Track 10

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本番「正常位」

◆10  階段を上がると、部屋の前で枕を抱く優衣の姿が見えた。  扉に向き、ノックしようと持ち上げた手を躊躇うように  動かしている。 【兄】 「優衣?」  後ろから声を掛けた。 【優衣】 「……? あれ、兄さん……部屋にいなかったの」 【兄】 「あぁ、ちょっと脱衣所にな」 【優衣】 「灯りが点いていたから、てっきりいるのかと……」  そう言ったきり、抱きかかえた枕に顔を埋めて黙ってしまう。 【兄】 「……どうした。入らないのか?」 【優衣】 「ぁ……ぅ、ぅん……。………………はいる」 【兄】 「……?」  迷いながら出したような声。  枕を持って部屋の前に立っていたのに、何を迷ったのだろう。  昨日までと同様に様子のおかしい優衣と前後して部屋に入る。  あとは寝るだけの俺は迷わずベッドに向かう。  はたと後ろを振り向けば、優衣はまだ扉の前で動かずにいた。 【兄】 「優衣?」 【優衣】 「……、ん?」  数瞬遅れた反応。 【兄】 「寝ないのか?」  布団を持ち上げる。 【優衣】 「あ……あぁ、うん。……あ……いや、ぇ……」  煮え切らない返事をする。  らしくない。 【優衣】 「…………あー、やっ、やっぱり、一人で寝るわ」 【兄】 「はい?」 【優衣】 「はは。……だって、兄さんが望んでないことを  押し付けたくないから……」 【兄】 「…………」 【兄】 「ちょ、ちょーっと待ってくれ。  何を言ってるのか……」 【優衣】 「子供っぽいもの……ね。うん、確かにその通り。  これじゃいつまで経っても自立できない……  兄さんに偉そうなことも言えないわ」 【兄】 「なんだ、どうした? お前、なんか最近おかしいぞ」 【優衣】 「色々考えたの。何度も思い返して……。  いつも私のほうが無理を言って、兄さんと寝てばかり……。  兄さんの意思は無視して……本当に、勝手よね」 【優衣】 「今までごめんなさいっ。  迷惑かけてばかりで……。  もう、添い寝なんてお願いしないから、安心して……ね?」 【兄】 「……」  これからは一人で寝る、兄さんに迷惑は掛けない……  そう言いたいんだろう。  言っていること自体は常識的で、  口酸っぱく言ってきた俺からすれば喜ばしいことのはずだ。  だけど、この焦燥感に似た喪失感はなんだ?  どこか、心の拠り所が手元から無くなってしまうような気持ち。 【兄】 「……俺は、迷惑なんて一度も口にしたことはない」 【兄】 「ただ、一般常識的には一人で寝るもんだろって説いてただけだよ」 【兄】 「別にお前と添い寝をしたくなくて言ってたわけじゃない」 【兄】 「むしろ……まあ、なんてーの?  ……楽しみにしてたっていうか、なんていうか、まあそんな感じで」 【兄】 「優衣が添い寝したくないなら別だけど、  したいなら好きにすればいい。というか寝てほしい。  ……俺はそう思ってる」 【優衣】 「……」  優衣は黙って俺の言葉を聞いていた。  考えるように視線を宙で動かすと、こちらを向く。 【優衣】 「…………ほんとに?」 【兄】 「……あぁ」 【優衣】 「兄さんも……私と添い寝したいって、本当に思ってる?」 【兄】 「本当だって。……何度も言わせんな」 【優衣】 「…………ぅン、わかった。一緒に寝る」  やれやれだ。  優衣はゆっくりとした足取りでベッドにやってくる。  説得は済んだと思っていたが、未だに優衣の表情は晴れないまま。  まだ何か気がかりがあるんだろうか。 【優衣】 「ん……んん、はぁ……」  ベッドに横になると息をついた。  前と同じように腕を抱いてくることはなく、  今日に限っては袖も掴んでこない。 【優衣】 「……ねえ、兄さん……怒ってる?」 【兄】 「怒る……?」 【優衣】 「その……この前、私が大きな……あえ、ぎ、声を出して……  お母さんたちに見つかりそうになったときの……こと」  一昨日のことだろう。 【優衣】 「私が、兄さんにお願いされたわけでもなく、  勝手にしようとしたから……あんなことになったわけで」 【優衣】 「私が……兄さんの気持ちを、あたかもわかってるかのように  振舞う行動は……もしかして、……もしかすると……  兄さんを苦しめてるんじゃないか、って……」  次第に萎んでいく声。  覇気のない様子は俺を驚かせた。 【兄】 「……気にし過ぎだ、バカ」 【兄】 「何を思ったかしらんが、そんなに難しく考えるな」 【兄】 「俺は単純なんだろ? 考えが簡単に読めるって言ってたじゃないか」 【兄】 「伊達に長いこと兄妹やってきてないんだ。  どういう人間かなんてわかってるだろうに、  どうしていきなりそんなことを言い出すんだ」 【優衣】 「だって……、……ふ……不安なんだもの」 【優衣】 「兄さんのしたくないことはしたくない……。  ちゃんと確認して、兄さんの意思をしっかり聞いておかなきゃ……  じゃないと……、……兄さんに……嫌われちゃう」 【兄】 「はははっ、なんじゃそら」  呆れて笑いが出た。 【優衣】 「っ、なんで笑うのっ」 【兄】 「そんなことで嫌いになんてならんよ」 【優衣】 「……? そう、なの?」 【兄】 「嫌いになってたら、俺はこの世の人間全員が嫌いだぞ」 【優衣】 「あ……。ふふっ……うん、確かにそうね。  そんなことで嫌いになってたら、人間不信になっちゃうわ。  人間なんて、勝手に行動する人ばかりだから」 【兄】 「そういうこと」 【兄】 「お前は自分の思ったままに行動すればいい。  きっとそれが俺の意思に限りなく近いはずだ」 【兄】 「だから、優衣のしたいようにすればいいさ」 【優衣】 「……うん、ありがとう、兄さん。  じゃあ、今まで通り……私の思った通りが兄さんの意思。  ……それでいい?」 