第5話
―自室・深夜―
コンコン
妹365「兄さん、兄さん。私です私でーす。コンコンコン、入れて入れてー。コンコンコン」
妹366「……。ん? あれ、寝てる? 入るわよー……」
がちゃ
妹367「あらら、真っ暗。えーと電気電気……は、駄目ね。きっと起こす」
妹368「んんぅ……暗い……。確か、ここに机が……あれ? ここじゃない? どこ? んん……(ゴンッ)、っ、いったぁーっ……。くぅ、目測を誤った」
妹369「ぃったたた……。えーっと、ここが机なら、こっちが……ベッ、ド……あった。ふぅ……。お邪魔しまーす」
ごそごそ
妹370「んっ、んーぅっ。はぁー、おやすみーぃ」
兄 「こら」
妹371「うわっ。あれ、起きてたの? あー、もしかして、起こしちゃった?」
兄 「なーにしとるんだ」
妹372「あっ。しーっ、寝てたんだからそんなに大声出さない。せっかく来てくれた睡魔が、びっくりして逃げちゃうわよ?
……私のことは気にしないで。文句言うのもなし。ゆっくりと長く息を吐くことを意識しながら寝てみて? 寝ているときは、自然と息を吐くほうが、吸うよりも長くなってるものだから」
兄 「おー」
妹373「あ、兄さん。上じゃなくて、こっち向いて寝てちょうだい? まぁまぁ。理由はともかく、こっち。上向くのは禁止ね」
兄 「んんん」
妹374「うん。よろしい。……ふふっ、なーんにも見えない。本当にこっち向いてる?」
兄 「んー」
妹375「ま、いずれ目が慣れるか。それじゃ、おやすみなさい。兄さん」
兄 「あぁ」
妹376「……。すぅ……すぅ……」
妹377「(兄さんは、きっとすぐに眠ってしまう。さっきまで寝てたのなら、ほぼ寝ぼけ状態のはず。意識を長く保つことはできないわ)」
妹378「(兄さんの寝顔を拝むことなんて造作もない。きっとすぐに、そのだらしない顔を晒してくれるわ。……問題は、私の目がまだ闇に慣れていないことね……)」
妹379「(どんな顔をして寝言いうのかしら。というか、いつ言うかも解らない寝言を待つってのも馬鹿馬鹿しい話ね。
ま、でも……今までの経験上、私が寝そうになる頃合いを見計らったようなタイミングで寝言を言うのよね……)」
妹380「(……ま、目が慣れるころには喋り出すんじゃないかしら。しかし……んんぅ、眠い……)」
呼吸音を挟む。
…
……
…
妹381「(んー……。目は慣れてきた。兄さんの顔も見えるんだけど……。面白味のない顔してる。だらしなく口を開くわけでもないし、白目を剥いてるわけでもない、綺麗な寝顔。
はぁあ~、溜息が出そう。こんないつも通りの兄さんの顔も見ても、なんにも面白くないわ。……ま、妙な期待をしていた私もどうかしてるんだけど)」
妹382「(期待、ね……)」
妹383「(まだ、言わないのかしら。寝言……、そろそろ私の体が睡魔をご降臨せしめそうとしているのだけれど。あー、欠伸出そー)」
兄 「……すきだ……」
妹384「んっ、ぁ……きた。言った。また、寝言……」
兄 「妹……」
妹385「んん……なによ、もう……。どうせ、ただの寝言のくせに……。どんな夢見てるの、全く……。脳に電極ぶっ刺してやりたい」
兄 「(ひえっ!」
妹386「はぁ……。兄さんだけ特別に人体実験の許可が下りないかしら。何考えてるのか……調べるために」
妹387「……。こんなに近くにいるのに、解らないものね。人の考えって。家族一人の考えも解らないなんて、本当……痴れ者だわ」
妹388「(これは、私への言葉でもあるし、兄さんへの言葉でもある。結局私達はまだまだ未熟ってこと。
はぁ、いつになったらお母さんのようなエスパー紛いな能力が手に入るのかしら)」
妹389「……兄さんに抱きついてみるテスト」
妹390「(これで兄さんの気持ちが解るはずないけど……、少なくとも……前回の添い寝から続いているもやもやの原因が解る、はず)」
妹391「(って、原因を確かめるって名目で抱きついちゃったけど……、実際はちょっと違う。このもやもやのせいで、抱きつきたい衝動に駆られる。だから、抱きつく。
ついでにもやもやの原因が解れば万々歳ねーって思ってるだけ)」
妹392「(はぁ……、私らしくない。こんなの理知的じゃない。衝動的な行動、これじゃただの動物と同じね……)」
妹393「ん……。ふぅー。抱き心地の悪い抱き枕ね……。骨張ってて、ごつごつして、貧相で。……これが普通なのかしら。はぁ……兄さんのこと馬鹿にできないわ。
ドーテーを馬鹿にする処女って……お笑いぐさね」
妹394「ん、私も……寝よー……」
妹395「すぅ……すぅ……」
◆5.5
妹396「すぅ……、っ……。ったくもう、寝れないじゃないの……。こんなに硬いの、太腿に押し付けちゃって……」
妹397「っ、はぁ……。兄さんがドーテーで、女の私にドキドキするのと同じ……。私だって、男の人の体に、興味が……ん、ないと言ったら、嘘になる」
妹398「……ちょっとだけ、太腿を擦り付けて……うわ、跳ねる。びくびくしてるの、これ……鼓動? いや、どっちかというと、痙攣に近いかしら」
妹399「ふーぅん。未知の物体……やっぱり、興味があるわ」
妹400「ふぅ……(溜息)、パジャマの中、お邪魔します……」
妹401「んー……。っ! こ、これね……。はぁ~……、ん、んぅ……」おずおず
妹402「張りがあって……つるつるしてる? あー怖い。はははっ、指先で触れるだけって、私はチキンか」
妹403「相手は、兄さん……相手は兄さん……。うん。もっと、奥……まで……」
妹404「……。ぅひっ。あ、毛か。はぁ、動物でもいたのかと思った……。生殖器だもんね、毛があって当然よね」
妹405「えーっと……、ここが……根元? でも、硬いのはもっと奥まで続いてる……うわ、なにここ。ぶにぶにしてて軟らかい。んん~?
