中二病妹の邪気眼耳かき○
ふっふっふ・・・こんな所で寝てしまって・・・
私の結界の中で安心しきっているのでしょうね。
お兄さま、ついに私はつきとめましたわ。
いくつもの世界を巡り・・・ついに武器を得たのです。
これでやっと、お兄さまの頭に取り付いた封印の魔物を浄化し、
内に眠る騎士の魂を目覚めさせることができる。
この瞬間を何百年・・・いえ、何千年待ちわびたことでしょう・・・。
さあ、この聖なる杖でお兄さまの脳に術を送り込んでさしあげますわ。
んぅ・・・暗くてよく見えませんわね・・・ん、ふ・・・
ううん、結構汚れていますわ・・・
もう、運命の恋人がこれでは・・・んんっ・・・ふ、はぁ・・・。
きゃあ!お、お兄ちゃん、いきなり動かないでっ。
・・・じゃない、こほん・・・お兄さま?今は大事な儀式の最中ですのよ?
大人しくしていてくださいませ。
お兄さまの耳に杖を差し入れ、直接封印の魔物を消し去りますの。
ええ、この聖なる杖ですわ。
み、耳かき・・・?
はぁ・・・幻惑の魔法に捕らわれた瞳にはそう見えてしまうのですね。
ほら、この先端についた羽根が見えるでしょう?
私が自らの天使の羽根を使って力を与えた杖ですわ。
全くもう・・・また設定とか失礼なことを言いますの?
何度も説明したじゃありませんか。
お兄さまと私は、暗黒騎士と天使の姫君という
敵対する立場でありながら恋に落ち・・・ええ、それは許されない恋でした。
記憶を封じられ、人の子として転生させられました。
どちらかが思い出す度に何度も何度も・・・そうやって引き裂かれたのですわ。
今度こそ絶対に結ばれてみせる・・・二人で戦いぬきましょう、お兄さま・・・!
だから儀式の続きをさせてくださいませ。
もしも断るのであれば・・・別の方法を取らなくてはなりませんわ・・・。
例えば・・・駅前のイルカの石像。
あそこは力の集まる場所ですから、
イルカの背に乗り呪文を唱えれば
奥底に眠る力が封印を破って出てくるのではないかと・・・!
・・・耳でお願いします?ええ、もちろん頑張りますわ。
それにしても・・・かなり汚れていますわね。
暗黒騎士さまがこんなにしては・・・ま、まさか・・・!
これはお兄さまの脳に取り付く封印の魔物のウロコ・・・!?
くっ・・・大変ですわ、早くなんとかしなければ・・・。
ん、んぅ・・・ふぅ・・・ほら、まだ入り口ですのにこんなに・・・
奥の方はいったいどうなっているのかしら・・・。
ふぅ・・・ん、ふ・・・んんっ・・・真っ暗ですわ・・・。
ならば・・・光の精霊よ、力を貸して!
くっ、封印の魔物に近づくことに精霊が怯えている・・・!
私だって怖いです・・・。
でも、なんとしてでも私は・・・お兄さまの・・・
暗黒騎士さまの封印を解いてみせます。
ん・・・んんっ・・・ふぅ・・・・・・はぁ・・・。
黄色い・・・ん、く・・・かたまりでしょうか・・・?
ああっ!忌まわしい封印の魔物め、こんなところに卵を・・・!
許せませんわ!
私のホーリースペルで一気に・・・だめ、いけませんわ!
あまりにもお兄さまの人間の器に負担がかかりすぎます。
翼を出してはいけないの・・・。
ん、く・・・んん、ふ・・・んー・・・ゆっくり進んでいきますわよ・・・。
焦りは禁物。
狡猾な魔物が私の心を乱し、
私にお兄さまを傷つけさせようとしている可能性もありますもの。
冷静さを欠いてはなりませんわ。
ん、んぅ・・・ふぅ、かりかり・・・んー、はふ・・・・・・。
わわっ、おっきいの落としちゃった!
ティッシュティッシュ・・・じゃなくて、聖なる布を・・・。
こほん、これに包めばウロコもただの灰に還りますわ。
続けますわよ。
少しずつ奥に・・・んんっ・・・ふぅ、ん・・・かりかり・・・
どんどん出てきますわ・・・ん、っしょっと・・・。
ん、んぅ・・・キリがない・・・んぅ、かりかり・・・
くっ、なかなか取れませんわ。
お兄さまの皮膚に食らいついているようです・・・ん、っふ・・・。
私は負けません・・・ふ、んんぅ・・・
今世でこそ二人で結ばれるために・・・ん、く・・・あきらめませんわ。
もうちょっと・・・んんぅ、ん、届きそう・・・やりましたわっ。
残りも倒しますわよ。
ん、んん・・・ん、ふ・・・ふぅ・・・・・・んんっ、はぁ・・・
ふふ、これで最後ですわね。
悪しき蛇の魔力の残滓よ・・・我が清浄なる輝きの前に消え去りなさい!