【兄】 「あぁ。お前の一存が正しいよ」 【優衣】 「……わかった」  安堵するように一息つき、口角を上げて答えた。 【優衣】 「…………私の、思ったこと……。私のしたいことを……素直に……」 【優衣】 「…………その言葉が、本当……なら、……一つだけ……、  っ……一つだけっ、したいことがっ、…………あります」  叶わぬ夢と思っていた。  その夢が叶うかもしれない。  でも、断られるかもしれない。  そんな、希望と不安が複雑に入り混じった神妙な表情。 【優衣】 「……」  視点は定まらず、事前準備は終えたにも関わらず  言おうか言わまいか迷っている。  ひとつ、唇を湿らすと……こちらを見上げた。 【優衣】 「……きすが……したいです」  発言の途中で自信無げに視線は伏せられた。 【兄】 「え……」  声にならない声が出た。 【優衣】 「唇と、唇を合わせた……キスを……、  …………兄さんと、したいですっ」 【優衣】 「………………いぃ?」 【兄】 「……」  優衣なりの精いっぱいの言葉なんだろう。  自分の感情に巻き付く、説明しようのない衝動。  言葉少なで表現の乏しい想いは、飾り気のない素直な感情だ。 【兄】 「それは……」  断られると思ったのか、優衣がばっと顔を上げる。 【優衣】 「ぃっ、今もっ、胸が張り裂けそうでっ!  ずきっ、ずきって、苦しくてっ! ……でも、なんだか……っ、  幸せ、で……。でもっ、とっても切なくてっ!」 【優衣】 「断られるかも、とか……嫌がられるかもって思うと、怖くてっ、  怖くてっ……! でもっ、でもっ! もし、っ……いいよって言わ  れたら……もし、言ってくれたらって思うと、それだけで嬉しくて、  嬉しいのに、なんでかまたっ、胸が痛くてっ!」 【優衣】 「痛いっ……痛いのっ……! もう、いや……やだ、っ……。  助けて……お願い、助けてよぉっ……!  兄さん……っ、……にぃ、さ……っ」  ……やっぱり、駄目だ。  俺は優衣を手放すことはできない。  普通の生活のためとか、ありきたりな人生を送るために  距離を置くべきだとか考えたこともあった。  それは、優衣の気持ちを無視した自分勝手な考え方だ。  そもそも、こんなに偏屈で不器用な性格になったのは  俺の責任でもある。  にも関わらず優衣の想いを、生き方を、  延いては今を生きる優衣自身を否定することなんて……  俺にはできない。  優衣がその道を選ぶのなら、それを応援するのが兄である  俺のすべきことなんじゃないだろうか。  普通の兄がすべきこととかいう綺麗事じゃない。  『優衣の兄』である俺がすべきこと、ただそれだけのこと。  こんな単純なことを、  どうしてもっと早くに気付けられなかったんだ。 【兄】 「……優衣。顔上げて」 【優衣】 「っ、……は……ぅ、え……? ……あっ……兄、さっ……ン、  ンん……む、フ…………ん、ちゅ……」 【優衣】 「ちゅっ……ちゅ、ぷ……ぁ……。  はぁ……はふ……にい、さん……?」 【兄】 「優衣……ごめんな?」  頬をそっと撫でる。 【兄】 「俺はバカだから、優衣の気持ちを全然わかってやれなかった」 【兄】 「俺だけがずっと我慢してるんだと思ってた……」 【優衣】 「……あ、ぅ……えぇと、それって……ン、むっ!  ん、っ……ンっ、ちゅっ……ちゅっ、フ……んンっ……っ」 【優衣】 「ちゅ、ちゅっ……んっ……! ちゅる、ちゅぴ……フ、ん……ちゅ、  ちゅ……れる、れぇぇ……はむ、ん……っ」  始めは目を白黒させていた優衣。  口づけを交わしていると次第に緊張していた体の力が抜けていく。 【優衣】 「ちゅ、ん……はふ……にぃさぁ、ぁむ……ン……。  ちゅ、ちう……ん、フ……ちう、ちゅ……んふ、にぃさぁん……」 【優衣】 「ちゅっ……ちゅ、ちゅっ……ふ、ン……すき……ちゅ、ぴ……  すき、ちゅっ……すき、んちゅぅ……ちう、ン……ふき、すき……」 【優衣】 「ちゅる、ちゅぴっ……ちゅ、フ……ふ、ぅ……ふぁ……はぁ……。  ……くすっ、やっと……やっとしてくれた」 【優衣】 「ずっとこうしたかった……。ずっと、ずっと……クスッ。  兄さん……兄さん……」  奇しくも、あのとき見た夢と同じ台詞。    夢物語だと思っていたものは正夢となった。  あの時にリアルと感じていた優衣の唇の柔らかさは、  こうして味わうとまるで違う。  動かせば動かすほどに柔らかく、細かな息遣いに優衣の体温、  風呂上りから香る仄かな匂いは夢にはない現実味を伝えてくれる。 【優衣】 「ん……ちう……れろ、ぇれ……る、ちゅ……ん、はぁ……はぅ……。  はぁ……、にいさん…………して?」  潤んだ目は訴えるように見えた。 【優衣】 「っ、ふぅぅっ、はぁ……っ、……お願いっ……。  お腹の奥が、うずうずしてぇ、ぞくぞくしてぇ……  この疼きを止めるのは、兄さんしかできないの……っ」 【優衣】 「どうしてかなんかわからないっ、でも……この、体の感覚はっ……  兄さんに抱かれたがってるってことだって……わかるから」 【優衣】 「お願い……っ。……して……?」 【兄】 「……わかった」  快く返事はしたものの、  どのような手順を踏めばいいのかわからない。  取りあえず手を引いて体を起こす。 【兄】 「じゃあ……そうだな、まずは服を……」 【優衣】 「……服を脱げばいい?  うん……。あっ……は、恥ずかしいから目は閉じてて」  素直に従う。  俺が目を閉じたか確認して、ゆっくりと脱ぎ始める。  目を瞑っていても今どこを脱いでいるのかは明確にわかる。  上を脱ぎ、下も脱いだところで、おずおずと声をかけられる。 【優衣】 「……どうぞ」  目を開く。  視界に飛び込んできた優衣の姿に息を呑んだ。  生まれたままの姿になった優衣は、  女の子座りで両手を太腿に挟み込み、目蓋を伏せていた。  