死の宣告
「こんにちは。……あー、誰か呼んでも無駄だよ。アタシは今、アンタにしか見えないはずだから」
「……変な落ち着き方してんなぁ……。無言でケータイ取り出すのやめてもらえる? 写メにも写んないようにしてるからね?」
「あれ、今ってスマホって言うんだったっけ……おい。第一声で年齢聞くなんてデリカシーなさすぎでしょ。アホなの?」
「いやっ、え? 興奮するなっ。落ち着け。……んんっ。あー本題本題」
「いやまぁ、ちょっと言いにくいんだけどさ。……アンタ、もうすぐ死ぬから」
「うん。アタシはアザミ。無理に信じなくてもいいけど、いわゆる死神ってやつ」
「ええー……? なんでテンションあがってんの……?」
「や、ファンタジーに慣れ親しみすぎでしょ……。怖がられることはあっても、歓迎されたことなんて全然なかったよ」
「はぁ……、いやね? 死の宣告なんて別に死神の義務じゃないし、最初は出て来るつもりじゃなかったんだけど」
「……703号室の子。あの子のドナーになったんだってね。同じ病院で面識があって、肉親でもないのに適合するのって、やっぱり珍しいのかな?」
「あー、いや、別に……。知り合いって感じじゃないし。病気のことも、アタシにはよくわからないよ。……それはそうとしてさ」
「ただ一つだけ。一週間後の夜、二十三時半ごろにアンタは死ぬ。これはもう、ほとんど決定事項なんだよね」
「やっぱ、自分のことは覚悟決まってるみたいだね。アタシとしては、楽でいいけど」
「うん。ちゃんと伝えたからね。あとは残りの時間、後悔しないように生きなよ? 一週間後に、また迎えに来るから」
「じゃあ……っ、なーに? 他に訊きたいことでもある? 重要なことじゃなけれ、ば……ん? ……ふんふん」
「……は、……はぁっ……?! へ、は、あ、アタシを……?!」
「一目惚れ……? 後悔しないように……?! って、ま、まて! 待てーっ!」
「はー……。会って間もない、しかも死神って信じながら告白してくる奴なんて、確実に初めてだよ……。アンタ、相当おかしいでしょ」
「あー……、うーん……。悪いけど、アンタの気持ちに応えてあげることはできない、かな。だってアンタ、もうすぐ死ぬって言われてるんだよ?」
「例えば……、もしも、仮に、万が一だけど、そんな状態で告白されて、女の子のほうもアンタを好きになったとしてさ。一週間後にはお別れって。それって自分勝手すぎない?」
「いや……うん。確かに、後悔するなって言ったのはアタシだけど……。ううぅ~~……」
「と、とにかく今日はもうおしまい! ここまで! さよなら!!」