chapter 4
そろそろ、一先ずの終わりを目指すとしましょうか。
鎖、ほどいてあげる。そのまま私に向かって倒れて来なさい。しっかりと抱きとめてあげるから。
んっ、ふふっ…、おかえりなさい……。
これから先、貴方の揺りかごは私の腕と胸の中。これから連綿と続くことになる、まどろみに似た生涯の、初夜。
その前に、一つきっかけをあげる。心で感じる果ての、ね。
さぁ、もっと深く、私の胸を枕になさいな。
遠慮なんてしないの。今の私の乳房は貴方を包むためにあるのだから。
……そう、それでいい。
次は、貴方の涙で濡れたこの指をね、こうして…、私の唾液と絡めるの。
そして、貴方がこの指を舐める。
この指はね、ただの指ではないわ。ジュクジュクに蕩けた貴方の心なの。それを、貴方は自分の口で舐め溶かす。
赤ん坊が、母親の乳を飲むように、想い人に尽くすように、
頭の中を空っぽにして、恍惚と安堵に心を満たして、私の抱擁を受けながら、ね。
そう、そうよ……。上手、上手。
貴方のお口の中、とっても熱い。これなら、きっとすぐに溶かし切ってしまうわね。
どうかしら、心地良いでしょう?
人は唇も舌も鋭敏な感覚を持つの。キスや口での奉仕に快楽が伴うのはそのためなのよ。
あら、よだれが…。ふふっ、私が拭いてあげましょうね。
私がすべての世話をするのだから、貴方は一心にしゃぶり続けなさい。それが貴方の唯一の義務なのだから。
まぶたも重そう…。閉じてもいいのよ。ここには怖いことなど何もないから。目を開いている必要もないもの。
……ねぇ、胸の中に、何かあたたかいものを感じない?
そこにね、貴方が舐め溶かした心が流れ込んでいるの。
空っぽだった自分の中に、あたたかい雫が満ちていくのを感じて。
トク、トク、と溜まっていくよ。それに合わせて、貴方の心臓もトクン、トクンと高鳴っていく。
もうすぐ、貴方は生まれ変わるの。男も女もない悦びに包まれて、ね。
耳のふち、耳の裏、指でカリ、カリ、っていじってあげる。
体、震えてしまうでしょう?いいのよ、その感覚も受け入れて。
声、出てきたわね。とっても可愛い声。聞いている私も、胸があたたかくなって来る。
そのまま深く、沈んで来なさい。
私の胸に、そして、その中にある心という海に。
貴方の身も心も、今宵から私のもの。だから、守ってあげる。
不安や恐怖から。貴方を飲み込もうとする私以外の暗闇から。
揺りかごの中で、心地よいまどろみに似た世界の中で、貴方の灯火が消えうせるまで、ね。
さぁ、そろそろよ。貴方が生まれ変わる瞬間が、すぐそこまで来ているわ。
だから、最後の弾みをつけてあげる。
敏感なお耳を、私の、この唇で……。
……ふふ、私の指、飲み込まれてしまいそう。
大丈夫よ、この指は、どこにも行かないわ。
私の指だもの。貴方が望む限り、共に、あり続けるものよ。
体も、こんなに震えてしまって…。
しっかりと抱き締めてあげる。
好きなだけ私の腕と乳房の中に埋もれなさい。
いい子、いい子……。
怖くない、怖くない……。
安心なさいな……。
貴方の髪を撫で付け、梳き分ける手と、指が、貴方の求めているものなのだから……。