一昨日に見た両の乳房は、無意識に寄せられた二の腕によって  大胆にも存在感を増している。  どこを触れても気持ちよさそうな女性の魅力で溢れていた。 【優衣】 「っ……んん、……」  視線を感じてか、背中を屈めて縮こまってしまう。 【優衣】 「あ、あんまり見ないで……恥ずかしいんだからあ……」 【兄】 「いや……それは無理な話だろ」 【優衣】 「ん……、ぅぅぅ……っ。  ……わかってる、けどぉ……ん、んんぅ……っ」 【兄】 「ちゃんと見たい」 【優衣】 「ぅ、えぇ……? ちゃんと見たい、って……。  ん、んん……見るなら、また……今度でも」  すでに次の機会を口にしてくれることに嬉しさを覚えた。 【兄】 「そうじゃない。……優衣の、処女の状態を見ておきたい」 【兄】 「誰のものでもないお前の体を見て、俺の証を刻みたい」 【優衣】 「っ、ぁ……」 【優衣】 「く、くさい台詞……。  別にそんなことをしなくても、ずっと兄さんのモノなのに……」 【兄】 「……お前も、大概くさいぞ」 【優衣】 「ふふっ、兄さんの台詞のニオイが移ったのかも。  くさい者同士、お似合いかもね」  緊張感のあった雰囲気も、お互いを認め合うことで瓦解していく。 【優衣】 「……誰の者でもない、綺麗な私が……見たいの?  見て……心に留めておきたい?  ……またあとで、自分の証を刻んだことを確かめるために?」 【兄】 「そうだ」  しかと頷いた。  俺の反応に、優衣は仕方ないわねとばかりに優しく微笑む。 【優衣】 「…………わかった」 【優衣】 「じゃあ……灯りをつけるのもなんだから」  ベッドの隣、窓枠のカーテンを開ける。 【優衣】 「月明かりで……ね。  ふふっ、初めてだもの。  ムードも重要……でしょ?」 【兄】 「粋なやつ」  優衣が身体を窓に向ける。  月夜に照らされた優衣の裸体は神秘的で宝石のようにも思えた。  気恥ずかしさは残るのかおずおずと開く脚を掴んで、  優衣の股へ身体を屈める。 【優衣】 「……どう……? よく見える……?」 【兄】 「あぁ、綺麗だ」 【優衣】 「っ、綺麗かどうかとかじゃなくて、  明瞭かどうかを訊いてるんだけど……」 【兄】 「? だから、綺麗に見えてるって……」 【優衣】 「え。あ、あぁ……綺麗に見えてるっていうこと。  なんだ……、んっ……んんぅ、紛らわしいのよ、ばかぁ……」 【兄】 「……でも、確かに綺麗だ」  内腿を押してさらに開かせる。 【兄】 「これが、誰の者にもなっていない、優衣の真っ新な身体……」 【兄】 「……こんなに綺麗なんだな」 【優衣】 「ん……んん、ぅ……もう、いい。綺麗綺麗うるさい……。  嬉しいけど……感想は、恥ずかしい……」  薄暗い中でも頬を染めているのが解る。  その様子が何とも可愛らしく、俺は秘処に手を伸ばす。  その手を優衣が慌てて押さえる。 【優衣】 「っ、もう、私は一旦終わりっ。  次は兄さんの番っ」 【兄】 「俺?」 【優衣】 「……なにとぼけた顔してるの。  兄さんも脱ぐの。……ほら、脱がせてあげるから」 【兄】 「え、なんで俺だけ脱がされるの?」  優衣は目を瞑らせたのに。 【優衣】 「兄さんは別にいいでしょ?  見られ慣れてるんだし……ほら、じっとして」 【兄】 「あ、はい……」  別に断る理由もなかった。  パジャマのボタンがゆっくりと外されていく。  幾度となくボタンを外させたお陰か、  比較的スムーズに上着は脱がされた。 【優衣】 「はい、次は下。  脚伸ばして、腰浮かせて?」  言われた通りにする。  下着ごと手に掛け、ずるりと下ろそうとする。  それをつっかえ棒がせっせと止めた。 【優衣】 「……引っ掛かった」 【兄】 「……まあ、そうですよね」 【優衣】 「ん、ぅ…………私のカラダを見て……興奮したの?」  じっと見つめられる。  聞かなくてもわかるだろうに……。 【優衣】 「……ふうん。……ふぅーーん……」  よくわからない納得の声を出して、再びパジャマを下ろす。  今度は頂を避けるようにして。 【優衣】 「今度は、私が兄さんの体を見る番ねー」  全裸になった俺を月夜に向かわせ、目を遣る。  じろじろと見るのではなく、眺めるように観察してくる。 【優衣】 「…………、……肌蹴た兄さんは見たことあったけど、  一糸まとわない姿は初めてね」 【優衣】 「こうして見ると……兄さんってちゃんと男の人の体をしてるんだ」  そっと腕に触れてくる。  表面を撫でるように滑らせていく。 【優衣】 「筋肉のせいで、体の線がでこぼこしてる……。  女の子の線は緩やかに湾曲してるから、全然違う……」 【優衣】 「ふうん……」  上に下にと瞳をくりくりと動かして鑑賞していた優衣は、  微笑みながら終わりを告げる。 【優衣】 「うん、もういいわ。堪能した」 【兄】 「そうか」 【優衣】 「…………えぇと、それじゃ……」 【優衣】 「……する?」 【兄】 「……ん」  優衣の背中を支えて、ゆっくりとベッドに横たえさせる。  眼下に広がる優衣の裸体。  セックスという儀式の特別さを改めて実感する。 【兄】 「まずは……ナカをほぐす、とか聞いたけど」 【優衣】 「あ……ほぐさなくても、たぶん、大丈夫じゃないかしら……。  うん、きっと兄さんのなら……うまくいくと思う。  ふふっ、そんな気がする」  根拠がまるでない。 【兄】 「……そういえば、ゴムは……」 【優衣】 「? ……あぁ、避妊具……。  くす、ふふっ、ふ……童貞の兄さんが持ってるわけがないわよね」 【優衣】 「ん、安心して」 【兄】 「まさか……」  俺の反応にムッとする。 【優衣】 「……『持ってる』とか言うわけじゃないから」 【優衣】 「……今日は、そのまましても大丈夫な日だから。  だから安心して? 生だからって、恐れる必要はないから」 【優衣】 「それに……やっぱり、初めては……特別なものにしたいから。  