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第三話

第三話 「放課後、実家に寄り道させてもアプローチ」 ―自宅・夕方― 作戦:No.06 「沢山食べる君が好き」 がちゃ 【やつこ】 「お邪魔しますっ」 【男】 「どーぞ」 ばたん 【やつこ】 「ふぅ。今日もお疲れ様だよー」 【男】 「はいはい。お疲れさん」 【やつこ】 「うーぁー、疲れたよー、疲れたよー。疲れてなにもす  る気が起きないよー。うわあ、幼馴染のベッドにダイ  ブー。ごろごろーごろごろー」 【男】 「うわあ……」 【やつこ】 「……こういうときはどうすればよいのであろうか、ワ  トソン君」 【男】 「お菓子あるぞ」 【やつこ】 「えっ!? お菓子っ!? 食べる食べるーっ」 【男】 「現金だな……」 【やつこ】 「おーっ、ポテチにチョコレーィト! 王道だねぇ、い  いチョイスだねぇ。しかし、飲み物がないと座談会は  成立しないよ?」 【男】 「ところがどっこい」 【やつこ】 「おーっ、用意周到だね。素晴らしいよ!  さっすがは私の幼馴染っ」 【男】 「褒めてるのか、それ」 【やつこ】 「褒めてる。褒めてるよー。ささっ、食べよ食べよ」 … …… … がさがさ 【やつこ】 「もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ」 【男】 「今日な、帰る途中に見た人がいるだろ。あの…あれだ  よ、あれ。腕時計付けてないのに付けてるような動作  してたおじいさん」 【やつこ】 「ぱりぱりもぐもぐもぐもぐぱりぱり」 【男】 「あの人って昔っからいるよな? お前は知らないかも  だけど、俺が小学校の頃……」 【やつこ】 「もぐもぐもぐもぐもぐもぐぱりもぐぱりぱり」 【男】 「会話!!!!」 【やつこ】 「ん? ……どうしたの? 会話?」 【男】 「会話しようよ!」 【やつこ】 「えー、だってそっちから言ったんじゃん。“喋るか食べ  るかどっちかにしろー”って。だから、私は食べるこ  とにしたんだよ」 【男】 「コミュニケーション放棄だと……」 【やつこ】 「だーいじょうぶっ。ちゃんと聴いてるよ。口がすいた  ら、こうやって会話できるしさ」 【男】 「いや。もういーよ。食べてろよもー」 【やつこ】 「それよりも、ワトソン君? 飲み物をくれるかな?」 【男】 「ほれ。ストップ言えよ」 【やつこ】 「あ、お酌してくれるの? へへっ、悪ぃな」 【男】 「なんで悪い顔してんだお前」 【やつこ】 「……(コポコポコポ…)……ストップっ」 【男】 「はい」 【やつこ】 「おお、泡がのぼってくる。くるな……くるなー……。  溢れるなー……おっ! おおぉぉおお……!」 【やつこ】 「……ふぅ。せーふ」 【男】 「見てないで泡を啜ってくれませんかね。こぼされたら  堪ったもんじゃないんですが」 【やつこ】 「大丈夫だよ。きっと零さないから。もし零したとして  も、汚れるのは私の制服だよ? 幼馴染のお部屋は汚  さないって」 【男】 「そういう問題じゃないんだよなあ」 【やつこ】 「ずずずず……。んーっ、泡のところおいしーっ。泡だ  け食べていたいよ……。あっ、ビールも、泡だけ見る  と美味しそうだよね」 【男】 「そうか?」 【やつこ】 「うん。飲んだあとにできる泡のお髭……。あぁ、羨ま  しいなあ(恍惚」 【やつこ】 「まぁ、お酒の匂いはあんまり好きじゃないから、きっ  と飲まないんだろうけどね」 【やつこ】 「私は渋い煎茶と、それに合ったお菓子があれば生きて  行けるよ。もぐもぐもぐ」 【男】 「確かに幸せそうな顔してるな」 【やつこ】 「ん? 幸せそうな顔してる? へへ。うんっ、幸せだ  からね」 【男】 「あと、お前って本当に美味しそうに食べるよな」 【やつこ】 「え? そ、そんなに、美味しそうに食べてるかな……  わたし。もう、あんまり見ないでよー」てれてれ 【男】 「見てるこっちも幸せになりそうだよ」 【やつこ】 「見てるこっちも幸せになりそう……? う、ぁ……、  そ、そうなんだ。へへ、幸せのお裾分け~。……なん  ちゃってっ!」 【男】 「(かわいい)」 【やつこ】 「もー、そんなこと言われたら、人前で食べにくくなる  よぉ。あ、でも……。君が幸せになってくれるなら、  食べてもいいかも?」 【男】 「お、おう」 【やつこ】 「へへ。ん、……もぐもぐ」 【やつこ】 「ふふっ。……おいし」 ?