1昼下がり夏色
若様?
若様~?
あ、若様。
こんなとこにいたんですか。
大旦那様が探していらっしゃいましたよ。
(無反応な若様に困惑して)
ん・・・。
(ため息をついて)
ふぅ。
(若様の左横に座る)
んしょ。
ふふ。
私も、ここでおサボりしたくなっちゃいました。
ご一緒してもいいですよね。
若様のこと、大旦那様には内緒にしておきますから、若様も私がここでサボってること、内緒にしてて下さいね。
今日も暑いですね。
蝉の声がすごい。
あ・・・。
いい風。
ここは夏の特等席ですね。
若様ったら、いい場所をご存知なんですね。
今度から私も昼下がりはここで涼もうかな。
ふふふ。
夏といえば、子供の頃は一緒に虫取りとかしましたよね。
私がどうしてもカブトムシが欲しいって言ったら、若様が『絶対捕ってやる』なんて言って。
どんどん山の奥に入って行って、二人で迷子になっちゃいましたね。
うふふ。
あの時は怖かった。
もう帰れないんじゃないかって、すごく不安で。
でも、若様が『オレが付いてるから大丈夫』って仰ってくれたから、私、安心できたんです。
あの時、若様のこと、私のナイト様って思ったんです。
本当に若様はカッコ良かったです。
え?
あの時、本当は若様も怖かったんですか?
ふふふふ。
やだ、もう。
ふふふふふ。
はぁ~。
いい思い出ですよね。
あ、若様ったら大きなアクビ。
良かったら、ちょっとお昼寝しますか?
私の膝枕で。
いいですよ。
何て言ったって、若様は、私のナイト様なんですから。
(膝枕される音)
(右耳が上)
ふふ、若様を膝枕してるなんて、何だか変な感じ。
あ、いえ。
イヤじゃなくて、その、あの、ちょっと恥ずかしいな・・・って。
もう言わせないで下さいよ。
この分だと明日も暑くなりそうですね。
そうだ。
若様、耳かきなんかいかがですか?
ちょうど膝枕してますし。
ええと。
1回、起きてもらっていいですか?
私、耳かき棒を取って参ります。
(起き上がる音)
じゃ、ちょっと待ってて下さいね。
すぐに戻りますから。
(走り去る音)