だから……このままで」 【兄】 「そうか……わかった」  優衣がそう言うなら、俺に異論はない。  処女喪失は最初で最後の儀式だ。  俺としても、優衣の初めてを奪う感覚を身に刻んでおきたい。  優衣の両膝を掴み、開かせる。  両脚に体を割って入らせ、逸物を優衣の割れ目に添える。  どくどくと胸が高鳴るのが分かる。  とうとう優衣と繋がる。  妹と、禁断の関係に踏み込んでしまう。  ぐっと体に力を込めると、腕を掴まれる。 【優衣】 「ねえ……あの。……ん、…………兄さんも……?」 【兄】 「……?」 【優衣】 「……私のこと…………好き?」  震える手から不安が伝わってくる。  やっと気付けた自分の想いは  一方的なんじゃないのかという恐怖からくる震え。  改めて考えることもない。  優衣という存在が、俺という人間を象る上で  どれだけ重要なものなのか、答えはすでに出ている。 【兄】 「あぁ、もちろん……好きだ」 【兄】 「心から、優衣を愛してる」  いま思えば、俺も優衣と同じだった。  自分の感情に気付くことができない未熟者。  自分のほうが先んじてると思いながらも、  実際は、優衣の想いの強さに感化されてやっと気付けたわけだ。  結局、どこまで行っても優衣には敵わないってことか。 【優衣】 「あ……」  優衣は、俺の端的な返事に破顔する。 【優衣】 「……うんっ! ……ありがと。嬉しい……」 【優衣】 「ん、いいわよ……? ……きて」  安心を伝えるように首に腕を回してくる。  そこに拒絶の色はなく、愛を求める気持ちだけが溢れてきていた。  俺たちを遮るものは一つもない。  道徳や倫理なんてのは万人に対してのものだ。  そんなもん捨て置きゃいい。 【兄】 「……入れるぞ?」  優衣はしかと頷く。  付け根を操作して先端の感覚を頼りに入り口を探す。  わずかに引っ掛かるような窪み。  侵入者を拒むような小ささにも関わらず、  迎え入れるように先端にキスをしてくる。  ここしかない。  身体に力を入れて、ぐっと中へ押し込む。 【優衣】 「ん……はあ……、っ……ん……くる、……はぁぅっ、きた、ぁ……っ」  キツく閉じられた肉壁は強い抵抗を感じるが、  押し込めば確かに入っていく。  それも一瞬。  すぐに別の抵抗に見舞われる。  優衣の初めての証……。  その抵抗が堪らなく嬉しく感じた。 【兄】 「……っ」  愛液の手助けを借りて、一気にペニスをねじ込んだ。  何かが切れる感覚。  瞬間、ずぷぷ……っ、と陰茎が根元近くまで優衣の膣内に入った。  逸物を四方から覆う膣壁の感覚。  下を見れば、優衣の中にペニスのほとんどを埋めた結合部が見える。 【兄】 「入っ、たぞ……っ」  感動と刺激に逸物がびくびくと震える。  優衣と繋がっている光景を見るだけで出してしまうそうだ。 【優衣】 「っ、ぅ、ん、ぬぐ……っ! ふ、っくはぁ……はっ……はっ……、  ふ、ふふっ、ふ……ほら、やっぱりっ、痛くなかったっ。  ぅっ、ぐぅ……っ、くはぁっ……はぁ」  気丈に振舞う優衣の瞳には光るものが見えた。  親指でそっと目じりを擦ってやる。 【兄】 「……嘘つけ、バカ」 【兄】 「だから痛むって言ったのに……」 【優衣】 「た、たはは……っ、兄さんには隠し事ができないわね……。  ぅ、ン……でも、本当に大丈夫……ちょっとピリッときただけ……。  はぁ……は……落ち着けば、きっとへーき……よ」 【優衣】 「ふう……ん、はあ……だから……動いて……?」  心配だからといって、優衣の気遣いを無下にするのは  優衣に対して失礼だ。  押し問答を繰り返すのは優衣のためにはならない。 【兄】 「……キツくなったら言うんだぞ?」 【優衣】 「ん……はぁ……はふ……、……うん、わかった。  ……ふふっ、ありがと、兄さん」 【優衣】 「やっぱり、兄さんでよかった……。  うん……兄さんがいい……。やっぱり、兄さんが一番だ……」  目を細めて、温かな笑顔を見せた。  語彙は少ないが、込められた思いは奥深い。  自然と胸が熱くなる。 【優衣】 「ん、っ……ふ……ぅ……、くはぁ……っ、ふ……んんンっ、フ……」  腰を軽く引くと、優衣は吐息多分の声を漏らした。  体内に覚える異物感と破瓜の疼痛。  眉の寄り加減を見るに、激痛というほどでもないようだ。  ずるると抜いていけば膣内が追い求めるように吸い付いてくる。  ゆっくり動いているのに、これだけで声が出そうだ。  優衣が落ち着いた呼吸になるのを待って、再び腰を押し進める。 【優衣】 「はふ……ふぅ、……ふ、ぁっ、ん……っ、むっ……んンっ……!」  抜く時と反して、優衣はくぐもった声を出した。  口を真一文字に閉じて、喉で堪えるように断続的な息をつく。  膣内は先ほどまでとは逆に、  侵入を拒むかのように膣壁が肉棒を押し返してくる。  入り口から中のほうまで、ギチギチに陰茎を締め付けてくる。 【優衣】 「んフ、っ……んん、はぁぁ……はっ……はっ……は……、  ……わかる……、ん、は……兄さんのが、私の中に入ってるの……、  よーくわかる……」 【優衣】 「は……はふ、ふ……ふふへ、へ……兄さんと……繋がってるー……。  一つになってるって……わかる……、ん……はぁふ……、  すっごく……幸せ……ふふ」 【兄】 「……俺もだよ」  優しく頭を撫でる。 【優衣】 「んっ、んフ……んん、ぅ……はぁ」  優衣は俺の手に甘えるように首を傾げて、目を細めた。 【優衣】 「やっぱり……兄さんじゃなきゃ、やだ……。  大好き……兄さん……、だいすき……はあ……はぁ……はぁふ、あ」  首に掛けた手が引いてくる。 【優衣】 「キス……キスしながら動いて?  ふふっ、そうすればきっと、すぐに苦しくなくなるはずだから……  私に魔法をかけて? 王子様……」 【兄】 「……流石に、ははは……柄じゃないな」 【優衣】 「くすくす、ちょっと兄さんにはハードルが高かったかしら……?  