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はぁ~~……あぁもう、すみません先輩。
こんなことに付き合わせてしまっ……あっ、ひゃう!
あ、あはは、すみません。
足元の段差が見えなくて……は、はい、ありがとうございます。
こんな風に先輩と腕を組んで歩けるなんて、私幸せで……って、そ、そんなコト言ってる場合じゃないですよね。
何から何までお手数をおかけしてしまって、本当にすみません。
それもこれも私がお店で眼鏡を引っかけて落としてしまったから。
うぅ、こんなドジをするなんて恥ずかしい……でもそのおかげで先輩と腕組み♪
せっかくだからもっと。
へ?
あぁいえ大丈夫です。
家に戻れば予備の眼鏡はありますから……ただ、眼鏡なしでは家に帰り着ける自信がなくてですね、あ、あはは、本当にすみません。
お手数を……。
はい、ありがとうございます。
先輩の優しさが身に沁みますね♪
だから好……あっ、いえ、その。
あ、あははっ、何でもないんですっ、何でも。
それに、その、ごめんなさい。
せっかく画材の買い出しに出たのに、私の不注意で結局何も買えずじまいでしたね。
あ、あはは、眼鏡のフレームは折れるわ、レンズは擦れて使いモノにならなくなるわで……。
本当に酷いものでした。
また新しい眼鏡を買ってもらわないといけなくなるので、両親にも迷惑をかけてしまいます……しばらく、部活を休んでアルバイトをいないといけないかも。
え。
どうしてですか?
何で先輩が寂しく……へっ!?
わ、私だって、先輩と会えなくなるなんてイヤですっ、あの、えっと……で、ですけど、眼鏡って高いんですよね。
と言うか、私の場合レンズが高くて……えぇ、超の付くド近眼なので、レンズを薄く仕上げる加工料金などがかかったりして。
目の良い先輩にはわからないかもしれませんね。
私ですか?
視力は両方とも0.01です。
それに乱視も入ってるので……先輩は両目とも1.5でしたっけ。
夢のような世界が見えるんでしょうね、先輩の絵の上手さはそのおかげでしょうか。
私の絵なんて、先輩に比べたらまだまだですよ!
……っとっとっと、あぁすみません。
興奮して足元が……あ、そっか。
そういう言い訳をして、もっと腕をギュッと掴んで。
密着して、先輩の温もりを……あ、あぁいえ、何でもありません。
いえ、ありませんとも。
あはは……え、えっと何でしたっけ。
あぁそうそう、近眼の度合いでしたよね。
0.01だと、それはもう本当に何もかもぼやけた世界でして。
私の場合乱視も入ってますから、より一層ぼやけまくりなんです。
例えば、そこに一軒家があるのはわかりますけど。
表札なんてもちろん見えないし、瓦屋根なのかかやぶき屋根なのかもわからないくらいで……まぁ、かやぶき屋根なんてこの辺りにはないでしょうけどね、あはは♪
とりあえず、この辺りが私の家の近くであることは何となくわかります。
と言いますか、もうすぐそこです。
はぁ~、もう着いちゃいましたね……もっと腕組みしていたかったんですけど。
あぁいえ、とにかく、送っていただいてありがとうございました!
お礼がしたいので、是非うちに寄って行ってください。
大丈夫ですよ、眼鏡をかければいつもの私ですから。
はふ~……やっと見えるようになりました~。
でも、眼鏡をかけても1.2くらいにしかなってないんですよ。
これでもまだ先輩よりも視力が下という……あぁ、そうですね。
さっきまでの眼鏡とフレームが違うので、少し変わった印象になるかも……え!?
そ、そうですか?
先輩的にはこっちの方が……それは、眼鏡壊れてラッキーだったかも♪
それじゃ、次の予備に買っておくのも同じようなフレームにしますね。
だって、少しでも先輩に気に入ってもらいたいですし……へ?
え、えっと……いえその、おかしな意味じゃなくてっ。
わ、私の話なんてどうでもいいですよねっ。
そ、それより、お茶淹れてきますっ。
先輩、クッキーは好きですか?
お煎餅もありますけど、どっちが……は、はい……座ります。
はい、落ち着きます……ごくん。
あ、すみません。
やっぱり落ち着けそうにもないです……だって、先輩が私の部屋にいるなんて……えぇえ!?
わっ、私の部屋なんて全然っ。
いえ、本当に、全然大したことなくてっ。
いつもはもうちょっと散らかってるんですけど、つい一昨日片付けたばかりで良かったですホント、そうじゃなかったら、部屋には。
いっ、いえいえっ、いつ来ていただいてもいいんです。
むしろ来ていただきたいですっ。
先輩に見られると思えば掃除も行き届きますし……いえ、そんな便利に使おうということではなくてですねっ。
は、はい、落ち着きますっ……はい、深呼吸しますっ。
す~、は~、す~、は~、す~……っぷはあ!
はぁっはぁっ、あ、あはは。
なんだか暑いですね。
冷たい飲み物を……。
は、はい、座ります……ごくん……あの……その……せ、先輩?
もう眼鏡はしてますから、手は、離していただいても、大丈夫……いえ、握っててもらってもいいんですけど。
むしろ……握っていてもらえると、とても……はい、嬉しい、です♪
え……好っ!?
