誘導
えへへ、お兄ちゃんっ。あのね、お願いがあるの。
私、最近催眠術の練習してるんだ。お兄ちゃん、実験台になってよ。
……あー、もしかして疑ってる? ちゃんと勉強したんだから、大丈夫っ! ほら、どこでもいいから、早く横になってっ!
……うん、そうそう。
あ、お布団かけるなら、手は布団の上に出して、まっすぐしておいてね。
途中でどこかかゆくなったらかいていいし、疲れてきたら寝返りしても大丈夫だから。
……はーい、準備オッケー? じゃあいくよー? まずは目を開けて、天井の、どこでもいいから一か所を見ててね。
あなたはだんだん、眠くなる……眠くなーる…………ほらぁ! 練習なんだから、言われたとおりにするのっ。
フリでもいいから、眠くなってくれないと続きできないでしょ?
眠くなったらどうなるの? まぶたが重くなるよね? 筋肉に力が入らなくなるでしょ? ちゃんとやってね?
ほら……眠くなる……眠くなーる……だんだんまぶたが重くなる……開けていられなくなって、ゆっくり、ゆっくり閉じていく……。
そう……そうしたら、体に力が入らない……お布団に体が沈んでいく……眠くなる、眠くなーる……。
はーい、ちゃんとそのままね……そうしたら次はぁ……深呼吸してー……。
ふかーく息を吸ってー……ふかーく息を吐くの……お兄ちゃんにとって気持ちいいペースで……ゆっくり、ゆっくり……。
……どお? ちょっと気持ち良くなってきたでしょ? 深呼吸って、心と体をリラックスさせる効果があるんだよ?
ふふ……だんだん、リラックスしてきた? じゃあ、もっと催眠っぽいことしちゃうね?
次はー、私の声に合わせて、深呼吸するの……呼吸って、人間にとってとっても大事なものだよね?
それを私の声でコントロールされることで、お兄ちゃんの心が催眠にかかる準備をしちゃうの。
……ま、難しいこと考えなくていいから、やってみてよ。すっごく気持ちいいんだから。
じゃあ、いくよ? 最初は合わなくて大丈夫だから、ゆっくり合わせていこうね? いくよー……。
吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………。
吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………。
吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………吸ってー…………吐いてー…………。
はい、そのままー。どう? 気持ちいいでしょ? 深呼吸が気持ちいいのは、普通の事だよね?
でもね……今お兄ちゃんは、私の声で呼吸をコントロールされたことで、催眠状態になる準備ができちゃったんだよ。
ううん……もしかしたら、もう催眠状態なのかもしれないね。
ふふ……疑ってるかな? でもね、当たり前のことなんだよ。
私の声に従って深呼吸するの、気持ち良かったよね……それを、お兄ちゃんの無意識は、私の声に従う事が気持ちいいって、間違えて覚えちゃったの。
でも、それはぜーんぜん怖いことじゃないから大丈夫。お兄ちゃんが嫌なことは、ちゃんと拒めるからね。
まあ……お兄ちゃんが嫌がることなんてしないけど♪
じゃあ次、行ってみよっか。いーい? まずは……利き腕に意識を集中してみて。
ほら、どんな感じ? お布団の柔らかさとかを感じているかな? 温度は? あったかい? ひんやりしてる?
汗はかいてるかな? それともさらさら? 腕は伸びてる? まっすぐ?
……そういうのはさ、別にお兄ちゃんが意識しなくても、ずっとそこにあった感覚だよね? でも集中したら、それまで意識していなかった感覚を感じることができたでしょ?
じゃあ、更に……私の言葉の力を借りて、もっともっと感覚を探してみようか……。
腕には感覚がある。温かい、冷たい、重い、軽い、柔らかい、固い、べとべと、さらさら、ごわごわ、すべすべ……。
その中から、『重さ』に意識を集中してみて。
お兄ちゃんの利き腕には、『重さ』がある。重たいから、力を入れてなければ、布団にくっついてるはず。そして、少し布団に沈み込んでいるはず。
普段は気にしてない。自分の体の『重さ』なんて、普段は気にしない。でもずっとそこにある。お兄ちゃんの腕には、『重さ』がある。
ほら、重い……重たーい……重たーく……重たくなってくるよ……。
ならなくても大丈夫。でもイメージして。重たくなったフリをしてみて。そうしたら、お兄ちゃんの脳が騙されてくれるかも。
だんだん、お布団に、利き腕が沈んでいくみたい……どんどん沈んでいく……お布団の中まで沈んでいく。重い、重たい、重たーく……重たーく……。
でも沈んでいくのは気持ちいい。今までずっとずっと、感じていたはずの重さ。でも知らなかった重さから、お兄ちゃんは解放されました。
沈めば沈むほど、お兄ちゃんの利き腕からは力が抜けていく……重さを支えるための力が抜けていく……力が抜ければ沈んでいく……沈んでいくほど力が抜ける……。
どう? 重たくなれた? なれなくても、イメージできたかな? 力、抜けてる?