ん……ちゅ、ちゅぴ、ン……ちゅ、ぅ……はぁふ……、  でも……柄じゃないとしても、私にとって兄さんは……  たった一人の王子様……くす、私の個人的な意見じゃ、不満?」 【兄】 「そんなことはない。……力不足だと思っているだけだ」 【優衣】 「ふふ……ちゅ、ちう……ちゅ、ん……ふ、ぁ……フ……、  別に、王子様に任命したからといって、気負うことなんてないわ」 【優衣】 「ありのままでいいの。  ……そのままの兄さんが、一番素敵だから……着飾らないで? ね?」 【兄】 「……仰せのままに」 【優衣】 「ん、もう……そういうのがいらないって言ってるのに……ちゅ、  ちう……ん、でも……ふふ、お姫様扱いも悪くはないかも……ね」 【優衣】 「……ちゃんと、優しくしてくれる? 王子様?」 【兄】 「もちろん」 【優衣】 「ん。……じゃあ」  腰に手を回される。 【優衣】 「奥まで……突いて?」 【兄】 「……」  優しくとの前置きをしておいて、飴をぶら下げてくる。  試されてるのか……。  優衣に促されて抽送を始める。 【優衣】 「は、ふ……ん……んっ、……ン、っ……」  キスにより膣内は充分に愛液が分泌されていた。  キツくも、ぬるりと滑る。  決して自分勝手には動かないように、ゆっくりと奥を突く。 【優衣】 「ん、っ…………フ、ぅっ……ん、はぁ……ぁっ……ぁ……、  ぅン、んっ……っ……っ、は……はっ……はぅ……はふ……ふ」  腰の動きに合わせるように息をつく優衣。  びくりと体を震わせれば、同時にナカも収縮する。 【優衣】 「っ、はぁぁ……あ、やっぱり、違う、ぅっ……はっ……、  兄さんの、っ……おっきくてぇ……ちゃんと、お腹の奥のっ、ふぅ、  うずうずしてるところ……ぐりっ、ぐりぃってえ……ぅ、はあ……」 【優衣】 「っ、はぁあ……、は……ぁ……指じゃ届かないの……、  ン、ふあ……兄さんのっ、んっ、兄さんじゃないとっ、あっ♪  ぅっ♪ ぅっ♪ ぅ、ぅぅっ……んっ……!」  チンポが求めるがままに奥へ奥へと腰を突いていく。  優衣とセックスしてる事実に暴発寸前の逸物に激しい刺激は  与えられない。  狭く緊張した膣内の優衣も、まだ抽送に慣れていないだろう。  約束通り、ゆっくりとしたペースでぺちぺちと腰を打ち付ける。 【優衣】 「あ、ふぁっ……あ……これ、っ……奥っ、突かれてるっ……?  んっ、フ……はあっ……はぁ……にぃさあ……ンぅ、っ……  奥ぅ、突いてる……ぅ? ふぅ……は……ぁ……」 【兄】 「奥……これっ、これかっ?」 【優衣】 「ぁぅっ、ぅあっ。ぅっ、ぅっ、ぅぅっ……!  んっ、そぅっ、そこっ、それっ、ぇえっ……ンはぅ、は……はぁ」  逸物を根元のほうまで挿入すると先端に硬いものが触れる。 【優衣】 「それっ、すると……ふは、ぁ……は……たいぶ、ラク……。  じぃーんってぇ……なんだか、腰がふわふわする感覚がして……っ、  苦しさが和らいでく、ぅっ……麻痺してくから……ぁっ、んはっ……」 【優衣】 「んっ、ぅンっ……んっ、はぁ…………はふっ、ふっ……ンふ……、  あ……っ、ぅ……ぅ……ぅっ……んっ、ン……はっ、はあ……」  苦しそうに体を強張らせて、  息を喉を詰まらせることはなくなってきた。  代わりに優衣の口からワントーン高い声が漏れ聞こえてくる。 【優衣】 「ん、もう、っ……大丈夫だから……好きなように動いて、っ?  ん、ぅ……はあ……、優しくしてーって言ったから、  ずっと我慢してるんでしょー……?」 【優衣】 「ん、フぁ……ふ……苦しくないからぁ……ね?  フ……きて? ……兄さぁん……」  甘ったるい声で懇願されては、俺ももう止まれない。  初めて素股をした時のように太腿を抱きかかえて、腰を打ち付ける。 【優衣】 「ぁっ……また脚抱き締め、てっ、ぇっ、ぁっ、あっ、うっ!  フんっ! んっ! ん゛っ! っ、んッ、ンっ! ンふぁっ♪」  優衣に言われた通り、動かしたいように腰を動かしていく。  リズミカルに優衣の窮屈な膣穴を突く。  優衣の反応は明らかにさっきまでと違う。 【優衣】 「ぁっ! あっ! あぅっ! ぅあっ! にっ、さっ、ン、はあっ、  はっ……ぅっ、ちょっ、と、待っ、あッ! あ~っ!! あ~っ♪」 【兄】 「優衣っ、声……!」  口で指摘しながらも腰は緩めない。  むしろ、堪えさせまいとしてより深くに陰茎を挿入していく。 【優衣】 「っ、ふあっ、あっ……! っ、き、きいちゃ、だめっ……!」  両の掌が俺の耳を包む。 【優衣】 「こんなっ、エッチな声……ぇっ……、はしたないっ、こえっ……  聞かないで、ぇっ……!」  苦悶に歪む優衣の顔。  情欲に塗れた表情にそそられて、俺は優衣の両手を押さえつける。 【優衣】 「っ、んゃっ、っ! やだ、っ……やだぁっ、!  聞かないでっ、ぅ、ぅぅっ……!  こんっな、こえっ……やだぁ、っあ……っ!」 【優衣】 「ぅっ、んっ……んンっ、む……むンっ!  んっ……ん゛っ、んっ……フ、ふっ……は、ひっ……ひっ、ふ……」  よがった声は聞かすまいと、口を閉じてしまった。  それでも、鼻から息を漏らすのに苦しくなると、  歯を食いしばりながら唇を開く。  嬌声だけはと固持する姿はとても優衣らしく、  嬉しさがこみ上げてくる。 【優衣】 「フっ、んっ……! むっ、ん、ぅっ……はっ、ぁっ♪  ぅっく、ぅ……ぅっ、ぅ、ぅっ……ん、んンっ……んっ、ン……!」  ストロークを大きくして腰を突くたびにプルプルと揺れる乳房。  ピンと上を向いた乳首がいじらしく、俺は無心で顔を寄せた。 【優衣】 「ん、んっ……んわっ! あっ、あっ!  にぃっ、さっ、ンはっ、ぅ……乳首たべちゃ、ぅぅっ! ぐぅぅ!  っ、くはあっ、はっ、ぅ……ぅぅっ……!」  みな誰しもが味わったことのある乳首の食感。  でも、知らない味。  