chapter 5
落ち着いて来た?何も言わなくていいわ。目も閉じたままでいなさいな。
どうかしら、貴方のうちに巣食っていた淀みが晴れたでしょう。
今の貴方を包むのが、安らぎというものよ。
……本当に、ありがとう。
わけも分からぬうちに、こんなところまで連れ去られて、人間ではない存在と出会って、貴方はこれまで積み上げて来たすべてを私に奪われた。己に何も責はないというのに。
なのに、貴方は私を受け入れてくれた。私がいいといっているのに、暴力も振るうことなく……。
貴方が心の中でどれほど私を非難したのか、そこまでは分からない……。
けれど、私が為すことを受け入れてくれたということは、そういうことなのだと信じるわ。
本当に、ありがとう。
眠っているだけでは、決して味わえない、そして、眠りよりも価値があると思える時間を過ごせたわ。
これから先、貴方と過ごす時間が楽しみになった。
……ふふっ、ごめんなさいね。私ばかりしゃべり続けてしまったわね。
もう、疲れたでしょう。
このまま、ゆっくりとおやすみなさいな。
汗に濡れた髪も、体も。涙で濡れた顔も、首筋も。私が綺麗にしてあげるから。
私の可愛い子。私の乳房を枕に、汗を拭う手指を子守唄にして、おやすみなさい。
貴方が目覚めたとき、いったいどんな顔を見せてくれるのか。
楽しみにしているわ……。