耳かきパート1 左
うん、耳かき、してあげるから。
えっと、耳かき棒は?
あ、机の上ね。
(机の上からとる)
ん、あった。
じゃあ、その…ど、どうやってすれば…へ、ひ、膝枕!
そ、そんないきなりハードルが…ううう…確かに何でもって…わ、わかったよぉ…。
うう…こんな事でどきどきが…あぁ、何でもないから…ええと、私がもっとベッドの端に深く腰掛けて…は、はい…どうぞ…。
(頭をのせられる)
んんっ…なんか、髪の毛がくすぐったい…タイツはいててもくすぐったいのっ…うう…もぉ、耳かきするから。
ええと、どっちから…んんっ…もぞもぞ動くから…はいはい、こっちからね。
(耳かき開始)
ん、もちろん、だけど…誰かに耳かきするの初めてだから…できるだけじっとしててね…私も慎重に、するから…。
(耳かき音かぶせ、んっなどは漏れる吐息です)
んっ…んん…んっ…え、静かすぎるって…もぉ、私だって初めてだから緊張しながらやってるの…まったく…甘えん坊なのか何なのか…はいはい、注文の多い彼氏だなぁ。
んっ…ずっと下向いてると、眼鏡がずれちゃうな…。
直しながらしないと…。
えーと…何か話せばいいのね…うーんと…学校…今日、バレンタインだったから、男子も女子も、みんなすっごいそわそわしてたよ。
んっ、んんっ…って、落ち込まないでよ…(聞こえないくらいの小声で)私なんか相手いなかったんだし…(元に戻す)あ、いや…そうそう、あの二人妖しいって、前に話してたでしょ。
ほら、私の後ろの席の隣同士…そうそう、授業中いつも何かやってるふたり。
今日ね、帰りに偶然見かけて…ん、えっと、あの公園…帰り道の途中にあるやつね。
あそこにふたりで入っていくの見てね…あ、あとなんかつけてないって、偶然見えたの、偶然。
んっ、んんっ…ふぅ…いやまぁ…自転車とめて見ちゃったんだけど…何してたって…ぅう…な、何でもないけど、チョコ、そうチョコみたいな包みを渡してたの!
見つめ合ったり、もじもじしたり、一緒に並んでブランコに座ったり。
見てる私まで、何かどきどきしちゃった…。
そうそう、予想通りだったねぇ…って話。
あー、あぁ…うん…そっか…思い出しちゃった。
うん…私たちがあのふたりの事ウワサしてたみたいに、私たちも…結構前に…そうそう、もっと小さい頃、学校でいろいろ言われたよねぇ。
毎日一緒に帰ってる、好きなものは何でも知ってる、休みの日は一緒に遊んでる…お隣同士で家族ぐるみなら、全部当たり前の事だったのに。
んんっ、んっ…あ、そうそう、お弁当箱が色違いで同じ柄っていうのもあった。
あれなんか、お母さんたちが一緒に買い物行って、これでいいやって選んできたんだもん、私たちにはどーしようもないのにね。
別のクラスになった時、まだ私が友達って感じの子もいない時に、教科書借りに行って…お礼の手紙でもってかいてたら、それが見つかっちゃってさ…ほんと、何でもないただのありがとうってだけだったのに、ラブレターだぁって大騒ぎになって…幼さって、何でもない事でも一大事になっちゃうもんだよね。
ほんと、どーでもいいことに、なんであんなに敏感だったんだろ…それとも、あれが子ども特有の天才的感性?
そうそう、間違った方向だけど♪
あー、うーんと…あの時は…その…ごめんね。
手紙のとき!
もぉ…。
んんっ、んっ…私、気が弱いから、何も言えなくて…みんなにっていうか、主に男子だけど、やいやい言われて、泣いちゃって、何も出来なくて…それなのに、ひとりで頑張ってくれて。
どうして、あんなに頑張れたんだろって、よく考えてたなぁ。
え…す、好きだったからって…んんっ?
そ、そんな小さな時から、私のこと…ちゃんと…んんっ!(咳払い)
て、手元がくるいそうだったじゃない。
んもぉ…はい、こっちの耳はおしまい。
話ながらでも何とかなった…はぁ、ふぅ。
え、仕上げ?
み、耳をふ~ってする、のか…うぅ…確かにお母さんにもしてもらってた…。
わ、わかったから…はぁ、ふぅ…(深呼吸をして意を決す)
(耳を吹く)
(少し戸惑いがちに、強めに)ふぅ~~~、ふぅ~、ふぅ~~~。
え、強いって…もぉ。
(弱めに)ふぅ~、ふぅ~、ふぅうう~、ふぅ~。
今度は弱いって…もぉ…ソムリエみたい。
(優しく、奥まで届くように)ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~♪
ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪
ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪
え、もう少し…仕方ないなぁ。
ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~、ふぅ~♪
ふぅ~、ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~♪
はい、こっちはおしまい。
耳かえよっか。
うん♪