0.プロローグ
プロローグ
私の名前は、マノンです。
ヒトではありません。かといって、エルフでもありません。その間(あいだ)の子……“ハーフエルフ”です。
私は少し前まで、苦痛な毎日を過ごしていました。
ある日のことです。私は両親を亡くし、一人ぼっちになってしまいました。その結果、家もお金もなくなりました。
ハーフエルフは、あまり好かれる存在ではありません。ヒトでもエルフでもない、どっちつかずな生まれのせいで……その両方の種族から、差別され、疎まれる存在でした。
ですから、当然……ヒトにもエルフにも助けを求めることはできず、ただ、食べ物を探して彷徨うばかりでした。
そんなときに――私は、一人の男の人に出会いました。
彼は、私を差別することなく、ただ一人の女の子として受け入れてくれました。彼の家に住まわせてくれて、暖かいベッドと、美味しい食事をくれました。
それから……私を、愛してくれました。
だから私はその人のことを、親しみを込めて“旦那様”とお呼びしています。
このお話は、そんな旦那様と私の、毎日の記録です。
はじめに断っておきますと、辛いことや痛いことは、何一つ起こりません。
ひたすらに甘くて、楽しい……
そんな、幸せな日々のお話です。