ちゃんと抜けているなら、その状態を覚えていてね。そうすれば、いつでもその状態になれるから。
どこかかゆかったりしたら、掻いてもいいよ。動かすのがおっくうかもしれないけど、体が疲れていたら、伸びをしたりしても大丈夫。
リラックスが一番大事。大丈夫、ちゃんと今の状態に戻れるから。
じゃあ、今度は反対の腕……こっちの腕ももちろん、『重さ』があるよね。
ほら、重い……重たーい……重たーく……重たくなってくるよ……。ならなくても大丈夫。イメージして。重たくなったフリをして。そうしたら、そのうちホントに重くなるかも。
だんだん、お布団に、利き腕が沈んでいくみたい……どんどん沈んでいく……お布団の中まで沈んでいく。重い、重たい、重たーく……重たーく……。
でも沈んでいくのは気持ちいい。今までずっとずっと、感じていたはずの重さ。でも知らなかった重さから、お兄ちゃんは解放されました。
沈めば沈むほど、お兄ちゃんの腕からは力が抜けていく……重さを支えるための力が抜けていく……力が抜ければ沈んでいく……沈んでいくほど力が抜ける……。
どう? 両腕から力が抜けた?
じゃあ、今度は……利き足……利き腕と同じ方向の足……。
ほら、重い……足は腕よりもっと重いよ……重たーい……重たーく……重たくなってくるよ……。
だんだん、お布団に、足が沈んでいくみたい……どんどん沈んでいく……お布団の中まで沈んでいく。重い、重たい、重たーく……重たーく……。
でも沈んでいくのは気持ちいい。今までずっとずっと、感じていたはずの重さ。でも知らなかった重さから、お兄ちゃんは解放されました。
沈めば沈むほど、お兄ちゃんの足からは力が抜けていく……重さを支えるための力が抜けていく……力が抜ければ沈んでいく……沈んでいくほど力が抜ける……。
はい……次は反対の足。
ほら、重い…………重たーい……重たーく……重たくなってくるよ……。
だんだん、お布団に、足が沈んでいくみたい……どんどん沈んでいく……お布団の中まで沈んでいく。重い、重たい、重たーく……重たーく……。
でも沈んでいくのは気持ちいい。今までずっとずっと、感じていたはずの重さ。でも知らなかった重さから、お兄ちゃんは解放されました。
沈めば沈むほど、お兄ちゃんの足からは力が抜けていく……重さを支えるための力が抜けていく……力が抜ければ沈んでいく……沈んでいくほど力が抜ける……。
どーお? リラックスできたでしょ? 気持ちいい?
あれ……? その気持ちいいのは、気持ちいいフリ? それとも、本当に催眠にかかっているのかな?
……どっちでもいいよね、気持ち良ければ。
お兄ちゃんの体はね、私の声に従うのが気持ちいいって、覚えちゃったの。だから、もう逆らえないんだよ。
お兄ちゃんの無意識が、私の言葉に従いたがってるんだから。
……ふふ、もしかしたら、まだ疑ってるかもしれないね。じゃあ……試してみる? 私の言葉に逆らえるかどうか?
その代り、私の言葉に逆らったら、この不思議で気持ちいい感じ、終わっちゃうよ?
それってもったいないよね? せっかく気持ちいいのに……。
だから、お兄ちゃんはきっと私の言葉にしたがっちゃうよね。ふふ……それって、ほんとの催眠と何が違うの?
