このまま……外に出て行きたい。 おしゃれな帽子をかぶって、可愛いバッグを持って……お買い物に行きたい。 女の子の友達と美味しいもの食べて、写メを撮ったり、お洋服を見たり…… きっと誰もボクに気づかない……この姿がボクだって気づけない…… 試着室の中、鏡に写る姿を見て確信した。 ボクの名前は斉藤ジュン。 性別は…………オトコ。 髪型は少し長めのショートカットで耳が隠れるくらい。 最近は前髪が伸びてきた。 そろそろ床屋さんにもいかなきゃいけない…… 近所の人からは、可愛らしいお嬢さんね、とか…… 眼が大きくて髪もサラサラで綺麗ねとか……よく言われる。 鏡に映る自分を見て、いつも恨めしく思う。 どう見ても女の子にしか見えないのに、何でボクはオトコなんだろう? 学校では女の子の友達も多い。 可愛い服を着てる子を見るとすごくドキドキする。 でも……ボクのあそこには、おちんちんがついてる。 ボクの名前、男なのか女なのかわからないって……よくいわれる。 うちの隣に住んでるお姉ちゃんからは「女装してみれば?」って言われた。 こ、こうみえてもボクだってオトコだ。 女装なんて……そんなこと……はじめはしたいなんて思わなかった。 でも後でだんだんその気持ちが…… 女装してみたい気持ちが強くなってきて…… 今、ボクは近所の洋服屋さんに来てる。 少しドキドキしながらお店の中に入ってみたら、お客さんはほとんどいなかった。 これなら安心だ…… ボクは思い切って女の子の服をいくつか手にとって試着室に入った。 狭い部屋の中には鏡が一枚と、自分で持ってきた服をかけるハンガーみたいなのが2つだけある。 ボクは急いで姿を隠すためにカーテンをひいた…… 手元にあるのは女の子の服。すごく柔らかくてかわいくて……早く着てみたい! 赤と黒のチェックのミニスカート。 これに黒いニーソックスとかはいたらカワイイよね……すごく憧れる。 恐る恐るスカートをはいてみた。サイズ……あってるかな? 次に、おしゃれで可愛いパーカーを着てみた。 これはファスナーがついてないから簡単でいいな。 そしてもう一度鏡の中の自分を見る…………ボク、すごく可愛い! 自分のことじゃないよ! きている服が男の子の服とは全然違うし、なんだか肌触りもいい。 次の服を試してみよう……! はじめのオドオドした気持ちが一転して、ドキドキに変わってきた。 今度はこのフリルのスカートをはいてみよう。 ……そう思った矢先だった。