3章
また数日がたった。
僕はあれからアンシエンに通い詰めていた。寝食を忘れるほど――現実の仕事も趣味も友人も家族も何かも捨て去るほど――。
生活全てがA国美女様を中心に回るようになった。片時もA国美女様の声や匂いや体温やおみ足や美脚や乳房や美顔やシルエットを忘れたことはない。
A国美女様が好き。完全に洗脳されてしまった。でも僕は、生まれてから一番幸せだった。永遠に僕を包んでくれる、A国美女様という大きな母体に属しているのだから。
「ほらベイタのお兄ちゃん。今日も歴史のお勉強だよ? えーと、この年に起きた、Y海沖漁船衝突事件はどっちが悪いのぉ?」
「あっはい。悪いのはB国でございます。僕の先祖が、ベイタだから気の迷いでこんなことをしてしまって……。本当にすいませんすいませんすいません……」
「ふふっ♪ よく謝罪できました。でも、誠意って大事だよね? わかる? せーいせーい♪ 賠償金、ちゃんと払ってぇ……まだ私達ぃ、その傷がいえてないのぉ……」
ロリ顔のA国美女様に問いかけられる。
僕は貢ぎマゾにも調教されていた。今日は二百万も現金を持参してしまった。十万や二十万では足らないのだ。A国美女様がこれまでに受けた侮辱は、未来永劫消えることのないぐらい膨大なのだ。
だから僕が少しでも誠意を示さなくてはならない。少しでもA国美女様の怒りを沈めなくてはならない。
貯金はとうになくなっても、まだまだ全然足りなかった。もっと貢ぎたい貢がなければならない。僕の一生をかけて謝罪と賠償を徹底しなければならない。例えどんな手段を使ってでも――。
「お兄ちゃん聞いてる? この事件――いくら賠償金払ってくれるのぉ?」
「さ、三十万でどうでしょうか……」
「え? それだけぇ? うーんベイタの誠意って、それだけなんだぁ……何かがっかりぃ……ん……チラッ♪」
「うっ……」
両手でスカートの端をつままれる。たくし上げのパンチラで誘惑された。可愛らしいピンクのパンティに目が奪われる。甘酸っぱいロリロリA国美女様の媚態も、心にズキリと深く突き刺さるものがある。
「あっ、あ……」
「ねっ。それだけ? んっ……♪ 見てぇ……おパンツちょっと細くしてぇ……んんっ♪」
「ああ――」
淫らにくい込む下着。あらわになるあどけない性器の輪郭。甘い嬌声の誘惑。
「んっ♪ お兄ちゃんっ♪ 私ね、ここいじいじするのくせになってね……」
薄い布地の裏で、小さな指がくちゅくちゅと妖しく蠢いている。僕を音とイメージの刺激で貪欲に誘惑している。
あの中は一体どうなっているんだろう――。そう思うだけで頭が真っ白になる。思考不能の状態で。もう操り人形だった。
「よ、いや五十万払います。どうかこれでご勘弁を……」
「え、五十万? うーんどうしようかなぁ。ま、本当はもっと欲しいけど……古い事件だからおまけしておくね。はーいお札束いただきまーす♪ ありがとうベイタのお兄ちゃん♪ チュッ♪」
「はっ、はいぃ。ありがたき幸せに存知まするぅぅう」
トランス状態。多方向から圧倒的な多幸感。A国美女様からでしか味わえない麻薬的なパラダイスゾーン。
「いちまーい、にーまい、さんまーい。ふふっ♪ 私ってお金大好きぃ……。お金くれる人も大好きだけどねぇ……」
「あぁ……よかった……。僕のお金が……A国美女様に、はは……ははは……」
お金を嬉しそうに数えるその姿を愛おしく感じてしまう。踏まれたい馬になってお尻をぺんぺんと叩かれたい。戦場に行けと命令されてむなしく命も散らしたい。
「ねっえ~ん♪ そこのベイタ! 私もこの事件、ちょっと納得いってないんだけどぉ……。ほらこれ、絶対にB国に非があると思わな~い? ねぇねぇねぇ~ん♪」
今度はギャル風の――と言っても白ギャルのA国美女様にからまれた。露出度が抜群に高くて、チャラチャラとしたアクセサリーも非常に多い。そのどんどん距離を詰めてくる強引さと、コケティッシュで健康的な色香にメロメロ寸前だ。
「そ、その事件なら三十万で……」
「えー何? それはないんじゃなぁい? さっきあの子に五十万払ったの知ってるのよ? ほらぁ……六十万払ってぇ……私達が受けた胸の痛みはこんなもんじゃないのよ? ほらおっぱい触っていいからぁ……こんなに苦しいのぉ……払ってぇ……ベイタぁ……ほら払えよぉ……払っちゃおうよぉ……。んっんっ……んんんっ♪」
「なんて柔らかい。ああっすごい……」
手を乱暴に引かれ乳房に溺れさせられる。両手に収まらないほどの美乳かつ超巨乳だ。特殊な薬でも飲んでいるかのように肌が白くてまぶしい。ずっと触っていたい。魅了されたい虜にされたい。
「そ、それじゃ六十万で……」