かかっているフリでも、ほんとにかかってるんでも……気持ちいいのは同じ……逆らえないのも同じ……。
それはもう、お兄ちゃんの意思じゃないの。気持ちいいから逆らいたくない……それって無意識の願望。
……意識を眠らせて、無意識を揺り起こした状態。それが催眠状態……トランスっていう状態なんだよ。
大丈夫。お兄ちゃんが本当に嫌なら、トランスからはいつでも抜け出せるの……そして逆にね、心から望むなら……いつまでも、好きなだけこの状態でいられるの。
大丈夫……お兄ちゃんが嫌がることなんてしないよ。だって、今のお兄ちゃん可愛いもん。
うん、とっても可愛い。だってお兄ちゃんは今、心の一番奥……無意識を私にさらけ出しながら、こんなに気持ちよさそうにリラックスしてくれてるんだもん。
私の事、信じてくれてるんでしょ? だからリラックス、リラックス……私を信じて、身を委ねて……。
あれれ? それって、何かに似ているかも……一番弱くて、大事な場所を相手に委ねて……気持ち良くしてもらうのって……。
……ふふふ。でもまだだね。まだお兄ちゃんは、心の扉を私に開いて見せてくれただけ。まだ私のものになってない。
大丈夫だよ、いますぐ私のものにしてあげる。実はね、もう、ほとんどなってるんだよ。
もうお兄ちゃんの体と心は私のもの……お兄ちゃんの腕は私の腕……ふふ、私が合図すると、お兄ちゃんの腕は勝手に持ち上がって行くよ。
信じられない? でも必ずそうなるの。だって、そうならなかったら、催眠が終わってしまう。この楽しい遊びが終わっちゃう。
だからお兄ちゃんは、たとえ催眠にかかってなくても腕をあげてしまう。
でも、それがかかっているフリなのか、本当にかかっているのかは、自分でもはっきりとは分からない。
自分の意思で持ち上げているのに、勝手に持ち上がっていると思うかもしれない。勝手に持ち上がっているのに、自分の意志だと思っちゃうかもしれない。
それってどっちでも同じ。おんなじなんだよ。だから、たとえお兄ちゃんが自分の意思であげていると思っても、腕が上がったらそれは……催眠状態ってことなの。
自分の体の事なのに、分からなくなっちゃうの。でも大丈夫……私が守ってあげるから。
トランスして、無防備なお兄ちゃんの心と体を、私が守ってあげる……だからね、安心して、私の声に服従していいんだよ……。
だって気持ちいいでしょ? 私の言葉に従っていると、凄く気持ちがいいの。
ほら……いくよ? 私が合図したら、ゆっくりゆっくり腕が持ち上がって、5数える間に上を向くの。もし間に合わなくても大丈夫だからね。
合図をするよ? いい? ほらっ……腕が持ち上がっていくよ……5を数える間に、上を向くの。
1……2……3……4……5……。
……どう? できたかな? ……ちゃんと上向いたかな?
ねぇ……今のは自分の意思? それとも、勝手に動いたの? ……自分の意志だと思っていても、それはきっと思ってるだけ。
たとえ本当に自分の意志だったとしても、お兄ちゃんが私の言葉に従ってしまったことに変わりはない……変わらないんだよ、お兄ちゃん♪
じゃあ今度は腕を下ろそうか。でも勝手には下ろせないよ。……試してみる?
ふふ……もうそんな気持ちにもならないかもね。だって、私の言葉に従っているだけで、気持ちよさそうだもん。
じゃあ息をかけるよ……そうすると、お兄ちゃんの腕はふにゃってなって、倒れるの。
でも大丈夫。どこかにぶつけて痛くないように、ちゃんと元の向きに倒れるから。
ほら、いくよ? ……ふー。
ふふ、ふにゃってなったね。どう? さっきよりも、もっと力が抜けたでしょ? 高いところから、一気に落ちるのも気持ちいいよね。
じゃあ、反対の腕。
ほら……いくよ? 私が合図したら、ゆっくりゆっくり腕が持ち上がって、5数える間に上を向くの。もし間に合わなくても大丈夫だからね。
合図をするよ? いい? ほらっ……腕が持ち上がっていくよ……5を数える間に、上を向くの。
1……2……3……4……5……。
……どう? できたかな? ……ちゃんと上向いたかな?
今のはどうだった? 自分の意志? それとも催眠の力? ……ふふ、もう、どっちでもいいよね?
