Track 2

点滴

でも、本格的な治療に入る前に まずは、点滴を準備しますね もしかして 今、変なものを身体に流されるとか 思ってませんでした? ですから大丈夫ですよ、 中身はただの栄養剤です 針はちょっとチクッ、とするかもしれないけれど そこから、力が溢れていくような そんな感覚が得られる、かもしれませんね それじゃあ、左腕の内側 アルコールで消毒しますねー 失礼しまーす ぴりぴり、ぴりぴり 綿で拭いたところが、次に何をされるか 想像しちゃいます? あー これから、針を刺されることを意識したから なんだか、緊張してますよね そうだ じゃあ、深呼吸をしましょう あなたが深呼吸して、 リラックスしている間に 私は準備を進めますから じゃあ、左腕から目をそらしましょうか はい、それでは 私の声に合わせて 吸ってー 吐いてー 吸ってー 吐いてー 病院の、クリーンな空気を 十分に吸い込んでくださいねー あと、ほのかに香る私のこの匂いも、 吸い込んで、リラックスして… 吸ってー 吐いてー 吸ってー 吐いてー  深呼吸を続けたまま  意識を、私の匂いに向けてみましょう  あなたは、この匂いのどんなところが好きですか?  嗅いでいると、少しずつ  落ち着いた気分になる、楽しくなる、優しい気持ちになる  それとも、気持ち良くなっちゃう? そんなことをゆったりと考えていくと さっきより、あなたの意識がぼやけて、発散していく だんだん、身体の感覚が鈍くなっていく 少しずつ、ぼーっとしてくる・・・  はい  あなたの左腕に  ちくっ とした感覚  そこから、黄色い液体が  少しずつ、少しずーつ  おなたの血管に、入っていくよ はい、元の呼吸に戻してください 無事に針が刺さりましたよ 意識を、呼吸と思考にもっていったから 痛い感覚はなかったでしょう? 意識をシフトするのって 感覚の操作に、結構重要な方法なんですよ 意識を遠ざければ、感覚は弱まるし 逆に意識を近づければ、感覚は強まるの 今度は逆に、左腕に意識を集中してみましょうか ほら、さっきチクってしたところから だんだん、エネルギーが沸いて じんじん、じんじんしてくる じんじん、じんじん 血管に注射しているから、 点滴がすぐに細胞に取り込まれて、活性化する じんじん、じんじん エネルギーは左腕から 身体(からだ)の他の部位に 少しずつ広がっていく そのうち、全身にエネルギーが広がって 血の巡りもよくなり 身体が温かくなってきますよ さあ、私の言うとおりに 意識を広げていきましょう ほら、左手から右手に意識を向けると 少しずつ右手が、じんじん、じんじん じんじん、じんじん エネルギーが広がる 右手だけじゃないですよ、左足に意識を向けると 左足もじんじん、じんじん じんじん、じんじん エネルギーが湧き上がる ほら、ほら、ほら どんどん広がっていきますね 一番遠くの右足も、意識すると じんじん、じんじん じんじん、じんじん 心地よさも湧き上がる 身体の方も、段々じんじんしてきた頃かな? ちゃんと効き目が出ている証拠ですから、安心してください しばらく、その心地よい痺れを 身体が活性化するのを、楽しんでいてくださいね まだ目を開けているなら、もう閉じちゃいましょうか 全身を意識して エネルギーが行きわたっているのを たくさん感じましょうね そろそろかな もう一度、意識レベルを確認しますね もしもーし ちょっと、ぼーっとしてます? でも、大丈夫そうですね むしろ、丁度いい位かも さて、それでは本格的な治療に入りましょう あなたの病気を治すためですから ひとつひとつ、丁寧にやりましょうね あ、忘れてました 点滴、もう外しちゃいましょうね どうですか?身体はじんじんのぽかぽかになりましたか? じゃあ、針を外しますねー ちょっと失礼しまーす  左腕に、意識を集中  今から五つ数えると、  あなたの左腕の  じんじんの、大元になっていたところから  針が抜けて、同時にあなたの意識がふっ、と発散する  意識が発散すると、集中力も同時に抜けていき  あなたはさっきより、ぼーっとしてきてしまう ほら、 いち、にー、さん、しー、ごー はい、すーっと、針が抜ける 針が抜けると、あなたの意識は 一緒に身体から離れていき 心地よい痺れは、少しずつおさまっていく じんじんがおさまっていくと そこに残るのはぼーっとして リラックスした、あなたの心と身体 さっきより身体があったまって、 血行もよくなって とっても気持ちよさそうです さ、お待たせしました ようやく、治療が始められますね