エピローグ
はい、耳かき終わったんだから、膝枕もおしまいなの。
んんっ、もうちょっとじゃないのぉ、はいはい、甘えん坊さん。
(体を起こしてもらう)
ん、初めてだったし、ちょっと疲れちゃった…。
はいはい、頭外してねぇ。
だるかったらまた横になってればいいよ。
んしょ…あ、起きて並んで座るんだ。
ん…顔色は、もう大丈夫かな…(鼻を鳴らす)くんくん、すんすん…ちょっと汗のにおいするね…。
いや、くさいとかじゃなくって、やっぱり熱があったのは本当だったんだなぁって、思ったの。
ほら、熱の匂い、みたいなのあるじゃない。
ちゃんと後で着替えたほうがいいよ。
わーっ、あとで、あとでいいから!
今脱ごうとしないでっ!
すぐ調子に乗る…そりゃ上半身とか見慣れてるけど、それは小さい時のお風呂やプールとか、そういう当たり前の時であって…い、今は…違うのっ。
あと、もう熱がないなら、シャワーは大丈夫らしいから、入ってもいいかもね。
ご飯もいっぱい食べてさ…いいなぁおばさんの料理おいしいもんなぁ。
え、食べていけって…そんないきなりだと、おばさんに悪いよ…準備とか一人分増えたら大変なんだよ?
あ、カレーなんだ…じゃあその…およばれしちゃおっかな…。
う、うんっ(咳払い)!
んぐんぐ(口ごもる)…え、風邪じゃないよ。
ん…んーと…(もじもじ)その…バレンタインだけど。
あ、関係ないって言ったのは、違うの、違うんだって…私には…今日学校で渡す相手がいないから…関係ないって言ったの。
わからないって…ホントに、理系の大学に入れるのかな…順序だてて考えたらわかるでしょ!
私の渡す相手…渡したい相手が学校休んでたからでしょ!
だから…(バッグを漁る)こ、これ!
ちょ、チョコレートだよ…バレンタインの…。
お母さんに手伝ってもらって、頑張ったんだから…残さずに、食べてよね。
とかして固めるだけだけど、それがすっごく難しいんだよ。
理系大学目指してるんだから、わかるでしょ…凝固点とか融点とか、分離とか…そうそう、温度管理がとっても難しいの。
ほら、それに…チョコって栄養満点だから、調子悪いのも、すぐになおっちゃうと思うし。
わ、ちょっと、そんな大声でありがとうとか叫ばないで!
もぉ…そんな嬉しい、とか…むむ…(俯きでぼそりと)こっちが嬉しいじゃないかぁ。
よかった…頑張って、バレンタイン、手作りしてみて…。
ん、これで私のバレンタインは、やっと完了…かな。
休んでても、バレンタイン参加できてよかったね♪
誕生日…誕生日は、耳かき、してあげたじゃない…拗ねないの。
もぉ…その…耳かきくらいなら、誕生日とか、特別な日じゃなくても、して欲しい時に、いつでもしてあげるから…。
あ、また、そんな大声で、やったぁとか言わないでよ…もぉ、恥ずかしいなぁ…(小声で)嬉しいけど…。
喜んでもらえたのは嬉しいけど…私も誕生日はまた別にって思ってたから…うーん。
(階下で玄関が開く音がする)
あ、おばさん帰ってきた…私、お出迎えしよっと。
(立ち上がる)
んー…誕生日…いっぱいくれた勇気のお礼…。
うん。
(腰を折って、素早く触れるだけのキス)
んちゅ…。
耳かきも特別…だけど、もっと特別な誕生日プレゼント。
これからも、よろしくね♪
(ドアを開けて足早に出て行く)