あのっ、えっと……す、スキって、何が……私!?
あのっ、えっと、私が先輩をですか?
それはもちろん!
すすす好きに決まってっ……あ、そうじゃなくて?
先輩が、私を……好き、なんですか?
えっと、それは……告白?
こ、こくっ、はっ、はぁっはぁっ。
はぁはぁ、は、はい、落ち着き……ごっくん!
むむむ無理です!
落ち着けるハズないじゃないですかぁ!
わ、わたっ、わたわたっ……せん、せんせんっ、先輩が、私を!
そそそそんなの嘘で……う、嘘じゃないなら、からかって……か、からかってもないなら……ないなら……わ、私の方が先輩を好きです!
いいえ、私の方がずーっとです!
え……両、思い?
あぁ、えっと、両思いって言うと……お互い、好きで、いるという……あの、夢のような展開でしょうか。
ゆ、夢、じゃない?
夢じゃないんですね……。
は、ははは、ふはぁ~~
……どっと疲れました……あぁ、すみません。
先輩も疲れちゃいましたよね。
あはは、顔真っ赤ですよ♪
そ、そりゃ、私は真っ赤に決まってます。
だって、先輩が告白してくれるなんて思ってもいなくて……あ、はい!
ありがとうございます。
私も、先輩のことを思っていました。
好き、です♪
ずっと好きでした。
あはは、良かったのは私の方ですよ~。
まさか、先輩に思っていてもらえたなんて、夢みたいです。
私なんて、絵は下手だし、ドジだし……眼鏡だし。
だって、ド近眼ですよ?
眼鏡を外したら、この距離でも先輩の顔が見えなく……んっひゃあ!
せっ、先輩っ。
いきなり顔寄せないでください!
眼鏡をかけてれば見えますから……え、何がですか?
そうじゃなくて……?
キス……しようと?
した……ん、ですか?
き……キス!?
せせせ先輩!
そういうコトは、恋人同士じゃないと……あ、そっか。
私たち、もう?
恋人同士になったっていうことでいいんでしょうか。
こ、恋人……先輩と恋人同士♪
あぁ、私が先輩の彼女……カップルになれたんですねぇ、あぁん、夢みたいですよ~。
あ、はい。
すみませんっ。
夢じゃないですよね、はい、現実です。
……だから?
それじゃあ?
あ……きっ、キス、ですか!
キスですよね。
恋人同士ならしても……ごくん。
そ、それじゃ、その……お願いしますっ。
んっ……っ……っ……あっ。
すみませんっ、眼鏡邪魔ですよね。
外しますから……んん、んはぁ。
はぁ、はぁはぁ……では、これで。
……っ……っ……~~~~っぷはぁ!
はぁっはぁっ、あぁ、す、すみません。
息止めちゃってて……あの、まだしてないですよね?
……肩の力を抜いて?
そ、そうですね。
すみません。
初めてなので勝手がわからなくて……はい。
肩の力を抜いて、目もギュッと閉じすぎず、あぁそうですね、唇も……く、唇。
口づけぇ、はぁ、はぁはぁ、ごっくん。
はい、大丈夫です。
いえいえ!
私もしたいです!
ファーストキスは、先輩とできたら嬉しいな~ってずっと思っていましたから♪
はい、だからとっても嬉しいです!
では改めてお願いしますっ……んんっ、んっはぁ。
そ、そうでした、ギュッと閉じすぎず……あ。
でも、お互い目を閉じちゃったら、場所がわからなくなったり……え、えぇ?
先輩だけ見てるなんて、ちょっとズルイですよ……私だって先輩の顔見たいです。
あぁでも、眼鏡外しちゃうともの凄く近づかないといけなくって……あぁ。
これくらいなら。
って!
は、恥ずかしいですね!
あはは、ははっ……すみません。
やっぱり、私は目を閉じてますので、先輩、お願いします……はい……んん、んん……っ……っ……んっふ。
んん!?
んっ♪
んっ……ん……んん……っ……っ……~~~~っぷはぁ!
はぁっはぁっ、はぁはぁ、はぁはぁ……し、しましたよね?
今、くっつきましたよね。
わ、わぁ~♪
キスしちゃいました。
私たち、口づけしちゃったんですね~、あぁん。
先輩の唇……唇の感触……が、あんまりわかりませんでしたぁ。
うぅ、緊張しすぎてぇ。
も、もう一回ですか?
はい、いいですとも。
頑張りますっ。
今度こそちゃんと、先輩の唇の感触を味わわせていただきますのでっ……ど、どうぞ!
んん、んん、んっふ……。
ぅん、んん……ん♪
んん、んん、ん~……っふはぁ~、はぁ~、はぁ~、んっはぁ~……あぁ、今のはわかりました。
先輩の唇、プニプニで気持ちいいです。
んふふ、あはは。
はは、は~~
……で、ですけど、すみません……私、もうパンク寸前ですぅ。
オーバーヒートです……焼け付いちゃいましたぁ。
はぁ~、は~、は~、んっはぁ~……。
あはは、先輩もまた顔真っ赤ですね♪
はい、ありがとうございます。
これから、先輩後輩だけではなくて、彼氏彼女としてもよろしくお願いいたします!
っきゃ~~♪