前戯 「脱げ」
率直に質問する。
虚偽なく回答しろ。
オマエはマゾヒストか?
ああ、つまり。
被虐行為に性的興奮を感じるのか、と質問している。
ん?
何だ?
聞こえなかった。
もっと明瞭に喋らんか!
『はい』か『いいえ』で回答しろ。
オマエはマゾヒストか?
ふむ。
やはり、自覚はあるのだな。
ああ、そう身構えなくてもいい。
これは叱責ではない。
姉ちゃんは今からオマエの精子を採取する。
現在、オマエのバイタルは極めて安定している。
受精作業には今が最適だと判断した。
前から言っていただろう?
姉ちゃんは生殖に専念する、と。
残念ながら、合格点に達する精子提供者を確保する事が出来なかった。
従って、オマエの順位が繰り上がった。
今からオマエは姉ちゃんの精子提供者だ。
ん?
何を不思議そうな顔をしている。
姉ちゃんがオマエを選んだ事がそんなに不思議か?
勿論、オマエ自身に価値はない。
だが、オマエは、この姉ちゃんの同父同母弟(どうふどうぼてい)だ。
その遺伝子に価値がない訳がないだろう?
適任者を発見・確保する事が出来なかった今、オマエは最も優秀な遺伝子を保有する男性
だ。
その精子を採取する。
ただそれだけの話だ。
さて、それでは作業を開始する。
まず、着衣を全て脱げ。
何をしている?
脱げ。
作業概要を説明するので、脱ぎながら聞くように。
まず最初にオマエの男性器を勃起させる。
次に姉ちゃんの膣粘滑液(ちつねんかつえき)を分泌させる。
分泌を確認出来たら、オマエの男性器を膣に挿入する。
そして、姉ちゃんの膣内でオマエが射精する。
工程は以上だ。
質問はあるか?
よし、無いな。
それでは作業を開始する。
ん?
ちゃんと脱がんか!
姉ちゃんは「全部」と言った筈だぞ?
どうした?
同人音声の指示は聞けるのに、姉ちゃんの命令は聞けないのか?
ん?
いつも喜んで下着まで脱ぎ散らかしてるじゃないか。
普段は空想の世界を相手にオナニーをしている。
今日は本物の女に精子を提供する。
それだけの違いだ。
脱げ。
リラックスしなさい。
オナニーもセックスもやる事は大して変わらん。
せいぜい、オマエの遺伝子が後世に残るか残らないかの違いだ。
おい。
下着を脱いだ時はちゃんと畳めと、いつも姉ちゃんが言ってるよな?
何だその生活態度は。
ん?
「はい」じゃないッ!
畳め。
そこにひざまずいて、両手を使ってちゃんと畳みなさい。
オマエがオナニーしか取り柄の無い人間になってしまったのはな?
こんな風に、一つ一つの日常の挙措(きょそ)を大事にしていないからだ。
ただでさえオマエは他の者に比べて大きく劣っている。
せめて日常の作法くらいは人並みに身に付けろ。
いいか?
姉ちゃんはオマエが憎くていってるんじゃない。
それはわかるな。
なあ。
その下着、品質も悪いし柄も薄汚い。
オマエはそれを異性に見せられるか?
ん?
「質問された事には答えなさい?」
と昔から躾けてきた筈だぞ?
また躾け直した方がいいか?
今は子供の頃ほど優しい指導は出来ないぞ?
オマエの下着。
パンツだ、パンツ!
手に取って顔に近づけてみなさい。
どうだ?
そんな下着は異性に見せられないだろう。
いいか、オマエは男子としての心構えがなっとらんのだ!
なあ。
オマエ、今日死んだらどうする?
敵に死体を見られた時、汚れた下着を身に付けていれば嘲笑の対象となる。
汚れた下着を付けていた本人だけじゃない。
家族、一族、国家が嘲笑されるのだ。
もっと男子としての自覚を持たんか!!!
この件に関しての説教は終わりだ。
以後、改めるように。
ん?
オマエ、股間を見せてみろ。
その手をどけなさい。
手をどけろ。
…おい。
これは何だ?
