Track 3

耳かきパート1 左

うん、耳かき、してあげるから。 えっと、耳かき棒は? あ、机の上ね。 (机の上からとる) ん、あった。 じゃあ、その…ど、どうやってすれば…へ、ひ、膝枕! そ、そんないきなりハードルが…ううう…確かに何でもって…わ、わかったよぉ…。 うう…こんな事でどきどきが…あぁ、何でもないから…ええと、私がもっとベッドの端に深く腰掛けて…は、はい…どうぞ…。 (頭をのせられる) んんっ…なんか、髪の毛がくすぐったい…タイツはいててもくすぐったいのっ…うう…もぉ、耳かきするから。 ええと、どっちから…んんっ…もぞもぞ動くから…はいはい、こっちからね。 (耳かき開始) ん、もちろん、だけど…誰かに耳かきするの初めてだから…できるだけじっとしててね…私も慎重に、するから…。 (耳かき音かぶせ、んっなどは漏れる吐息です) んっ…んん…んっ…え、静かすぎるって…もぉ、私だって初めてだから緊張しながらやってるの…まったく…甘えん坊なのか何なのか…はいはい、注文の多い彼氏だなぁ。 んっ…ずっと下向いてると、眼鏡がずれちゃうな…。 直しながらしないと…。 えーと…何か話せばいいのね…うーんと…学校…今日、バレンタインだったから、男子も女子も、みんなすっごいそわそわしてたよ。 んっ、んんっ…って、落ち込まないでよ…(聞こえないくらいの小声で)私なんか相手いなかったんだし…(元に戻す)あ、いや…そうそう、あの二人妖しいって、前に話してたでしょ。 ほら、私の後ろの席の隣同士…そうそう、授業中いつも何かやってるふたり。 今日ね、帰りに偶然見かけて…ん、えっと、あの公園…帰り道の途中にあるやつね。 あそこにふたりで入っていくの見てね…あ、あとなんかつけてないって、偶然見えたの、偶然。 んっ、んんっ…ふぅ…いやまぁ…自転車とめて見ちゃったんだけど…何してたって…ぅう…な、何でもないけど、チョコ、そうチョコみたいな包みを渡してたの! 見つめ合ったり、もじもじしたり、一緒に並んでブランコに座ったり。 見てる私まで、何かどきどきしちゃった…。 そうそう、予想通りだったねぇ…って話。 あー、あぁ…うん…そっか…思い出しちゃった。 うん…私たちがあのふたりの事ウワサしてたみたいに、私たちも…結構前に…そうそう、もっと小さい頃、学校でいろいろ言われたよねぇ。 毎日一緒に帰ってる、好きなものは何でも知ってる、休みの日は一緒に遊んでる…お隣同士で家族ぐるみなら、全部当たり前の事だったのに。 んんっ、んっ…あ、そうそう、お弁当箱が色違いで同じ柄っていうのもあった。 あれなんか、お母さんたちが一緒に買い物行って、これでいいやって選んできたんだもん、私たちにはどーしようもないのにね。 別のクラスになった時、まだ私が友達って感じの子もいない時に、教科書借りに行って…お礼の手紙でもってかいてたら、それが見つかっちゃってさ…ほんと、何でもないただのありがとうってだけだったのに、ラブレターだぁって大騒ぎになって…幼さって、何でもない事でも一大事になっちゃうもんだよね。 ほんと、どーでもいいことに、なんであんなに敏感だったんだろ…それとも、あれが子ども特有の天才的感性? そうそう、間違った方向だけど♪ あー、うーんと…あの時は…その…ごめんね。 手紙のとき! もぉ…。 んんっ、んっ…私、気が弱いから、何も言えなくて…みんなにっていうか、主に男子だけど、やいやい言われて、泣いちゃって、何も出来なくて…それなのに、ひとりで頑張ってくれて。 どうして、あんなに頑張れたんだろって、よく考えてたなぁ。 え…す、好きだったからって…んんっ? そ、そんな小さな時から、私のこと…ちゃんと…んんっ!(咳払い) て、手元がくるいそうだったじゃない。 んもぉ…はい、こっちの耳はおしまい。 話ながらでも何とかなった…はぁ、ふぅ。 え、仕上げ? み、耳をふ~ってする、のか…うぅ…確かにお母さんにもしてもらってた…。 わ、わかったから…はぁ、ふぅ…(深呼吸をして意を決す) (耳を吹く) (少し戸惑いがちに、強めに)ふぅ~~~、ふぅ~、ふぅ~~~。 え、強いって…もぉ。 (弱めに)ふぅ~、ふぅ~、ふぅうう~、ふぅ~。 今度は弱いって…もぉ…ソムリエみたい。 (優しく、奥まで届くように)ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~♪ ふぅ~、ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪ ふぅ~~、ふぅ~~、ふぅ~~♪ え、もう少し…仕方ないなぁ。 ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~~、ふぅ~♪ ふぅ~、ふぅ~~~、ふぅ~~~、ふぅ~♪ はい、こっちはおしまい。 耳かえよっか。 うん♪