込める。 それに、取り込んだ空気をより新鮮に感じられるんです。 息を全部、ふーっと吐きつくす。 そして、一気にすーっと空気を吸い込む……また、ゆっくり息を吐く。 息を吸うことより、吐くことを意識すると、やりやすいですよ。 じゃあ、始めましょう。 口からゆっくり、息を吐いていきます。 お腹の中から、ぜーんぶ吐き出すように。 ふーーーー…… 今度は鼻から一気に吸い込む。 すーーーっ 息を止める。全身がぎゅっとかたくなっていく。 はい、少しずつお腹の力を緩めながら、息を吐き出していく。 全部吐き出せたら、すーーーっ。 息を止める。全身がぎゅっとかたくなる。 はい、少しずつ、お腹の力を緩めながら、ふーー…… 全身から力が抜けていく。 かたくなった体も、やわらいでいく。 ふふ、上手です。 でも、まだ、淀んだ空気が溜まってる感じ、しますよね。 吐くときは、体の中のイヤなものを吐き出すように。 吸うときは、澄んで爽やかな空気を取り込むように。 そんなイメージをしながら、深呼吸してみましょう。 今度は、息を吸うところから、一定のリズムでゆったりと静かに。 さっきみたいに、息を吐くとともに体の力が緩まるのを、感じて。 いきますよ。 鼻からゆっくり吸って…… 口からゆっくり吐く…… 吸ってー…… 吐いてー…… 新鮮な空気を吸い込んで もやもやを吐き出す 吸ってー…… 吐いてー…… 新鮮な空気を吸い込んで 不安を吐き出す 吸ってー…… 吐いてー…… すべて入れ替わるまで あともう少し 吸ってー…… 吐いてー…… 体の中の空気が入れ替わると 体から余分な力が抜けていく 吸ってー…… 吐いてー…… 体の余分な力が抜けると だんだんリラックスしていく 吸ってー…… 吐いてー…… 吸ってー…… 吐いてー…… ここに来た時よりも、表情がやわらかくなってきましたね。 もう、いつも通りの、あなたにとって楽なペースの呼吸に戻していいですよ。 意識して呼吸したから、体から余分な力が抜けて、ゆったりくつろいでいる。 いい感じにリラックス、してきてますね。 でも、もっと、だらーんとしたいんですよね。 だって、そのために、あなたはここに来たんでしょ。 そんなあなたに、特別サービスがあるんです。 特製カクテルを作ってあげる。 あなたのための、特別な一杯ですよ。 世の中には色々なお酒がありますよね。 爽やかな苦みとのど越しが楽しめるビール。 甘くてデザートみたいなカクテル。 よーく熟成させた、樽の香りのする赤ワイン。 しゅわしゅわと繊細な味わいのシャンパン。 お米のふくよかな香りのする日本酒。 焼酎、ブランデー、ジン、ウオッカ……。 そして最近は、ノンアルコール飲料も人気ですね。 小さなショットグラスを想像して下さい。 一口で飲めるくらいの量が入るグラスです。 そうですね……あなたの手のひらにすっぽり入ってしまうくらいの大きさ。 そこに、ハーブから作ったエキスを一振り。 ハーブの香りと苦みが、アルコールに似た味を演出するんです。 市販されてるノンアルコールカクテルにも、 同じようにハーブの苦みでお酒っぽさを出しているものがあるんですよ。 それから、トニックウォーター。 しゅわっと、飲み口を軽やかに。 そして、レモンをキュッと絞る。 皮がはじけて、果汁があふれて……んー、いーい香り。 レモンって、爽快な香りがしますよね。 それに、口の中がきゅーっと、すっぱくなる。 想像するだけで、唾液がじわーっと出ちゃいますよね。 ふふ、すっごく飲みたそうな顔してますね。 ……はい、お待たせしました。 せっかくバーに来ているんだから、お酒を飲む雰囲気を味わって下さい。 あなたみたいにお酒を飲みたい、っていう気持ちが強いほど、 お酒に似た味わいを、より感じられますよ。 カウントするから、ゼロ、の合図で一気にあおってくださいね。 3、 2、 1、 ゼロ。 (以下6行、他部分より早めの口調で) カクテルが口の中に入ってくる。 ひんやりとした冷たさの中に、ピリッと感じるハーブの苦み。 レモンのさわやかな香りが鼻に抜けていく。 果汁の酸味で、唾液が両頬からじわっと湧き出す。 その唾液とともに、カクテルをゴクン、と飲みこむ。 冷たいものが喉を通って、胃の中へすとん、と流れる感覚。 ……おいしかったみたいですね、よかった。 ちゃんとお酒っぽい味がしたでしょ。 あなたがお酒を飲みたい、って思っている証拠ですね。 そのカクテルは、あなたを深い催眠へ導いてくれるカクテル。 オリジナルのレシピです。 ハーブの作用で体をあたためて、余分な力を抜いていく。 余分な力が抜け、リラックスすると、私の声にもっと集中できる。 私の声を聴いて、より深く、ふかーく、催眠の世界へ導かれる。 カクテルと私の声で、あなたはもっともっと深く、 催眠の中へ沈んでいけるんです。 ほら、お腹からじわっと、あたたかさが広がるのを感じる。 