01
私は、お兄ちゃんのことが好きです。
二つ年上で、幼い頃からあまり喧嘩をしたことがない、優しいお兄ちゃん……もちろんまったく喧嘩をしなかったわけじゃないけど、すぐ仲直りできました。
それは、お兄ちゃんがちゃんと謝ってくれる人だったからです。
私が悪かったとしてもお兄ちゃんから謝ってくれたことで、自分で言うのも何だけど私はいい子になっていったと思います。
それもあって、もう何年も喧嘩はしてません。
お兄ちゃんは優しくて、そんなお兄ちゃんが好きでいつも甘えていたから。
友達どころか親にまで、仲が良すぎると呆れられるほどの私たち。
自慢のお兄ちゃんと一緒にいられて幸せでした。
この楽しい時間がずっと続くのだと思っていました……だから、あの夜。
お兄ちゃんが私に何をしてるのか、本当にわからなかったんです。
その夜は、特別なことなんて何もない、いつもと同じ夜でした。
宿題に手間取ったことで少し夜更かしになって、日付が変わった頃にベッドに入った私は、すぐに眠りに落ちました。
寝付きはいい方です。
眠りも深くて、翌朝まで目覚めることは滅多にありません……けどその夜、私はふと、こそばゆさと胸にかかる圧迫感に気付いて目を覚ましました。
……誰かいる?
ビックリして息を呑みましたが、それがお兄ちゃんであると気付いてホッとします。
……どうかしたの?
そう訊く私にお兄ちゃんは、何でもないよ、と言って部屋を出て行きました。
それが最初……いいえ。
もしかしたら、私が気付いてなかっただけで、すでに何度か私の部屋に忍び込んでいたのかもしれません。
数日後、お兄ちゃんは私が寝入ったのを見計らって、また部屋に来ました。
土曜の夜でした。
その日も、何事もなく家族で楽しい夜を過ごして、それぞれの部屋に戻りました。
私は、今夜もお兄ちゃんが来るかもしれない……漠然とそう思っていました。
だからでしょう。
寝付きのいい私ですが、しばらくうつらうつらとしていました……そしてやはり、お兄ちゃんは来ました。
静かにドアを開き、足音を忍ばせ、ベッドに近づいてきます。
名前を呼ばれましたが、答えてはいけないと直感しました。
お兄ちゃんは、私が寝ていることを確認しているのです……狸寝入りをするのは生まれて初めてのこと。
バレないか不安でなりません。
もしここで私が起きていることを知ったら、お兄ちゃんはまたすぐに、何事もなかったかのように部屋を出て行くのでしょうか?
……いいえ、今夜は出ていかない。
そう思いました。
そしてお兄ちゃんはベッドの端に腰かけ、かけていたタオルケットを剥ぎ取りました。
抵抗してはいけない……体を強ばらせてもいけない……静かに呼吸をしていなければいけない……。
今になって、俯せで寝ていれば良かったと気付きましたが、もう遅いです。
寝返りを打つのも不自然になってはいけないからと、私は身動きできなくなっていました。
そして……。
お兄ちゃんの手が胸に触れました。
いいえ、優しく触れるのではなく、掴みかかるようにしてきました。
胸を……オッパイを揉んでいるのです。
私は、眠る時にブラジャーをしません。
前開きのパジャマの下には何も着ていないのです。
もちろんお兄ちゃんは、そのことを知っています。
眠る時にブラをしない方がいい、というのはお兄ちゃんから聞いたことなのですから。
右の胸を、左の胸を、ひとしきり揉まれました。
私はふと、揉まれている間、息を止めていたことに気付きましたが、お兄ちゃんは不思議には思わなかったようです。
オッパイに夢中だったのでしょう。
不自然にならないようにと、うーんと唸りながら呼吸をし始め、寝返りを打とうと試みました。
でも、お兄ちゃんは強引に私を仰向けに戻させます。
そして、パジャマのボタンを外し始めたのです。
さすがに私も、お兄ちゃんが何をしたいのかわかりました。
オッパイを直接さわりたいのです。
部屋の電気をつけていないから、見たいわけではないのかもしれません……いえ。
私が起きないように、気を付けているのでしょう。
そしてあっと言う間に乳房をさらけ出されてしまいます。
お兄ちゃんは遠慮することなく、私の素肌に触れて……乳房を揉み始めました。
八十六のDカップある乳房も、お兄ちゃんの大きな手では一掴みといったところでした。
下からすくい上げるようにして揉まれ、乳首をこすられます。
その刺激が強かったせいでしょう。
私は声を抑えることができませんでした。
慌てて口をつぐみ、目をギュッと閉じます。
それでもお兄ちゃんは私が起きていることに気付かなかったようで、オッパイに夢中でした。
手のひら全体で揉み込み、ゆっくりと捏ね回します。
ひとしきり揉むと、乳首を摘まみました。
最初は優しく……だけど、すぐに強く。
……どうしてでしょうか。
乳首を弄られると、声が出てしまいます。
最初は片手で片方の乳房を揉んでいるだけでしたが、すぐに身を乗り出して両手で両方の乳房を揉み始めました。
お兄ちゃんはもう、忍ぶつもりはないようで、私に圧迫感を与えてきます。
私は、どうしたらいいのかわかりませんでした。
お兄ちゃんがオッパイをさわりたいのはわかるのですが、どうして私なのでしょう。
私は……妹です。