無我夢中で舌を這わす。 【優衣】 「ぅ、むンっ……んっ、ンひっ! ふぅっ、ぅっ、はぅっ……ぁっ♪  舌までぇっ、ンあっ……あぅ、っ……っ、やだ……っ、やぁだあ、  あ……ぅぅ、ふ……ふぅぅ……っ!」 【優衣】 「っ、んンっ……! ふっ、くぅっ……っ、ぅ……ぅあ……ぁっ、  ぅ、ひっ……ひうっ、ぅっ、ぅぅ……ぁっ、乳首が、兄さんのっ、  おくひの中で転がっへ、ぅっ……! ゃっ、弾いちゃっ……ぁッ♪  あぅっ、ぅっ……!」  優衣に乳首を舐められるときを思い出しながら、舌を動かしていく。  堪えようとしてるのに声が漏れてしまったときは、  何度も同じ舐め方を繰り返す。 【優衣】 「むっ、ンぅ……っ! んぇっ、ねえっ、ぇぅっ、ねぇっ、にぃっさ、  ぅっ、ふはっ! っ……おねがぃぃ、っ……こえ、でるからあ……!  ん、ゃあっ♪ っ、おちんぽも、きもちっ、ぃ……っ♪」 【兄】 「……こっちも」  空いている片方の乳房に手を伸ばす。 【優衣】 「ぃっ、ぅ……んっ、ふわぁあン……ッ♪ だめっ、だめだめっ♪  ぇっ、ぅあア……♪ そっちの乳首まぁでえ……ぇえっ♪  ぅくっ、ぅっ……! くり、くりぃ……ぃっ、ひぅっ、ぅ……!」 【優衣】 「っ、ぅっ……! ぅっ、ぅっ、ぅ……あッ! はっ、はぁっ……!  ぁっ……ぁっ、ぁッ! あぅ、ふっ、ふあンっ……んン、ぅっ♪」  口を閉じていやいやと首を振る優衣。  愛しい優衣の可愛らしい声が聞きたくて、  構わず腰を未熟な膣に押し付ける。  誰の色にも染まっていない膣奥をコツコツと叩く。 【優衣】 「ンっ、っ、んっ……ぅ、あっ……あっ、あッ、ああッ! あッ!!  奥っ、おくぅっ! こんっ、こんってぇ、ノック、ふぅっ、ふっ、  あっ♪ あっ、あっ、あっ……ぁっ、ぁっぁぁっ、ぁぁっぁ~~♪」  その刺激に反応して優衣の眉が活発に右往左往する。  指先で乳首をコリコリとしていた片手で、乳輪ごと摘まみ上げる。  口内の乳首も吸引して顔を引いた。 【優衣】 「っ、ぅっ、ンむぐっ、ぅ……! ン、むっ、んんンっ……!  ンふぁっ、はっ、そんなっ、ぅぅっ……!  乳首っ、ちゅうちゅうひへっ、ぇぇえっ♪ へぁっ、はう、ぅっ♪」 【優衣】 「ぅ、ぁぁぁ♪ あっ、はっ、ふあ……  おちんちっ、ひふぁは、っ、一緒にしたぁらあ……!  頭あ、まっしろっに、ひっ、しろく、ぅぅ……! ぅっ、ぅ……!」  完全に発情した優衣の声が鼓膜に響く。  声の震えが脳に響いてぞくぞくとした快感に変換されていく。 【兄】 「っ、優衣っ……」 【優衣】 「ふあっ、あっ、ぁ……は……? あっ、にいさ――んむっ。  んっ、フ……ちゅ、む……ちゅぴ、ンむふぅあ……はあっ♪  にぃ、ふぁ……ぅム、む……ちゅ、んゥ……ちゅ、はぷ……んっ♪」  両の乳首を指先でくにくにと弄びながら、優衣と舌を交わらせる。  優衣の悦ぶ声が出るようにと体重を乗せて最奥を突きまくった。 【優衣】 「んっ、んンっ! っ、ちゅるっ……っぷ、あっ! あっ、ぁぁっ♪  だめ、ぇ……っ! っ、ンむ、ちゅ、れぇう、フぁ……っ、  ちゅーしながら、子宮ピストンしちゃだめ、ぇえっ……っ♪」 【優衣】 「っぅ、ぁあっ♪ あッ、はっ……はっ、ふぅっ、くぅぅっ……っ!  もう、もうっ、兄さんのことしかっ、考えられなくな、っりゅ、む、  んンっ、ちゅ……む、ちゅ、へるぅ……っ、……ンっ……っフ!」  ……どうしてこうもいじらしいことばかり言うんだ。  初めてだから優しくしなきゃ駄目だとわかってるのに、  執拗に優衣のことを求めてしまう。  愛しくて堪らなくなって、キツく抱き締めながら  窮屈でトロトロの優衣のナカを手加減なしに突いてしまう。  よがってふやふやな声を出す優衣を、  もっと俺色に染めたくなってしまう。 【優衣】 「ん、ちゅ、ふあっ……! はっ、あっ、あぁっ!  っ、にいさっ、んッ……にいさっ、くふぁ……!  にいっさあんっ……! ンっ、っ……ぁっ、あッ……あぅっ!」  俺を求めてくれる優衣の姿は扇情的に映った。  声を押さえようと口元を隠すことも、もうない。  もうこれ以上、優衣を蕩けさせる必要はなかった。 【優衣】 「ぅンっ、っ……あっ……。  …………にいさん……?」  体を起こして優衣の腰を掴み、抽送に集中する。 【優衣】 「……んっ、っ、ンっ! ふあっ、あっ、あっ……ぁっ、あッ!  っ、くっ、ぅっ、っ、ッ、っ…………ぅ、ぅぅっ……っあっ!!」 【優衣】 「はぁっ! あっぁっ、ぁッ、っ、駄目っ、だめっだめっ……!  っく、ひっ! ひあっ、ぁ……! ぁっ、ぅっ、ぅっ、ンっ、っ♪」  愛液に塗れた秘部は一突きするだけで卑猥な音を立てる。  陰茎で密閉された膣内から追いやられるように  分泌液が優衣の鼠蹊部を濡らしていた。 【優衣】 「はっ、ぁっ、あッ! あっ、ふぁ、はっ、ぁっ♪  っ、激ひっ、ゥっ、ぅ、ぅぅ……っ、ン!  っふあ、っ……ナカ、れ、ぅっ……奥っ、おくっおくっ、くぅっ!」 【優衣】 「ぅっ、ぅっ……! っ、っ、んっ、ン、はぁっ!  はっ、ふっ! ぅっ、ぅっあっあっあっ♪ それっ♪ だめっ♪  ぇっえ、あっ♪ はっ、あっ、あっあっぁああっあ、あっ♪」  膣口は狭く逸物をキツく締め上げてくるのに対し、  膣内は肉壁が密集していて一つ一つの襞が淫猥にペニスに絡んでくる。  優衣の体でぎゅぅっと圧縮されて、膣壁で逸物を扱かれている感覚。  優衣の膣が俺のチンポを圧搾して、  精液を搾り取ろうとしてくる動きに腰の動きがさらに早まる。 【優衣】 「っ、あっ♪ あっ♪ うっ、く……! ぅっ……っ……っ♪  ふ、あっ……あっ……? ぅっ、も、もうっ、イクっ? イクっ?  ふっ、ぅっ、はっ……あっ、ぅっ、ぅっぅっあ、あっ♪」 【兄】 「あぁ……っ、もう限界っ!」 【優衣】 「あふっ、ぅ、ンっ……はっ、……あ……♪  ふっ、ぅっ……ぅンっ、はあ……はぅっ! ふっ、うれしっ、  ぃー……。