シーン3
ねえお兄ちゃん。もう寝ちゃった?
……ううん。別に何でも無いの。ただ、起きてるならありがとうって言っておこうと思って。
また今日も、妹の我が侭に付き合わせちゃったから。
たぶん明日も、明後日も、わたしの我が侭をお兄ちゃんに押し付けるだろうから。
……お兄ちゃん、わたしは凄く怖いの。
兄弟でも行為の最中は気持ちいいし、しかも幸せでいられる。
それはきっと間違った幸せの形なんだろうけど、今ある幸せを捨てるなんて、わたしにはとてもじゃないけど出来ないよ。
その気になれば、きっといつまでもこの関係を続けることができる。
もちろんわたしはそれで幸せだけど、お兄ちゃんもそうだとは限らない。
それが怖いの。
わたしの幸福感は、大好きな人のそれを犠牲にして成り立ってるんじゃないかって。
だからお兄ちゃん、もし好きな人が出来たら、もしわたしのことが嫌になったら。はっきりと言って欲しいの。
大好きなお兄ちゃんにそう言ってもらえるなら、
……そう言ってもらえるなら、そのとき初めて、わたしはお兄ちゃんと距離を置けると思う。
ごめんねお兄ちゃん、こんな話して!
抱き合った後はもっとこう、将来の幸せの話をしないとね!
まあとりあえず、今日はもう寝ちゃおうか。お兄ちゃんも疲れてるだろうし。
うん。……おやすみ。
………………。
………………。
……お兄ちゃん?
もう寝ちゃった?そっか、やっぱり疲れてたもんね。
……『はっきりと言って欲しいの』か。
お兄ちゃんが決してそうは言わない事を、わたしはよく知ってるんだよ。
ずるい女だなぁ……。
END