プロローグ
(独白風で)
彼氏と彼女。
今の関係になれるまで…私にしては、長~い我慢の時間だった。
気づいた時には、隣に住んでて、お風呂にも入れば、プール遊びもする、いつも一緒で、泣いたり笑ったり、家族ぐるみで遊びに行ったり、まるで同い年のきょうだいみたい…そんな、人の知らない事まで知ってる仲。
俗称、幼なじみ。
そんな、なぁなぁの間柄から、きちんと恋人になるって、なかなか難しいと思う。
ほら、漫画でも小説でも…ね。
偉大な先輩たちが証明済みってわけ。
どっちからするのが正しい…なんて決めてたら、どっちも言わないまま…それは嫌だったから、私から告白したんだ。
いつも、他の人からの評価は大人しい娘。
そんな私だけど…ちょっと想像してみて…私以外の誰かが、ずっと隣にいて、どんどん知らない先に歩いていってしまう…私はそこから置き去りにされちゃうって思ったら、怖くて悲しくて、叫んでた。
家の二階、窓の向こう、空を挟んだ向かいが、自分たちの部屋なんて、よくある場所から、好きって叫んでた。
そしたら…俺も、なんていうから…言ってくれたから。
私は一生分の勇気つかっちゃったかもしれないから…いつか、そういうのをびしっと見せてくれるのかな。
うーん…いつかの未来で、見せてくれるんだろうか。
む、娘さんを、ごにょごにょ…とかって。
…と、今は風邪で休んでた今日の宿題プリントやらを届けないと。
これはお隣さんの勤め…。
じゃあ私の…彼女としてのものは…。
今日…こんな日に休んじゃって、残念がってそうだけど…私はちょっと嬉しいかな。
(インタフォン鳴らす)
(独白終わり、以下、普通に)
こんにちはぁ…。
あれ…おばさん出てこない…買い物でも行ったのかな。
(ドアを開ける)
玄関空いてる…お邪魔しまぁす。
田舎って言っても、不用心だなぁ…まぁ…ウチも似たような感じだけど。
(靴脱いであがる)
んっ…と…風邪だもんね…自分の部屋、かな。
こういう時は、勝手知ったる間取りで助かるね。
突き当たり、階段を上へっと…。
(廊下をちょっと進み、階段を上がっていく)