ぃっ、ひっ! はっ、ぁっ、ふっ、ぅぅっ……!」  ふやけた表情で口角を上げる。 【優衣】 「っ、ンっ、んっ……! あっ、ぁっ……っ、にいさっ、んがっ、  ふふっへ、へ……私のっからだでっ、ぅっふあ、ぁっ……、  きもちっよくぅ、ぅっ♪ ぅっ♪ っ、なっへ、っ、うれしっ♪」 【兄】 「くっ、……出すぞっ!」 【優衣】 「んっ、ンっは、あっ、は……ぅンっ! うんっ! ンっ!  わたしでっ、気持ちよくなってぇっ? にーさ、んっ、ンっ、♪  兄さんっ、にいさんっ、にーっさ、っ、ンっ、んっふっ、んっ♪」  射精の予兆に任せて乱暴に抽送する。  ベッドの軋むのも厭わず、肉と肉がぶつかり合う音が響かす。  身体が求めるままに、奥へ奥へと逸物を挿入していく。  膣内がきゅうきゅうと顫動して精液を要求している。  俺は迷いなく腰を押し込んだ。 【優衣】 「んっぁ、ぁっぁあっあっ♪ ぅっ、ひっ、ぃっ、ぅっ、ぅっぅあ♪  あっ、あっあ、あぅっ、ぅっ……ぅぅっぅ~……んっンっんっぅ♪」  びゅるるるっ!! びゅーっ、びゅくっ! どぴゅーっ!  腰同士を密着させたまま射精を行う。  生のチンポで遠慮なく膣内の最奥に向けて精液を注ぎ込んでいく。 【優衣】 「んンっ! っ、んっ……っふ、ぅっ! ぅっ、っ……ん、ンっ……!  ん、フはぁ……はあ……は――ぅぅンっ! んっ、んンっ……!」  射精の余波を遅れ気味にピストンさせる。  息をついていた優衣はその衝撃に目を白黒させた。 【優衣】 「んっ、ふぅ……っ。……っ、はぁ……っ、……はあ……ふぅは……  はひう……ふ……あ……でたあ……? っ、あ…………あ……、  なか……はぁ……ぁ……ぽかぽか、する……ぅ……、あ……」  残滓まで余すことなく子宮口にかけていく。  ヒクヒクと動く膣壁はまるで精液を飲み込もうとしているみたいだ。  これが、子作り……。  心身ともに充足感のある、神秘的で他にない体験だった。 【優衣】 「はぁ……はあ……はぁ……ふ……あ……、ぁ……はぁ……」  おぼろげな様子で息をつく優衣。 【兄】 「……優衣?」 【優衣】 「は……ふ、……ぅ……? ぁ、ぁ……ち、ちょっとまって……。  いま、ふわふわしてて……なにもわからない……ふう……はぁ……」 【優衣】 「はぁ……は……ぁ……、にい……さん……」  両手を伸ばしてくる。  それだけで何を求めてきているのか自ずとわかった。 【兄】 「優衣」  背中に腕を回す。 【優衣】 「ふぅ……ぁ……ぁぁ……っ♪  ん、んンぅっ……はぁ……ふふっ、にぃさあン……んはぁ……はぁ、  ……ふふっ、やっぱり……兄さんだ……兄さんしか駄目……」 【優衣】 「んン、ふ……ぁ、こんなに……私のことをわかってくれる……。  ふふっ、求めてることを、簡単にくみ取ってくれる……」 【優衣】 「抱き締めてほしいときに……抱き締めてくれる……  たった一人の……おうじさま……。……はぁ……最愛の、ひと……」 【優衣】 「……は……ふ……ぁ……、はぁ……。  ……ごめんなさい、気付くのが遅れて」  突然の謝罪。 【優衣】 「……いま思えば、私は……  ずっと前から兄さんのことが好きだったんだと思う……」 【優衣】 「だけど、それに『イシキ』が気付くことができなかった……」 【優衣】 「好きという感情はあったのに……。  その感情に、『好き』と名付けることができなかった……」 【優衣】 「ふふ、ふ……結局、体が兄さんを求め始めて……  そこでやっと、自分の感情に気付くことができたの……」 【優衣】 「これが、人を想う、『好き』という感情なんだって……  名付けることができた……」 【優衣】 「本当に……つくづく、私は未熟者だと気付かされたわ……」 【優衣】 「兄さんを小馬鹿にしながらも、  『好意』という初歩的な感情を説明できずにいたんだもの……」 【優衣】 「自分が情けない……」 【兄】 「……俺も同じだよ」 【優衣】 「……兄さんも?」 【兄】 「優衣に好意を真っ正面からぶつけられるまで、  自分の気持ちに気付くことができなかった」 【兄】 「それだけじゃない。  お前が、自分の感情に苦しんでいることに気付いてやれなかった」 【兄】 「一人でしょい込んで、崩れそうになっていたのに……」 【優衣】 「…………」 【兄】 「駄目だな……ずっと兄をやってきてるのに、  妹の気持ちがわからないなんて」 【優衣】 「……ううん、いいのよ。  兄妹だからって、すべてがわかるわけじゃない」 【優衣】 「私だって、兄さんの気持ちを分かっているようで、  本当のところ、すべてをわかっているかは分からない」 【優衣】 「分からないことはたくさんある。  ……でも、分かることも、分かり合えることもたくさんある」 【優衣】 「一緒に住んできたから……っていう言い方もあるけど、  私は……血を分けたって言い方が好きかな」 【優衣】 「同じ血が流れている……くす、そう思うだけで、  兄さんと私は充分特別でしょう?」 【優衣】 「離れ離れになったって、どこにいたって、その関係は変わらない。  それで充分幸せでしょう?」 【優衣】 「だから、分からないことの一つや二つあったってくよくよしないの。  ……別に、分かってくれなくたって責めたりしないわ」 【優衣】 「わかってくれることが誰よりも多いってだけで、  私にとって兄さんは特別。代えがたい存在」 【優衣】 「兄さんにとって……私は……特別な、ひと?  失いたくない存在だって……そう、思ってくれてる?」 【兄】 「……もちろんだ。野暮なことを訊くな」 【優衣】 「あ……ふふっ、うん、しってた。  くす、知ってたけど、聞きたかった」 【優衣】 「だって、なかなか思いを口にしてくれない兄さんだもの。  聞けるときに聞いておかなきゃ。  せっかく、良い雰囲気なんだから……ね」  行為の後の、ちょっとした気疲れが残る穏やかな空気。  