耳かきパート2 右
んっ、じゃあ顔の向き変えて…あ、もぉ、ぐりぐりしないでよ。
頭の座りがって、んん…。
はい、もぉいいでしょ、ちゃんと耳が見えるし。
じゃあこっちも始めるから。
んっ、んんっ…そうそう…バレンタインに水差す感じで、先生が言ってたけど、テスト期間近いし、それが終わったら進路も考えろって。
んっ、んんっ…進路かぁ…早いなぁ…ついこの前、文系か理系かって選んだばっかりな気がしてたのに、修学旅行も終わったし、文化祭もとっくに終わったし。
季節って、ぎゅんぎゅん過ぎていっちゃうね。
あと、楽しい事って、何にしてもすぐ終わっちゃう気がする。
うん…学年あがったら、もう受験だしね…色々考えないと…私はこのまま、地元の国立狙いで行きたいなぁって思ってるけど、そっちは?
んっ…んんっ…同じ国立で、理系。
だよね…うーん…でもダメだった時は…理系大学って、私立は地元にはないよ…それに理系って、実験とかですっごく忙しいんじゃない?
近くの私立も落ちちゃったら、どうするのよぉ…もっと遠くに行くの?
それとも、浪人するの?
んっ…それは、その時って…もぉ…確かに地元じゃなくても、近くなら通えない距離じゃないだろうけど。
一緒にいる時間は、今より減るし…うん…そりゃね、日本と外国、月と地球、みたいな距離ってわけじゃないし…うん…他の人と違って、帰る場所が、隣だもんね。
それに…今まで他の人たちに比べたら、私たち、一緒の時間ばっかりだったもんね…少しは…我慢できるかな。
ななな、泣いてなんかないもん!
んんっ(眼鏡を直す)んっ…すれ違いが怖い…確かに、少しは、ね。
けど、このご時世、スマフォひとつあれば、どこでもつながれるよね。
すごいよねぇ…お母さんたちの時代なんて、何だっけ…ぽけ、べる?
とかいう、数字しか送れないやつだったんだって。
今なんて、無料でビデオ通話がいつでもどこでもできちゃう。
あ、ちょっと怖い人はスマフォのGPSで相手の位置を探知してるとか行ってたし。
な、なにぶるるって…じっとしててよ、耳が怪我するよ。
んんっ…んっ…んーと、大学だって、真面目に授業出て、サークルは入るかわかんないけど、バイトはすると思うし、そうやって時間をきちきち使ってたら…その…よそ見するヒマはないかなって。
わ、私は大丈夫だよっ。
その、自分で言うのも何だけど、大人しいし、それほどかわいくないし、スタイルも控えめだし…目立つタイプじゃないから…危ない所へ近寄らなければ、そんな。
何もないって、言えるから。
でもそっちは、さ…その…かっこいいし…人と話すのだって得意だし…コンパとか行っちゃったら、モテるだろうなぁって。
んっ…そういうトコへいけば…大学みたいに広い世界だったら、私たちの小さな頃からの色々なんて、関係ないっ…飛び越えちゃうっ…みたいな人に出会う事だってあるかなって。
うううう、不安、なんだよぉ、少しはっ。
私はいっぱい勇気だして、こうなれて…それがなくなっちゃうのが怖いの。
だって、心って、一番不安定なものでしょ…形にはならないし、ほら、理系的にいったら、物質として存在しないもの。
合理的論理的、ではないでしょ。
そもそも恋愛が脳信号のエラーって、そんな話じゃないの。
さっき、私のこと、昔から好きって言ってたじゃない…それもただのエラー?
ただの電気的反応だっただけ?
それはそれって、むむむ、言ってる事が矛盾しまくり!
そんな事で理系学生になれるのかな…もぉ…耳かき奥まで突っ込んじゃおっか。
あ~、嘘うそ…そんな危ないことしないから。
鼓膜は破れても再生するっていうしね、うふふ…って、あーだから、嘘だって。
動かないでっ。
んっ、んんっ…こんな風にさ…色んな事を、隠さずに、もじもじせずに、全部話せるの…こんな私でいられる場所、ここしかないんだから。
ここ、だけなんだよ。
うー…専用膝枕じゃないの!
ホントに、奥までごりっといっちゃおうか…。
はいはい、そんなにおそれないでよ…私、怖い娘じゃないんだから。
知ってるでしょ、それくらい…。
んっ…んんっ…まぁでも…ちょっと嫉妬深い…よくいえばヤキモチやき、かもね。
そのほうがいいの?
変なの…普通はさ、そういうの重いとか言われて、嫌われそうだけど。
重いついでに、私はさ…大学とか、すぐそばの未来だけじゃなくって、もっともっと先…何があっても、ふたりでいるっていう未来を見てるよ。
だからどうして欲しいとかはないよ…これは私の覚悟、みたいなものだから。
今まで一緒だったんだから、これからだって…きっとそれが叶うって、私は信じてる。
だから一緒に、信じてて…。
ね、激オモだよ?
いいのかなぁ、いいのかなぁ…。
そのほうが深い愛みたいって…もぉ、もぉ…もぉ…そういう事…言うんだから。
んっ…だから、私は、ここにいたい…ずっと居たいって思っちゃうんだよ…。
そっか…そっか…一番の勇気じゃなくても、小さな勇気をたくさんくれるから…私…。
んっ…はい、耳かきはもう大丈夫!
はいはい…こっちも仕上げね。
(耳を吹く、緊張はないので自然に)
ふぅ~~~、ふぅ~、ふぅうう~♪
くすぐったくないかな。
ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~、ふぅ~~♪
ふふ、面白い…ぽかんって口あけちゃって。
ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~~、ふぅ~~~♪
ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪
ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~~、ふぅ~~♪
そんなに口あけてると、虫がはいっちゃうよ?
ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ、ふぅ~~♪
ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~ふぅ、ふぅ~~♪
はいはい、最後に…ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~~♪
ふぅ~、ふぅ~、ふぅ~~~♪
ん、初めてにしては、うまくできたかな?