トラック1
【田舎の古民家の縁側で佇むお姉さん。部屋の奥の暗がりで拗ねる男の子】
[チュン、チュン…チチチ…(鳥の鳴き声)]
ふぅ…良いお天気。
まだ風は少し冷たいけど、日差しが優しく肌を照らして気持ち良い…
ねーぇ、いつまで拗ねてるの?
そんな部屋の隅で背中を丸めてないで…こっちに来てご覧なさい。
お日様ぽかぽか。陽気が心地良いわよ?
[とことこ…(足音)]
ふふ…日当たりの良い所に来ると、肌の白さが際立つわね。
青瓢箪ってこんな顔の事を言うのかしら?
もっとお天道様の下に出なさいな。
ずっと日陰に居ると見えにくい物もあるでしょうに…
眩しい物から目を逸らしてばかりじゃダメ。かえって目が悪くなっちゃう。
はい、涙拭いて。鼻水も…
せっかくのイケメンが台無し…ふきふき、ふきふき…
あれ? 拭いても大して変わらない。誰に似たのかしら? んふふ…
今回は長かったわね?
傷ついて、泣いて…拗ねて、いじけて…
またお外で何かあったのね…
ほら、また下を向いて押し黙る…
ううん。何も言わなくても分かってる。
だって、私は貴方のお姉ちゃんだもの…
親しい人にも言えない事ってあるわよね? 男の子なら尚更…
言いたくないなら、それでも構わない…
でも、いつまでも落ち込んでちゃいけません。
どこかで踏ん切りつけて、立ち上がって、次の一歩を踏み出さないと…
ほら、ここ。お姉ちゃんの膝の上。
ここに頭載せなさい。膝枕してあげる。
躓いた貴方を立ち上がらせるための踏み台。
良いから良いから。遠慮しないで来なさい。
んっ…
ぉほ…結構重いね? また少し大きくなってる。
正座、いつまで持つかしら? すぐに足が痺れそう…
ん? お姉ちゃんの膝枕、柔らかくてお餅みたい…?
え~っ、そんなにモチモチしてる? 私の太腿。やだ…
うん…お布団みたいで寝心地が良い?
もう! それって褒められてるのかしら? んふふ…
よしよし…お餅でも大福でも何でも良いから、
私の膝枕でしばらく休みなさい。
ここなら日が当たって、部屋の奥に篭るより遥かに健康的だから…
よしよし、よしよし…
髪の毛サラサラ…
お肌に直に触れると、ちょっとくすぐったい。んふっ…
ここ、日が当たって暖かいでしょ? 適度に風も感じられて心地良い。
お姉ちゃんのお気に入りの場所。ずっと居たいくらい…
貴方もここでしばらく休んでいきなさい。
お日様の下に居ると、嫌な事なんてどこかに消し飛んじゃうから…
ん…仰向けに寝ると日差しが眩しい?
さっきから目を閉じちゃって。寝ては…いないわよね。
長い睫毛。女の子みたい…
ぬっふ…えいっ、おでこに蜜柑。
お餅の上にお餅が載って、その上に蜜柑。鏡餅の完成。
床の間に飾ろうか? あはっ♪
食べる? 蜜柑。
私、薄皮まで綺麗に剥くの上手よ。
こんな小さな実、わざわざ薄皮まで剥かなくても良い?
ううん、手間をかけた分だけ味も良くなるものよ。
つぶつぶの果肉を直接頬張ると、とっても美味しいんだから。
こう…薄皮の内側の凹みの部分を…前歯でプツンと切って…はぷっ!
その切れ目から薄皮を左右に割いて…後は摘んで捲るだけ…べろ~ん…
ほら出た、果肉! 缶詰みたいに綺麗でしょう?
はい、あ~ん…
美味しい? 甘い?
じゃあ、お姉ちゃんも一口…はむあむ…
うん。実は小振りだけど、粒がしっかりしてる。
歯で噛み潰すと中から果汁が溢れて瑞々しい…んじゅる…
剥き剥きした甲斐があったでしょ~?
グレープフルーツなんかも一房ずつ剥いて食べる方が良いわね…はぷっ、
横から切れ目を入れてスプーンで食べるの、アレは無様。ダメ。
お汁が垂れて勿体無いし、果肉も潰れて食感が無くなっちゃう…はもあむ…
切り口に砂糖をまぶすのも野暮ね。そんな事しなくても十分美味しい。
ほろ苦さの中にある確かな甘み。日の光に育まれた優しい味…
人生にも時折苦味があった方が、甘みも引き立つというものよ…あむっ、じゅる…
外の厚皮はマーマレードにするのも良いわね。肉厚なら砂糖漬も…
えっ、皮まで食べるなんて貧乏臭い?
何言ってるの、昔の人の知恵よ。果肉とは違う美味しさがあるんだから…あむ…んぐっ…
あら、ごめんなさい! 蜜柑、ほとんど私一人で食べちゃった。
食べ方の話してたら、つい夢中になって…
太腿もお餅になる訳だ。あっは♪
あ…良い笑顔。
お日様に当たったお陰かな? 顔色も良くなってきた。
さっきまでの生白い顔とは別人。
暑くはない? 日差しが強くなってきたけど…
平気? そう、良かった。
でも……窮屈じゃない? 下の方。
いつの間にか、こんもりと盛り上がってる。
ううん、別に謝る事なんて無い。
そうよね? 女の人の柔らかい肌に埋まってると…
自然とそうなっちゃうわよね? 男の子なんだし。
ねぇ…暑くなってきた事だし…下、脱いじゃいましょうか?
平気よ。この縁側の向こうは、広いお庭と高い塀だけ。
誰かに覗かれる心配は無いから。
全てをお日様の元へさらけ出して、すっきりしましょう。
これから新しい一歩を踏み出すんだもの。
逃げ隠れしたり、モヤモヤを仕舞い込んだままにしてはいけません。
良い? じゃあ、はい。
ズボンもパンツも…脱ぎ脱ぎ、脱ぎ~…
[ふぁささ…(脱衣)]
ふわぁ~!? お、大きい…ね?
こんな小さな体から、にょっきりと天へと昇る勢いで飛び出してきた…
皮を被った状態でもこの大きさ。
さらに一皮剥けたら、どうなっちゃうのかしら? んっふふ♪