第6話:潜入任務
[ネットカフェのカップル席]
(小声、ささやき声での会話)
ちょうど良かったな、カップル席が空いてて。
ふふ……カップル、か。
私達、ちゃんとしたカップルに見えただろうか。
「なんで」って……だって、ほら。
…………(主人公に抱きつく少女)
私とお前、こんなに体格差があるんだぞ?
きっと横に並んでいたら、親子に見えたっておかしくないと思うんだ。
(主「それは僕がお父さんみたいってこと?」)
あ、いや、お前が老けて見えるとかそういうことではないんだが……
でも、確かにお前は父親みたいな所、あると思うぞ?
素敵な素敵な、理想の父親だ。
……前にも言ったと思うが、私には父親がいた記憶がほとんどなくてな。
だから、そういう存在に憧れているところもあるんだ。
……でも、そのうちお前も本当の父親になるんだぞ?
私がこんなだから……まだ先の話ではあるが……いつかは。
ふふ……すまんな、急にこんな雰囲気にしてしまって。
せっかくだし、このまま私達の昔話でもしようか。
……覚えてるか?私達が最初に逢った日のこと。
あれは、前にやっていたゲームのオフ会だったな。あのゲーム、もうサービス終了してしまったが……
ゲームのなかのお前はとっても優しくて、包容力があって、キャラクターも女の子だったし、きっと素敵なお姉さんなんだろうなって思ってた。
でもあのオフ会に来た5人の中に女性は私しかいなくて、がっかりして、寂しくて……
でも、そんな私に真っ先に声をかけてくれたのは、やはりお前だった。
もともと微かな、恋心に似たような感情を抱いていた私は、それが「恋」に変わる瞬間を、この身を持って体感したんだ。
今まで誰にも抱いたことのなかった感情を、お前に初めて抱いたんだ。
あの時、もしお前がいなかったら、私は……
(主「でも、僕がいるから来たんでしょ?」)
むむ……たしかにお前が来るって解っていたから参加したんだが……
もう……そういうことをわざわざ言わせるなよ……
ん……
で、だな……
オフ会の後、ふたりでファミレスに行って二次会をしただろ?
あの時、慣れない状況からふたりだけになって、緊張が解けて泣き出してしまったの……覚えてる……よな?
……もう、ニヤニヤするなよ、気持ち悪い……
そのままお前の肩で眠ってしまって……結局終電を逃して帰れなくなって……
(主「言われてみれば今日の状況は……」)
うむ、そうだ。そのまま泊まれるところを探して、ネカフェに来た。
さっきな、駅の改札で思い出したんだよ。今日の状況があの日に酷似していることを。
その顔は……今思い出したようだな。
ふふ……まあいいさ。お前、あの頃はまだ学生だっただろ?
忙しい毎日のなか、何かを忘却することだってよくあることだろう。別に私は咎めないさ。
この話をしても思い出さなかったら、それはそれで問題があると思うが……
でも、お前は思い出してくれた。私には、それで十分だ。
あの時も週末で人が多くて、ちょうど空席だった二人用のカップルシートに入って……
お前は「不用心だ」と言っていたが、あれはお前だから取れた選択肢だったんだぞ?