よーし、完璧ですわ。奥までよく見える。
どうですか、お兄さま。
霧が晴れたような心地でしょう?
・・・楽しそう?何を言ってますの。
命懸けの儀式を楽しむ余裕なんてありませんわ。
こちらの耳も有りますのに・・・。
もちろん、片方だけなわけがないでしょう?
わぁ・・・こちらも酷い状況ですわ。
お兄さまが私の言葉を聴いても「設定」や「妄想」や
えっと・・・なんでしたっけ?ちゅうにびょう?だと言って信じてくださらないのは
お耳がこんな状態だったからですのね。
私の言霊がちゃんと届かずにいた・・・悲しいですわ。
けれどそれも今日で終わり。
聖杖がこの手に戻ってきたのですから。
綺麗に取り去ってさしあげますの。
大丈夫です、魔物の弱点はわかりましたわ。
んんっ・・・こうやって・・・
杖をウロコに触れさせ・・・ん、ふぅ・・・んん・・・んぅ・・・
力を送り込みながらお兄さまから引き離す・・・ん、んぅ・・・。
入り口に近いものから順番に・・・ふぅ・・・ふ、んん・・・
ふ、はぁ・・・お兄さまから離れなさい・・・っ。
はぁ・・・ん、ふ・・・・・・んんっ・・・んんっ・・・次はこれ・・・。
そっとそーっと・・・ん・・・はぁ、んん・・・慎重にやらなきゃ・・・。
今のお兄さまは暗黒騎士の魂を封じられ・・・ん、っくぅ・・・
んんっ・・・んん、人の器に閉じ込められた状態ですもの。
我々の力による傷が致命傷になりかねませんわ・・・はふ、んん・・・くぅ・・・。
私が守りますから・・・んんっ、はぁ・・・ん、ふ・・・。
奥は暗いですから気が抜けませんわ・・・。
んんっ・・・んぅ、ふ・・・明るければいいのですけど・・・んん、はふ・・・。
眼帯を取れだなんて・・・お兄さま、いけませんっ。
黄金龍は闇の者たちを見境なく襲ってしまうのですよ?
ん、ふぅ・・・お兄さまですら、あの子は襲いかかってしまうのです。
かりかり・・・んん、私を思いやってくださるのは・・・
ん、ふぅ、解りますけど・・・はぁ・・・ふ・・・
お兄さまを危険な目に合わせるわけには・・・
ああっ!落ち着きなさい!
この方は違うのっ・・・やめて、お願い、暴れないで・・・!
・・・はぁはぁ、お兄さま、緊張したお顔をなさって・・・心配ありませんわ。
悪い子ではないの。
私の護衛としての役目を果たそうと必死なんですの。
お兄さまから眼帯の話が出て久しぶりに目が覚めてしまったようで・・・
ふふ、今はちゃんと眠っていますわ。
あら・・・大きなのが・・・くっ、手強そうですわね。
目を閉じて、力を杖に集め・・・え?ちゃんと開けててくれ?
集中しなければなりませんのに。
でも、騎士さまも言っていましたわ。
お前の瞳を奪い去りたいと・・・何度転生しても変わらないんですのね。
ちゃんと目を開いたまま、奥にいきますわ。
ん、んんっ・・・ふぅ、なかなか届かない・・・ん、んぅー・・・
ふぅ・・・やっと届きましたわ・・・かき出して・・・んんっ・・・。
お兄さまの中から出て行ってもらいますの・・・ふぅ、ん・・・。
どんな凶悪な姿で私を恐怖させようとも、
暗黒の騎士さまと契りを交わし・・・ん、ぅ・・・
光と闇の両方の力を知った私は屈しません・・・!
ん、く・・・はぁ、ふ・・・んんっ・・・もう少しで・・・はぁ・・・
んんっ、んんっ・・・はふ、ん・・・取れましたっ。
残りも一気にいきますわ。
ん、んー・・・っしょっ・・・はふ、んんっ・・・ふぅ、はぁ・・・
んぅ・・・はぁ、ふ・・・よし、こちらも綺麗になりましたわ。
魔物のウロコに私の術が阻まれる心配はありません。
さあ、儀式のクライマックスですわ。
ふふふ・・・この杖を奥までぶすっと突き刺し、
お兄さまの頭を魔物の本体ごと貫くのですわ。
聖天使の杖ならば魔物にだけダメージを・・・え?もう大丈夫?
まあっ!さすがは騎士さま!
自ら封印の魔物を倒してしまわれるなんて。
そんな・・・わ、私の助けがあったからだなんて・・・
て、照れちゃうよぉ・・・いえ、照れてしまいますわ。
お兄さまっ、お兄さま。
私に復活を遂げた騎士さまのお力を見せてくださいですの!
右手を掲げ・・・
「我が剣は全てを喰らい尽くす深淵より生まれし黒炎のドラゴン」と!
・・・今度にしてくれって・・・あーん、焦らすなんていじわるですわー!
でもそんなサディスティックな所もす・て・き♪