Track 4

耳かきパート2 右

んっ、じゃあ顔の向き変えて…あ、もぉ、ぐりぐりしないでよ。 頭の座りがって、んん…。 はい、もぉいいでしょ、ちゃんと耳が見えるし。 じゃあこっちも始めるから。 んっ、んんっ…そうそう…バレンタインに水差す感じで、先生が言ってたけど、テスト期間近いし、それが終わったら進路も考えろって。 んっ、んんっ…進路かぁ…早いなぁ…ついこの前、文系か理系かって選んだばっかりな気がしてたのに、修学旅行も終わったし、文化祭もとっくに終わったし。 季節って、ぎゅんぎゅん過ぎていっちゃうね。 あと、楽しい事って、何にしてもすぐ終わっちゃう気がする。 うん…学年あがったら、もう受験だしね…色々考えないと…私はこのまま、地元の国立狙いで行きたいなぁって思ってるけど、そっちは? んっ…んんっ…同じ国立で、理系。 だよね…うーん…でもダメだった時は…理系大学って、私立は地元にはないよ…それに理系って、実験とかですっごく忙しいんじゃない? 近くの私立も落ちちゃったら、どうするのよぉ…もっと遠くに行くの? それとも、浪人するの? んっ…それは、その時って…もぉ…確かに地元じゃなくても、近くなら通えない距離じゃないだろうけど。 一緒にいる時間は、今より減るし…うん…そりゃね、日本と外国、月と地球、みたいな距離ってわけじゃないし…うん…他の人と違って、帰る場所が、隣だもんね。 それに…今まで他の人たちに比べたら、私たち、一緒の時間ばっかりだったもんね…少しは…我慢できるかな。 ななな、泣いてなんかないもん! んんっ(眼鏡を直す)んっ…すれ違いが怖い…確かに、少しは、ね。 けど、このご時世、スマフォひとつあれば、どこでもつながれるよね。 すごいよねぇ…お母さんたちの時代なんて、何だっけ…ぽけ、べる? とかいう、数字しか送れないやつだったんだって。 今なんて、無料でビデオ通話がいつでもどこでもできちゃう。 あ、ちょっと怖い人はスマフォのGPSで相手の位置を探知してるとか行ってたし。 な、なにぶるるって…じっとしててよ、耳が怪我するよ。 んんっ…んっ…んーと、大学だって、真面目に授業出て、サークルは入るかわかんないけど、バイトはすると思うし、そうやって時間をきちきち使ってたら…その…よそ見するヒマはないかなって。 わ、私は大丈夫だよっ。 その、自分で言うのも何だけど、大人しいし、それほどかわいくないし、スタイルも控えめだし…目立つタイプじゃないから…危ない所へ近寄らなければ、そんな。 何もないって、言えるから。 でもそっちは、さ…その…かっこいいし…人と話すのだって得意だし…コンパとか行っちゃったら、モテるだろうなぁって。 んっ…そういうトコへいけば…大学みたいに広い世界だったら、私たちの小さな頃からの色々なんて、関係ないっ…飛び越えちゃうっ…みたいな人に出会う事だってあるかなって。 うううう、不安、なんだよぉ、少しはっ。 私はいっぱい勇気だして、こうなれて…それがなくなっちゃうのが怖いの。 だって、心って、一番不安定なものでしょ…形にはならないし、ほら、理系的にいったら、物質として存在しないもの。 合理的論理的、ではないでしょ。 そもそも恋愛が脳信号のエラーって、そんな話じゃないの。 さっき、私のこと、昔から好きって言ってたじゃない…それもただのエラー? ただの電気的反応だっただけ? それはそれって、むむむ、言ってる事が矛盾しまくり! そんな事で理系学生になれるのかな…もぉ…耳かき奥まで突っ込んじゃおっか。 あ~、嘘うそ…そんな危ないことしないから。 鼓膜は破れても再生するっていうしね、うふふ…って、あーだから、嘘だって。 動かないでっ。 んっ、んんっ…こんな風にさ…色んな事を、隠さずに、もじもじせずに、全部話せるの…こんな私でいられる場所、ここしかないんだから。 ここ、だけなんだよ。 うー…専用膝枕じゃないの! ホントに、奥までごりっといっちゃおうか…。 はいはい、そんなにおそれないでよ…私、怖い娘じゃないんだから。 知ってるでしょ、それくらい…。 んっ…んんっ…まぁでも…ちょっと嫉妬深い…よくいえばヤキモチやき、かもね。 そのほうがいいの? 変なの…普通はさ、そういうの重いとか言われて、嫌われそうだけど。 重いついでに、私はさ…大学とか、すぐそばの未来だけじゃなくって、もっともっと先…何があっても、ふたりでいるっていう未来を見てるよ。 だからどうして欲しいとかはないよ…これは私の覚悟、みたいなものだから。 今まで一緒だったんだから、これからだって…きっとそれが叶うって、私は信じてる。 だから一緒に、信じてて…。 ね、激オモだよ? いいのかなぁ、いいのかなぁ…。 そのほうが深い愛みたいって…もぉ、もぉ…もぉ…そういう事…言うんだから。 んっ…だから、私は、ここにいたい…ずっと居たいって思っちゃうんだよ…。 そっか…そっか…一番の勇気じゃなくても、小さな勇気をたくさんくれるから…私…。 んっ…はい、耳かきはもう大丈夫! はいはい…こっちも仕上げね。 (耳を吹く、緊張はないので自然に) ふぅ~~~、ふぅ~、ふぅうう~♪ くすぐったくないかな。 ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~、ふぅ~~♪ ふふ、面白い…ぽかんって口あけちゃって。 ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~~、ふぅ~~~♪ ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪ ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~~、ふぅ~~♪ そんなに口あけてると、虫がはいっちゃうよ? ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~♪ ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~ふぅ、ふぅ~~♪ はいはい、最後に…ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~~♪ ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~~~♪ ん、初めてにしては、うまくできたかな?