お前が私に乱暴をするような人間じゃないって、ゲームの中での1年あまりと、実際に会って話した半日で、私には見切れていたさ。
私は……お前のその誠実な目が好きだ。
目だけじゃなくって全部が好きなんだが、外見で最初に好きになったのは目なんだぞ。
(顔を寄せる少女)
ふふ……本当にいい目をしている……愛おしい……
その目にキスをしてしまいたいくらいに思っているのだが……あまり眼球に口をつけるのはよろしくないらしいな。
…………していいか?(冗談っぽく)
(主「それはちょっと」)
ふふ……冗談だ。流石にそんな、お前が嫌がるようなことをするつもりはない。
な、お前v(寝転がって両腕を上に掲げる=ぎゅってしてのポーズ)
(上に乗ってぎゅってしてくれる主人公「重くない?」)
うん、重くない。大丈夫だ……
ふふふ、こうやって横になって腕を広げるとそのまま抱きしめてくれる……愛らしいじゃないか。
ん……抱きしめられたまま頭をくしゃくしゃってされるの……悪くないぞ……ふぁ…………
ぁ……ふ……んゅ…………でもあんまりされると……髪が……っふ…………ん……
……こ、こら……調子に乗りすぎだ…………ぅゅ……ぁ…………
…………ふぅ……ふぅ……
……そんなにされたら……したくなって……しまうじゃないかぁ……
(主「やっぱりホテルのほうが……」)
ぁう……そういうことじゃなくてだな……
その……このまま、抱きしめられたまま……キスがしてほしくなるって……言いたかったんだ……
ぁふ…………ん、んちゅ……ちゅる…………っぅ……
んりゅっ、ぷゅっ、んぷっ、ちゅぷ……こ、こらぁ……んぷっ、ぢゅっ……
んぅ……ぷはっ……はぁ……はぁ…………(主人公の顔を軽く手で避け、涙目で)
……お前……そんなに激しくしたら……他の客に聞こえてしまう……じゃないか……
お前、眠いんだな?眠い時のお前は体温が高くなるから、わかる。
………………
……忘れてるようだから言うが、ここはネカフェなんだからな?
カラオケボックスのように防音性がないから、そんなに音をが出るようなキスは……その……な。
ふふふ……分かったならいいんだ。
では、ここからはスニーキングミッションだ。
店員に見つからないように…………声が出ないように……音がしないように……キスをするのが、今回のミッション……あぷv
ちぷ、んむ、んぷ…………っぷぇ…………
……な、なあ……お前。
えっと……さっき気づいたんだが、この体制……
こんなの……その……してるみたいな姿勢で……恥ずかしいな、って……
(主「そんなこと気にしなくても」)
見つかったら大変なんだぞ……お前、わかってるのか……?
「狭いから仕方ない」……ふふ……そうだな。狭いからな……うん。
それに……実は私も、こんなに密着して……全身でお前を感じられるの……イイなって……思ってる……
さっきのカラオケでもバレなかったし、きっと大丈夫だよな……ん……んぷ……
んふふ……こんなにねっとりとしたキス……なんだかいつもよりもドキドキする……
それに、お前がこんな体制で私に覆いかぶさっているの、なんだかお前に襲われてるみたいだ……
たまには……こういうのもいいな……うむ。
……それよりも……お前、腕がきつくだろ?
私にあまり体重が掛からないように、ずっと腕で支えてるもんな……
さっきからプルプルしてるから、嫌でも気付くさ。
やはり逆になろう。お前の上に私が乗ったほうが、きっと辛くないはずだ。
(抱きしめたまま回転)
そう、ころっと……
ふふふ……なんだかいつもの感じだな。
では今度は私から……んちゅ……
ちぅ、れる……んりゅ、くぷ……ん、んふ……
んぷ、ちゅ……ぷぁ…………
………………
お前、随分疲れてるようだな……
逆になってから、なんだか呼吸が深いぞ?
ん~……(主人公の顔をよく見る)
ほら、やっぱり……お前、眠い時の顔になってるじゃないか……
そろそろ眠いか?
……そうだろうな。私はさっき少し眠ってたから、そうでもないんだが……
このまま眠るか?だったら……
(扉をノックする音)
ひゃうっ!?
……え?誰?
(主「さっきシャワーの予約したから、それじゃないかな」)
そっか、シャワー……そういえば……
……予約した手前、使わないわけにもいかんよな。
少し残念だが、行ってくるよ。
本当は一緒に入れたらいいんだが……決まりだし仕方ない。
……名前順に呼ばれるんなら、お前もそろそろだろう。
戻ったら……続き、しような。