1-1.森へ一緒に狩りに
1-1
……旦那様。こっちですね。ここに、ウサギの足跡があります。
これを追っていくと……
……いました。あそこです。見えますか?
なかなか大きいですね。
もう少し、近づいてみましょう。
……距離は、これくらいで。これ以上近づくと、感づかれてしまいます。少し遠く感じるかもしれませんが、何事も、慣れです。
弓を構えてください。
……はい。そうです。もう少し、右に。はい。そこで、そのまま狙って……。
打つときに、呼吸を止めるようにすると、ブレが少なくなりますよ。
……どうぞ。
ん……当たりましたが、惜しいです。急所は逸れたようですね。走り出しちゃいました。もう少しだったのに……。
でも、大丈夫です、旦那様。逃げる方向は分かっているので、私が……
えいっ。
……命中、っと。
ウサギは、坂を下りるよりも上るほうが上手なんです。だから、逃げる方向を読むことができます。それを予測すれば、当てられます。
え? ……や、やめてください、旦那様。私は、最後に少しだけ手伝っただけですから……。……ちょっと、褒め過ぎですよ……もう。
でも、旦那様、とても素晴らしかったですよ。今回は、急所こそ外しちゃいましたけど、体には命中してましたから!
後は、ウサギの動きの呼吸を掴めれば、目を閉じてても当たりますよ! ……それは無理ですか? ……そうですか。
だけど、この調子で練習を続ければ、大丈夫です。旦那様の腕なら、きっと一発で仕留められます!
時間のあるときに、訓練、頑張りましょうねっ。
* * *
ん……いい匂い……。
もうそろそろ大丈夫ですよ、旦那様。
はい、どうぞ。
ふふ、私もいただきます。
ん……はむっ、はむ、もぐ、もぐ……。
……んー♪ 美味しいですね、旦那様!
やっぱり、獲りたてを焼いて食べるのが、一番おいしいです。
ウサギの解体も、とっても上手くなりましたね、旦那様。手早くできたから、お肉に生臭さが全然ないです。
やっぱり旦那様は、料理に関することがお上手なんですね。もともと素養があったから、とっても上達が早いです。
私は、動物を捌くことだけはできますけど、他はからっきしですから……。
……うう、そうですね。旦那様が、狩りの練習を頑張っているんだから……私も、お料理の練習、頑張ります。
ん……旦那様。こっちのお肉も焼けてますよ。ここは、特に美味しい部分なので、どうぞ。
……ふふっ♪ いえいえ、旦那様が食べてください。こういう美味しいところを独り占めできるのも、狩りのいいところですから。
どうですか? 旦那様。美味しい?
……はい♪ よかった♪
ふふっ♪ 旦那様も、これで、狩りが好きになってくれると……とっても嬉しいです。
あ……こっちも焼けてますよ、旦那様。ほら、こっちも。
いっぱい食べてくださいね♪
私も、もう一つ……
あーーーん……
もぐ、もぐ、はむ……はむ……。
ふふっ♪ 美味しいっ♪
* * *
ふぅ。いただきました♪
お腹いっぱいです。
はぁ……♪
……旦那様、この後は、どうしましょうか?
まだ、日は高いですし、少しだけここでゆっくりしていきませんか?
この森は魔物がほとんどいないですし……それに、周囲は水で囲まれていますから、ぼーっとしていても安全ですよ。
……はい♪ ありがとうございます。
…………。
……ふふっ♪
いえ……何でもありません。別に、何か、思い出し笑いをしたわけではなくて……。ただ、嬉しくて。
……何もないことが、嬉しくて。こうして、旦那様と……何でもないことで、一緒にいられるから……。
……旦那様。もう少し、そばにいっても……いいですか?
……はい♪
ん……♪
旦那様の体……やっぱり、とっても大きいですね。私とは、大違いです。とっても、安心します……。
あ……旦那様。ちょっと眠そうですね。
少し、疲れてはいませんか? 最近ずっと、狩りに誘っていましたから……私が、連れ回してしまったせいでしょうか。
もし、気分じゃないなってときは言ってくださいね?
……楽しいから大丈夫、ですか?
ふふっ。ありがとう、ございます。
…………。
……私って、少し、わがままだなって思います。
私は、ずーっと、森に暮らしてきました。町に出たことはほとんどありません。
だから……私の心も体も、ほとんど森の一部のようなものなんです。
……私が、旦那様を狩りに誘うのは……もちろん、狩りをしたいから、というのもありますけど……。
……私のことを、もっと知って欲しいから、なのかもしれません。
だから……これは、ただのわがままですから……迷惑だったら、ちゃんと言ってくださいね?
……旦那様?
あ……。
……ふふっ。ありがとう、ございます。嬉しいです……。
私も……旦那様に、知って欲しいです……。ハーフエルフのこと……。私のこと……。
もっと、もっと……♪
ん……。
……旦那様の体、温かい、です……。
……不思議な気分、です。
私にとって、森は、当たり前のものなのに……。
……こんなに、幸せな気分になってます……。
旦那様……♪
……ん。
ん……ちゅぅ、ちゅう……ちゅっ、ちゅぅ……れろ、ん……ちゅぅ……。
は、ぁ……。
……ふふっ♪ 旦那様の唇……美味しいお肉の味が、しました♪
……旦那様。まだ、日は明るいですから……。
もう少し、このままでいいですか……?
……はい♪
好きです、旦那様……♪