ぽかぽか、あたたかい。 じんわりと、お腹があたたかい。 お腹から下半身へ、少しずつあたたかさが広がる。 あたたかさの広がった部分から、力が抜けていく。 腰があたたかい……力が抜ける。 お尻があたたかい……力が抜ける。 太ももがあたたかい……力が抜ける。 膝まわりがあたたかい……力が抜ける。 ふくらはぎがあたたかい……力が抜ける。 足首があたたかい……力が抜ける。 かかとから爪先……あたたかさがじわっと広がって、力が抜けていく。 今のあなたは、下半身の力が抜けている。 力が抜けた下半身は、だんだん重くなっていく。 今度は、お腹から上半身、腕の方へ、あたたかさが広がってくる。 じんわりと、お腹があたたかい。 お腹から胸の方へ、少しずつあたたかさが広がる。 あたたかさの広がった部分から、力が抜けていく。 胸があたたかい……力が抜ける。 肩があたたかい……力が抜ける。 二の腕があたたかい……力が抜ける。 肘があたたかい……力が抜ける。 手首があたたかい……力が抜ける。 手のひらから指先……あたたかさがじわっと広がって、力が抜けていく。 上半身から腕まで力が抜けている。 力が抜けた上半身と腕は、だんだん重くなっていく。 あたたかさは、頭の方へも広がってくる。 あたたかさの広がった部分から、力が抜けていく。 首があたたかい……力が抜ける。 顎があたたかい……力が抜ける。 頬があたたかい……力が抜ける。 耳があたたかい……力が抜ける。 瞼があたたかい……力が抜ける。 襟足からつむじ……あたたかさがじわっと広がって、力が抜けていく。 頭のてっぺんまで、力が抜けている。 力が抜けた首から上も、だんだん重くなっていく。 これであなたは、頭のてっぺんから足の先まで力が抜けました。 力が抜けて、全身がさらに重くなっていきます。 体が重いと頭の中まで重くなって、意識がぼーっとしてくる。 ぼんやりとまどろむのは、気持ちがいい。 気持ちがよくて、眠ってしまいそう。 重くなった体は、下へ、下へと、少しずつ沈んでいく。 心地良い眠気を感じながら、あなたの重い体はすーっと沈み込んでいく。 あなたは知っていますよね。 お酒を飲んだ時に感じる、脱力感。 アルコールが回った体の、力が抜けていく気怠さ。 意識までぼんやりと、ゆるやかになっていく感じ。 あの、心地よい感覚。 それと同じ脱力感を、あなたは今、全身で感じている。 ……もう気づいていますね。 あなたが飲んだカクテルには、お酒が入っていたんです。 この店のドアを開けたところから、 あなたは既に催眠の世界に入り込んでいます。 ここで起こる事、感じる事は、全て催眠の世界の中でのこと。 アルコールに酔う感覚がしても、体に負担がかかることはない。 催眠から目覚めた時、その酔った感覚は、あとかたもなく消えてしまう。 この催眠の世界の中でなら、体のことを気にせずにお酒を楽しめるんです。 しかも、心地よい感覚だけで酔うことができる。 だから、あなたが望むまま、酔ってしまえばいい。 ほら、アルコールが回った体から、ますます力が抜けていく。 意識は、さらにぼーっとしてくる。 そのまま、心地よい脱力を全身に感じて。 気持ちのいい脱力を感じるほど、体はどんどん重くなっていく。 重くなった体が、今横たわっている場所に、少しずつ沈み込んでいく。 沈むほどに、気怠いようなまどろみが全身に回って、気持ちがいい。 ……動きたくない。 ……何も考えたくない。 そう思うほどに、心地よい脱力が全身に、意識に、回ってくる。 力が抜けて、重さを増していく体が、沈んでいく。 すーっと、沈む。 脱力感に身を任せ、沈んでいくのは、気持ちがいい。 ……動かなくていい。 ……何も考えなくていい。 あなたはただ、脱力感に身を任せて、沈んでいけばいい。 深いところに、沈む。 どんどん、沈んでいく。 意識も体も、重くて、沈む。 布団や床をすり抜けて、その下に広がる暗闇の中へ、静かに沈んでいく。 ……もう動けない。 ……もう何も考えられない。 それほど、沈んでいくのは気持ちがいい。 意識も体も、すべてから力が抜けて、重さとともに沈む。 私の声を聴きながら、意識も体も、すーっと沈んでいく。 暗闇の中へ、静かに沈んでいく。 これから、私が10数えてゼロになると、 あなたの意識と体は、さらに速度を増して沈みます。 すーっと、深い所まで沈んでいく。 催眠の世界へと、深く、ふかーく沈んでいく。 10、 9、 8、 7、 6、 5、 4、 3、 2、 1、 ゼロ。 (以下4行、他部分より早めの口調で) すーっと、沈む。 深く、深く、暗ーいところに、沈む。 もっともっと深い所へと沈んでいく。 吸い込まれるように、すーっと、沈んでいく。 ……沈みつづける。

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