いつもなら口にできないようなくさい台詞も素直に出せれて、  また、茶化されずに聞き入れられるような雰囲気。  気持ちいい状態だ。 【優衣】 「……兄さん……ありがと。ずっと傍にいてくれて。  私の願いを……聞き入れてくれて」 【優衣】 「あと、ごめんなさい。  ……本当は、一刻も早く兄さんから卒業しなきゃいけないのに……  兄さんの優しさに甘えて、ずっと依存しちゃってた」 【優衣】 「……ううん、きっと……  もう、兄さんから卒業なんてできないと思う。  これからもずっと、迷惑を掛けちゃうと思う……」 【優衣】 「兄さん依存になっちゃう……最低な妹」 【優衣】 「……そんな私だけど……妹の私だけど……。  ずっと、傍にいてもいい……?」  ……いい、構わない。  迷わずにそう答えようと思っていた。 【優衣】 「あ……ううん。……駄目、こんな聞き方じゃ。  優しい兄さんじゃ、断れない……意地悪な聞き方」 【優衣】 「……それに、できれば……私は、兄さんから卒業したほうがいい。  卒業する努力をしなきゃ……」 【優衣】 「たとえ世間がどう見ようとも……って口だけで語っても、  結局は、私たち人間は世間や社会に依存しなければ  生きていけない存在……」 【優衣】 「……兄さんから離れることは、妹の私に課せられた急務だもの」 【優衣】 「兄さんも……前まではそれを望んでいたわけだし、ね」 【兄】 「…………」 【優衣】 「……あ……、ちょっと……。  ……どうして、そんな顔をするのよ……」 【兄】 「いや……なんでもない」  こういうときこそ、  優衣らしい機転の利いた策を提示してくれるんじゃないのか。  無理だと分かっていても、優衣に期待してしまう。  でも、優衣は自分の決めたことを簡単には曲げない。  心の中で踏ん切りがついているんだろう。 【優衣】 「……私だって、こんなことは言いたくない」 【優衣】 「でも、これは……兄さんのため。  ……私たちのために、必要なことだから……ね? そうでしょう?」 【兄】 「わかってる……」  喉から声を搾り出す。 【兄】 「……仕方ないことだ」 【優衣】 「…………」 【優衣】 「……ずるい」 【兄】 「え……?」 【優衣】 「…………兄さんは、ずるい」 【優衣】 「折角、心の踏ん切りをつけたのに……。  兄さんに抱いてもらうことで、幸せに……  兄さんから卒業しようと思ったのに……」 【優衣】 「そんな顔をされたら…………揺らいじゃう。  兄さんに……甘えたくなる」  背中に回された手が肩を強く掴む。  確かな意思を持って、俺に伝えてくる。 【優衣】 「…………本当に、いいの?」 【優衣】 「私は……兄さんを卒業しなくても……、  兄さんに……依存し続けても、いいの?」  優衣の言葉に対する答えは明示したほうがいいんだろう。  だが、俺には決められない。  俺の返答によって、優衣の運命までをも決めるなんてできない。  でも、俺は優衣の兄として、  優衣の決めたことには素直に従おうと思う。  年長者かどうこうなんて関係ない。  ここは、賢明な人の選択に託すべきだ。  俺は、優衣が迷ったときにそっと手を差し伸べられればそれでいい。  ずっと、俺たち兄妹はそうやって過ごしてきたんだ。  だから、俺は返事をせずに優しく頭を撫でた。 【優衣】 「…………」  声にならない息を吐いた。  俺の対応に、優衣は短絡的な結論は出さずに目を閉じた。  しばらくして、穏やかな笑みを湛えながら目蓋を開く。 【優衣】 「……結論を出すにはまだ早い、か」 【優衣】 「引き返すことはいつでもできる……」 【優衣】 「怖いのは、恐れているのは……  せっかく気付けた恋を、儚いものとして  一瞬にして散らしてしまうこと……」 【優衣】 「初恋を……世間が許さないっていう他人の勝手な了見で、  なかったことにされること」 【優衣】 「……精神をすり減らして世間にこびへつらうくらいなら、  もうちょっと兄さんとの恋人ごっこを楽しんだほうがいいわよね?」 【優衣】 「私たちの今後のことは、  私たちが世間での生き方をもう少し学んでからでも、  遅くはないわよね?」 【優衣】 「ね……? 兄さん?」  優衣独特の主観と、それに基づく妥協案。  優衣の言うことにあった、  『せっかく気付けた恋を、なかったことにされる』という言葉。  優衣から『卒業』を提示されたときに抱いた一抹の不安は、  きっとこの言葉に集約されている。  恋に気付けたのに、その瞬間に抹消されるなんて惨過ぎる。  叶わぬ恋だとしても、せめてもう少しだけ……。  たとえ禁断の沼地に足を取られ、再び元の地に戻れないとしても、  それでも構わない。  そのときはそのときだ。  優衣と二人なら、きっとうまくいく。  何故かわからないが、そう確信できた。 【兄】 「あぁ、それで構わない」 【兄】 「俺は優衣の意思を尊重する」 【兄】 「でも、いつまでもお前に選択の責任を押し付けるつもりはない」 【兄】 「悩んだときは、何でも気楽に相談してくれ」 【優衣】 「……ん。ありがと」  ……禁断の恋は茨の道。  誰の手助けもない、光も差さぬ迷路。  いつでも引き返せると油断して足を踏み入れれば、  茨の蔓が一瞬にして脚に絡みつく。  先延ばしにして関係を続けるという選択は、あまりにも無謀だ。  結論付けるのを遅くすればするほど、優衣を手放しがたくなる。  優衣の想いに付け込んで、自分でも馬鹿な選択をさせたと思う。  誰かが言った、恋は盲目という言葉が胸に沁みる。  俺も優衣も、恋にほだされた未熟な男女だ。  一体これから俺たちはどうなるんだろうか……。  もう、後戻りはできない気がする。  《本編END》

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