プロローグ
あはっ、今日も貸し切りだーっ! 飛び込んじゃえーっ! それ、ざぶーんっ!
……っぷはー!
はあ……誰もいない銭湯って気持ちいいなあ……。
……でも、シホが入ってるときって大抵お客さんいないけど……こんなのでこの銭湯、“けーえー(経営)”大丈夫なのかなあ?
ふふっ、ま、こうやって一人でのびのびお風呂に入れるから、シホはとっても嬉しいけどっ。
……って、あれ?
お客さんが……いる? お兄さんが、シャワーのほうで体洗ってる。年取ったおじさんじゃない人がここにくるなんて、珍しいなあ……。
こんにちは! お兄さん。
え? シホのこと? どうして女の子が男湯に入ってるのか……って?
うーん、シホ、ちっちゃいころからこの銭湯に来てて、お父さんと一緒に男湯に入ってたから……なんだかこっちのほうが落ち着くんだー。えへへっ。
お兄さん、ここは初めて?
初めて? そうなんだ。ふふっ、ここはね、お客さんが少ないから、とってものびのびできるよ。シホもこうやって、広い湯船で泳いだりするんだー。こんな風に、それっ、それ~♪
……お兄さん、シホのことじっと見てどうしたの? シホ、どこか変?
そうじゃない、って……? なんだかお兄さん、様子が変だけど……のぼせちゃった?
……って、ああっ! お兄さん、そこ、どうしたの!? そこ、ほら……そこ!
タオルかかってる、お腹のとこ! なんだかすっごく膨らんでるよ! ビクンビクンってしてる! 大丈夫っ? どこか、ぶつけたの?
え……? そ、それって……病気、なの……? そ、そんな……大丈夫なの、お兄さん!?
し、シホのせい、なの……? シホが女の子なのに、男湯に入ってきてるから……? お兄さん、シホのせいで病気が……?
ご、ごめんなさいっ、お兄さん……! そんな病気があるなんて知らなくて……シホ、どうしたらいいの?
一つだけ、方法があるの……? わ、わかったよお兄さん! シホができることなら、何でもするから!
お兄さんの病気が早く治るように、頑張るね!