猫又さんの爪磨き
・・・こら、動かないで。
ちゃんと拭かないとカピカピになるらしいわよ。
その・・・あなたのもそうだけど、わたしがつけちゃったのも。
ん、んぅ・・・っしょっと・・・あなた、くすぐったいの弱いのね。
大人しく拭かれなさい。
じゃないとやらしいいたずらするわよ。
にゃふ・・・たくさんついてる。
白くて透明で、ぬるぬるべたべたしたのにまみれてるわ。
全部取れたかしら?
じゃあ、洋服をなおして・・・。
・・・できたわ。これで・・・
ううん、違う・・・大丈夫じゃない。
こっちも伸びてる。
ちょうど良かった・・・。
足の爪、きらせてちょうだい。
爪切りの道具、こたつの上に出したままだったから・・・。
いいでしょう?
はい、ここに足をのせて。
右足の小指からやっていくわね・・・。
人間の・・・男の人の足の爪は特にかたいから・・・
正しくは切るんじゃなくて削って整えていくの。
こうやって・・・まあるく形を作りながら。
白く伸びた所が何処かに引っかからないように、滑らかに・・・。
足の爪まで整えてあげるのは女の甲斐性。
朝帰りをした男の足の爪が綺麗だったら、相手の女は器量良しだから気をつけろ。
昔の女性はそんなことを言ったらしいわ・・・。
ふーっ・・・うん、見よう見まねだけどきれいにできるものね。
この前割れちゃった所、ちょっと切っただけでそのままにしておいたでしょう。
ガタガタになってるわ・・・また引っかけちゃうじゃない。
そんなことが無いようにきれいにしておいてあげるわ。
にゃふ・・・子猫の頃はわたし、爪切り嫌いだったのよ。
せっかく一生懸命といでとがらせたのを切られるのが嫌で
本棚の裏に籠城したこともあったわ。
・・・でもあなたにするのは楽しいものなのね。
あ、親指・・・少し巻き爪気味。
たかが、じゃないのよ。
巻き爪は酷くなると肉に食い込んで、
痛くて歩けなくなってしまうことだってあるわ。
こんな感じ・・・真ん中を少し薄くしておくといいんですって。
ん、んぅ・・・ふー・・・もうちょっと・・・んんっ・・・ふーふーっ。
残ったカスを飛ばす為よ、わかるでしょう。
あ、もしかして・・・足の指もこうやって・・・
んちゅ、れろ・・・舐めてもらうの期待していたの?
削るなら乾いたままの方がいいかと思っただけなのだけど・・・
あなたが舐めてとおねだりしてくれるなら今度からそうする。
んぅ・・・もう片足も。
ふ、ん・・・この爪やすり本当に使いやすいわ。
これが猫缶よりも安く買えてしまうのよね・・・
お母さまに追加してもらうようお願いしておいてちょうだい。
にゃによぅ・・・仕方ないじゃない、感激してるんだもの。
犬みたいにシッポが揺れてしまうくらい・・・。
み、耳まで?
むぅ・・・見なかったことにしなさい。
ふーっ・・・ふぅ、爪の中に小石が入ってる。
人間の爪ってこんな状態でも気にならないものなの?
それとも・・・あなたが鈍いのかしらね。
・・・ふぅん?じー・・・うん、わたしの中では鈍いからだと納得したわ。
こっちの親指は何ともないけど、予防策として真ん中薄目に削っておくわね。
なってしまうとなかなか治らないってお昼のニュースの人が言ってたの。
だから丁寧にしなきゃ・・・ん、んんっ・・・。
ん、よし・・・ふぅー・・・ふっふっ・・・完成ね。
確認したいから両足そろえて見せて・・・
ここのバランスが・・・整えて・・・ふーぅ・・・
にゃふ、我ながら上出来だわ。
新聞紙は丸めておいて・・・。
にゃふふ・・・ふふ、あなたの足の先までわたしの手入れ済み。
・・・ん?人間だって動物の毛並みを手入れして喜んだりするでしょう。
これもそういう気持ちなのかしら・・・欲求が満たされる感じがするわ・・・。
昔の女の人は面白いことを考えたものね。すりすり。