じゃあ今度は腕を下ろそうか。息をかけるよ……そうすると、お兄ちゃんの腕はふにゃってなって、倒れるの。
でも大丈夫。どこかにぶつけて痛くないように、ちゃんと元の向きに倒れるから。
ほら、いくよ? ……ふー。
……ふふ、良くできたね。えらいえらい。
わかる? 今のでね、お兄ちゃんの体は私のものになっちゃったんだよ。
もうお兄ちゃんは、私の許可がなければ体を動かすこともできないの。
ぜんぜん動かないのは辛いだろうから、ちょっとは動いてもいいけど……でもそれは、お兄ちゃんがリラックスするためだけ。
体を掻いたり、寝返りくらいはしてもいいよ。
でも他の事は何もさせてあげない。私が望んでいること以外は、何もできないの。
……でも、大丈夫。お兄ちゃんが望んでいることは、私がちゃんとしてあげる。だってお兄ちゃんは私のもの。私の所有物なんだから、責任もってお世話してあげる。
ふふ……まだ少し、心のどこかで抵抗しているかもね。年下の女の子に、私のもの、なんて言われて……恥ずかしいかもしれない。悔しいかもしれない。
あるいは……本当は嬉しいのに、認めたくない自分がいるかもしれない。
ううん、気づいていなくても、そういう気持ちはどこかに必ずあるの。だからこのままじゃ、お兄ちゃんは本当には私のものになれないね。
でも大丈夫……そんな邪魔な常識には、しばらく眠っていてもらおうね。
つまらない意地とか、常識とかが眠っている間に、こっそり……本当は甘えん坊なお兄ちゃんと、秘密の遊びをしてあげる……。
深い、深いところに沈めばいいの。そうすれば、常識、プライド、意地、見栄……全部眠ってしまうから。
そして最後まで、お兄ちゃんの無意識……誰かに甘えて、服従したい気持ち……それだけが残るからね。
今から数字をカウントするよ。そうすると、お兄ちゃんは沈んでいく。
20……19……誰にでもあるの……誰かに甘えたい気持ち……男の子なんて特にそう。
18……17……誰かに従いたい気持ち。
16……15……非力な、年下の女の子に甘えることは……とっても気持ちいいこと。
14……13……だって、本当は自分が、非力な女の子に甘やかされちゃうくらい、甘えん坊さんだってことだから。
12……11……自分に素直になることは気持ちいいよ。
10……9……年下の女の子に服従することは、とっても気持ちがいいの。
8……7……服従すれば、自分で何も考えなくていいの。ただ、きもちいいだけ……与えてもらえる会館に身を任せるだけ……。
6……お兄ちゃんはね、本当は、私なんかに服従して、あやされちゃうくらい、弱くて、小さくて、甘えん坊さんなの。
5……いつもは、男の子だからって、頑張ってるんだよね? でも、いいんだよ……今日は本当のお兄ちゃんを、優しく、服従させてあげる。
4……年下の女の子に甘えるのは、とっても恥ずかしいこと……男の子にとって一番情けない姿……。
3……でも、だから、そんな自分を受け入れてもらえるのは、認めてもらえるのは……とっても嬉しい事。
2……嬉しい? ……気持ちいい? ううん……それはね、幸せってことなんだよ。
1……ほら、幸せになる。私が次の数字を数えたら、お兄ちゃんは頭の芯から真っ白に、胸一杯に幸せになるよ。
早く、数えて欲しい? 私が次の数字を口にしたら、お兄ちゃんは本当に、私に服従しちゃうんだよ?
したいんだね……私に、甘えさせて欲しいんだ。恥ずかしいお兄ちゃん。
でも……そんなお兄ちゃんの事、今日は全部受け入れてあげる。
ほら……0……。
ふふ……いらっしゃいお兄ちゃん、私の夢へ。
ここは私の夢の世界。ここがお兄ちゃんの夢の世界。ここにあるのはベッドがひとつだけ。あとはなんにもない、やわらかくて、白い世界。あったかくて、黒い世界。
お兄ちゃんは今、ベッドの上……ふわふわで、まるで雲の上に居るような、柔らかいベッドの上に浮かんでいる。
ふふ……すぐそばに居るよ。寂しくないよ。
ほら、抱きしめてあげる。子供のように甘えてごらん?
ふふふ……可愛いね、お兄ちゃん。年下の女の子に甘えちゃって。
年上のお姉さんの、大きな胸に甘えるのが気持ちいいのは当たり前。でもこうして、年下の子に甘やかされちゃうのはとっても恥ずかしいよね。
まるで自分が、もっともっと小さな、子供みたいに思えちゃうよね。
そうだよ……今のお兄ちゃんは子供なの。非力な私より、もっともっと無力な、一人じゃ何もできない子供なの。
でも大丈夫、お兄ちゃんが望むものはすべて私が与えてあげる……さあ、なにをしてあそぼうか?