「あ~ん苦しいよぉ……それじゃ足りないっ。ちゃんと胸の鼓動を聞いてぇ……」
ぐにっと乳房に跡がつきそうなほど取り込まれる。心地よい一体感。美白の女神が足りないと言っている。
「あっ、んっ。はぁはぁはぁ。じゃ、じゃあ七十万で……」
「もっともっとぉ……む~~ぎゅっ♪ きつく絞ってぇ……♪」
「あふぅん……じゃじゃあはちじゅ……」
「駄目ぇ~苦しい~~~~ん♪ どうにかなっちゃいそ~~~う♪ もっともっとぉ~~♪」
白ギャル女神様の蠱惑的すぎる媚態が僕を襲う。メロンかと思うほどの爆乳に、完全なる洗脳支配をほどこされてしまう。
「はぁはぁはぁ……。くっ、ここは奮発して……きゅじゅ、いや百万、百万払うよぉ……払っちゃうよぉ……あはあは……」
「あ~んありがとうベイタ♪ む~ぎゅっ♪ むぎゅむぎゅっ♪ じゃ……これも~らいっ♪」
ひょいっと取り上げられる百万円。まるでお金にしか興味のない態度だが、今の僕には最高に感じるお金の奪われ方だ。
「はひっ……。百万円とられちゃった……あはあはは……」
喪失感、恐怖、絶望。そんな感情は薄くなっていった。それよりA国美女様の血となり肉となることの方が大事だった。貢いでもまた貢ぎたくなる。ギャンブルやソーシャルゲームの射幸心を、何倍にも煮詰めたような特上で危険な麻薬的行為に相違なかった、
「あらっ?」
よく聞き覚えのある声。
それは僕を初めて売国マゾにしつけてくれた――。
「うふん♪ 待ってたわよベイタ。この前の続き……しましょ♪ GP洋世界大戦の賠償責任……。ベイタが全部請け負ってくれるってぇ……言ったわよね? ふふっ♪」
「あっはぁいルファ様ぁ……♪ ああでも僕賠償しすぎて残り五十万しかないのぉ……」
そう言うと、ルファ様はにっこりと満面の笑みで返してくれた。
「うふふふっ♪ 別に足りなくもいいのよぉ。ちゃんと返す意思さえあればね。はい、この書類にサインして……」
「え、あはい」
借用書。ルファ様が渡してくれた。いくらだろう。なんだかゼロがいっぱいある。あの大戦争の賠償だから、きっととてつもない額なのだろう。今日僕が持ってきた二百万でも、きっと足りないはず。
うんでも、ルファ様は返す意思さえあればいいと言ってくれた。僕は誠意を持ってそれに応えようと思う。あ、ここに利子についても書いてあるぞ。何々……。
「あなたはそこにサインするだけでいいのよ。ベイタ。早くなさい。今日もルファ様と遊びましょ? ねぇどこがいい? まだおっぱいは使ってないわよね? 後……んっ♪ このお口も♪ それともまた美脚で搾られるのがいいかしらぁ……はぁん♪」
「はぁいルファ様ぁ。僕サインすぐするするするぅ。……これでよしっと」
ちゃんと読もうとしたら、ルファ様の声でさらさらと流れるようにサインしてしまった。僕は何も考えなくていい。ルファ様、ルファ様の命令が一番大事。
「あ~んルファ様ぁ……♪ 足好きぃ……♪」
「あらあら。やっぱりベイタは足が好きなのね。いいわ。ルファ様の美脚でどこまでも堕ちるといいわ……。徹底的に洗脳してしつけて、A国美女様の素晴らしさと歴史をた~~~っぷり刻み込んであげるわね……うふふふふっ♪」
「んん~♪ してしてぇ洗脳してぇ♪ あ~んルファ様の足裏美味しい~♪」
「ふふっ♪ ベイタは本当にそこが好きねぇ……。飽きるまで味わいなさい……ほらほらぁ……♪」
「んっ、んん――。僕幸せえへえへぇ……」
神聖なつま先が口元にねじこまれる。それだけで僕は絶頂しかけた。
口内をえぐられて脳をくちゃくちゃにかき回される。僕はもう足奴隷だった。A国美女様の美脚の虜になった哀れな売国マゾ奴隷――。
「あんっ♪ 射精するぅ♪」
「いいのよ出しなさい。このマゾ豚ベイタちゃん♪」
「あ――」
少しも手を触れずに射精した。自分で勝手に心酔し倒錯し、ベイタという単語を聞くだけで、無様に精液を垂れ流す変態マゾに堕ちたのだった。
「ふふっ♪ ほらまだ出るぅ♪ 今度は両脚よぉ……視界ぜぇんぶ塞いであ、げ、る♪」
「んぶっ。ん――」
息もつく間もない射精。二回目でも濃い精子がどくどくと漏れる。
完全にA国美女様の意のままだった。そしてそんな惨めな自分を嬉しく光栄に思ってしまう。
僕は、僕は――本当に導かれて幸せになった。
「あ~んあ~んルファ様ルファ様ぁ……」
「うふふっ♪ うふふふふ……。んっふふふふふふふ……♪」
足裏でぴったりと眼球を覆うように視界を塞がれる。もうルファ様しか見えない。A国超美女様のルファ様のことが。これからもずっとルファ様の洗脳支配化におかれることを望みながら、僕の意識は甘美な足裏へとすぅと吸い込まれていった。