何故、ペニスを勃起させている?
いや、「謝れ」とは言ってない。
何故、ペニスを勃起させている?
今、姉ちゃんはオマエの生活態度を叱責していた。
男子としての心構えについての話だ。
その話のどこにペニスを勃起させる要素があった?
ん?
何故、ペニスを勃起させた?
怒らないから説明しなさい。
…。
男がボソボソ喋るなッ!
あのなあ。
勃起は生理現象だ。
それについて叱責を与えている訳ではない。
オマエの挙措全てに雄々しさが足りん事を危惧しているのだ。
いいか?
男は男らしく!
女は女らしく!
命のルールはこれだけだ。
オマエは男なんだから、もっと堂々としなさい!
…ふう。
これだけ言っても解らんか。
姉ちゃんが真面目な話をしているのに、オマエは劣情をもよおしている…
誤魔化しても無駄だ。
ペニスの先をこちらに向けてみろ。
手で尿道口を上に向けろ。
ん?
どうして濡れている?
これは何だ?
オマエのペニスはどうして湿っているんだ?
ん?
今、姉ちゃんが真面目な話をしてたよな?
どうして精子が出てるんだ?
いいか。
今、姉ちゃんがオマエを叩いたのは、オマエの将来を… (何か気付いた様子で言葉を止
める)
ふむ。
右手でペニスを摘み上げてみなさい。
親指と人差し指の2本だけを使ってな。
よし、その位置で固定しろ。
なるほど。
これがマゾヒストか…
オマエはこう扱うのが正しいのだろうな。
…大体、把握した。
おい。
もう少しこっちへ来い。
どうした?
もっと姉ちゃんの側まで来なさい。
うん、あと一歩。
よし。
痛かったか?
安心しろ、オマエに与える痛みは後遺症の残らない性質のものだけだ。
今からオマエに痛みを与え続けるが後遺症は残らない。
今からオマエの羞恥心を刺激し続けるが、重度のトラウマにはならない。
そしてオマエは最もオマエの望む形で性欲を満たす事が出来る。
どうだ?
姉ちゃんは、いい姉ちゃんだろう。
今からちゃんとオマエを苛めてやる。
安心しろ。
事前調査は済ませてある。
苛める、と言ってもマゾヒストとしてのオマエを充足させてやるだけだ。
ん?
「許して下さい」?
違うだろう?
いつもオマエが聞いている同人音声では、オマエはどんな台詞を言わされてる?
ん?
どうした?
いつも通りに振る舞えばいいだけだぞ。
マゾヒストのオマエが普段同人音声に言わされている事を宣言するだけだ。
痛みが足りないか?
それとも別の…
すまん、聞こえなかった。
もう一度はっきり言え。
マゾヒストは叩かれた時に、どんな発言をするべきだったかな?
言え。
…そうだな。
「ありがとうございます」
だな。
オマエがいつもパソコンに向かって嬉々として言っている事だ。
オマエの今までの主人はパソコンだった。
空想上の女の絵にオマエは支配される悦びを見出していた。
だが、今からは違う。
私が出産を確認するまで、オマエは姉ちゃんの管理化におかれ続ける。
勿論、オマエがいつ発情し、いつ射精するかも姉ちゃんが決める。
逆らえば罰を与える。
ん?
何だ?
「ゆるしてください」?
ああ、別にノーマルなフリをしなくても構わんぞ。
身体は正直だ。
オマエのペニスは、こんなにも私に管理される事を喜んでいる。
現実を直視しろ。
オマエはマゾヒストだ。
家畜の様に機械的に扱われる事が、オマエにとっての幸福だ。
現にオマエは勃起している。
受け入れろ。
自分を直視出来た者だけが幸せになれる。
安心しろ。
姉ちゃんはオマエの味方だ。
今までは弟して保護してやってきたが、今日からはマゾヒストとして管理してやる。
ん?
何だ?
そうだな。
ちゃんと感謝出来たじゃないか。
偉いぞ。
まだ射精するなよ?
姉ちゃんがオマエに挿入させてからだからな。
それでは精子採取を開始する。