私はお兄ちゃんが好きで、
お兄ちゃんもわたしを好きでいてくれてるのは知っています。
でも、オッパイをさわるというのはとても恥ずかしい行為です……夫婦や、恋人同士ならセックスをするのでしょうが、
私たちは兄妹ですからセックスをしたいと思うはずはありません。
けど、お兄ちゃんは違うのでしょう……オッパイをさわる手に込められた力と、どんどん荒くなっていく息づかいで、それがわかります。
これ以上はいけない……そう思って目を開けようとしますが、開くことができません。
喘ぎ声は出ているのに、言葉を紡ぐことはできませんでした。
目も口もギュッと閉じたままです。
私はようやく、怖がっているのだとわかりました。
お兄ちゃんの手が怖い……お兄ちゃんの息づかいが怖い。
妹の乳房を揉んで興奮している兄の異常さが怖い……恐怖で体が強ばります。
お兄ちゃんは、そんな私に気付いていました……もしかしたら、最初から狸寝入りしていると知っていたのかもしれません。
そうでなければ、この時に声をかけてきたりはしないでしょう。
大人しくしているんだぞ、と……。
そしてお兄ちゃんは、私にキスをしました。
口づけです。
唇に温かくて柔らかいものが触れ、ヌルリとしたものが這いずってきました……舌です。
唇を固く閉じて、お兄ちゃんの舌が私に潜り込んで来ないように抵抗します。
だけど、無理でした。
両方の乳首を同時に摘ままれると、思わず吐息が漏れてしまいます……その時でした。
にゅるり、と舌が割って入ってきます。
唇を割り、歯をこじ開けて……。
私は舌を奥へと引っ込ませて、お兄ちゃんの舌から逃れました。
怖いですが、噛んで抵抗するわけにはいきません。
お兄ちゃんに怪我をさせるわけにはいかないので、口づけに飽きるのを待つだけ……そういえば、これがファーストキスだと気が付きました。
お兄ちゃんやお父さんの頬にキスをしたことはありますが、
もちろんこんな口づけをしたことはありません。
これまで交際どころか、男子と親密になったこともない私ですから、キスは初めて……もっとも、これをキスと呼んでいいのかわかりません。
鼻で息をするのを忘れ、あっぷあっぷと溺れているかのように口呼吸をします。
その度に舌が入り込んできて口内を舐められました。
汚いとは思いませんでしたが、ヌメヌメとした感触は。
あまり好きになれそうにはありません……大好きなお兄ちゃんの舌なのに?
いいえ、私の好きなお兄ちゃんは、こんな強引なキスをしてきたりはしません。
これは、私の知らない人です。
そう思うと、更に恐怖感が増しました。
強ばる私を可哀想に思ったのでしょうか。
唇を放し、顔を放していきます。
乳房への圧迫感も消えたので、やっと終わったのだと思いました。
これでお兄ちゃんが部屋を出て行ってくれれば、また明日の朝は何事もなかったようにできるはず……安堵の吐息が漏れ、肩の力が抜けました。
でも、まだ何も終わっていませんでした。
いえ、始まっていなかったのです。
お兄ちゃんの手が腰にかかり、パジャマのパンツを一気に引きずり下ろします……私は、何が起きているのかわからず、首を傾げるばかり。
まだ目を開けられません。
口も開きません。
そんな私の、無防備になった股が強引に開かれました。
太ももを取られ、左右に広げられます。
スースーしているのは、下着も脱がされたからでしょう。
つまり、私の女の子の部分がさらけ出されているのです。
股間が……女性器が、です。
自分でさえ、お風呂で洗う時も恥ずかしいその場所を、お兄ちゃんに見られてる。
部屋は暗いままだけど、お兄ちゃんの顔が股間に近寄るのがわかります。
慌てて閉じようとしても、顔が挟まって閉じきれません。
そしてまた、力尽くで広げられてしまいます。
もう限界でした。
息を呑んで、なんとか声を絞り出そうとします……けど、私が声を出すより先に、お兄ちゃんが言いました。
静かにしていなさい、と……大人しくしていなさい、と。
わかりません。
私にはわかりません。
お兄ちゃんは何がしたいのでしょう?
私のオッパイをさわって、激しいキスをして、股間に顔を寄せて、そして……ヌチョッとした感触が。
舌?
舐められた?
女性器を舐めたのでしょうか?
今度は汚いと思いました。
だってそこはオシッコをするところです。
お風呂でちゃんと洗いましたけど、舐めるような場所ではありません。
ましてや相手はお兄ちゃん……優しくて大らかな自慢の兄です。
そんな人が、どうして妹の女性器を舐めるのでしょう。
しかももうベタベタになっています。
ビチャビチャと水音が響きます。
これまで感じたことのない刺激が全身を駆け巡っているのがわかりました。
私は思わず、自ら口を塞いでおかしな声が溢れ出るのを防ぎます。
そのおかしな声を、他ならぬ私自身が聴きたくないからです。
しばらくの間、ビリッ、ビリッとした刺激が続きました。
その痺れが背筋を伝って頭の中までじんわりとさせています。
私はただ黙って、痺れが終わるのを待っていました。
ふと気付くと、痺れは止まっていました。
お兄ちゃんが股間を舐めるのをやめて、私を見つめています……そして重苦しく、いいよな?
と訊いてきたのです。