……あ。あれか、タマか。えぇと、精巣? あれ、精嚢はなんだったっけ。うぅ、無駄に言葉だけ覚えてるとかただの変態みたいね……」
妹406「んー、確か、根元の下に、タマがあるんだから……、ここら辺が根元……。あそっか、握ればいいのね。……、なんか、緊張するわー」
妹407「ん、っと……。うわ、あっつい……。本当に硬いのね。骨でも入ってるみたい……。血液だけでこんな硬さを保つなんて、海綿体って恐ろしいわ。人体の神秘ね」
妹408「ここは……、先っぽと違うのね。皮膚っぽさがある。ぐにぐに動くし、皮下脂肪でもあるのかしら。まさかね……?」
妹409「ん……ずっと痙攣しっぱなしなんだけど、大丈夫なの、これ。んんー……」
妹410「……、ん……ん……。ふぅん、途中まではただの棒に似た形ね。中腹が一番太いかしら。そして、この……ぼこっとしたところから、肌触りの違う部分になってる」
妹412「この盛り上がりはなに? ここから、突然皮膚っぽさがなくなるのよね。んっ、……敏感なの? ここに触れると、ペニスが跳ねる……」
妹413「……ふふっ、どこまで耐えられるのかしら。ちょっとだけ、強く握ってみるテスト……。ぎゅー、ぎゅー……。んー、形が変わるのは先端だけね、棒の部分は全然。
……やっぱり骨か何かじゃないのこれ」
妹414「ぐにぐにしてる……。グミみたい。あはっ、びくびくしっぱなし。痛いのかなー? 気持ちいいのかなー?」
妹415「意外と楽しい。ずっと触っていたいかも。……あー、いや。ずっとはいいや。気持ち悪いし」
妹416「ん? なに、兄さんのペニス、収縮して――んっ、びくびく、震えっ、てっ、ふぁっ、あぁっ」
兄、達する。
妹417「っ、ふぁ、なにっ、なにっ? 手に、うわっ、えっ、ええっ、わ、うわ」
妹418「はぁー……治まった? んっ、まだ痙攣してる……。これは、確か……」
妹419「うわ、粘っこい。どろっとして……、ふぅん。やっぱり、これが……射精。ペニスから精液を排出すること。……精液、かぁ……。どれどれ。
ん、っととと、兄さんのパジャマに付きそう。ゆっくり……そぉー……。よし」
妹420「んん~……? 暗くてよく見えない。んー……、ぷるぷるしてる? 匂いは……すんすん……。んー……塩素みたいな匂い?
なーんだ、精液がイカ臭いというのは都市伝説なのね。……んー……、ぺろ」
妹421「んむんむ……。んー……。白子っぽいと言えば白子っぽい……? 珍味ね、万人受けするものじゃないわ。
私も、血の繋がった兄さんのじゃなければ、口に入れるのを躊躇うわね」
妹422「あー……どうしよ、これ。ゼリー状だし、ささっとティッシュで拭いちゃえば……――っ!? うわっ、ととっ、垂れるっ! うぅっ、垂れるっ!
あれ、なんで? いきなり水っぽくなった。何よ、私が見てないと振る舞いを変えるの? 量子力学かっつーの!」
妹423「あぁもう、ちょっと垂れちゃった。ごめんね、兄さん。あとでシーツは洗っておいてあげるから、許してね?」
妹424「ふぅ、ベッドの近くにティッシュが置いてあってよかった。普通、テーブルに置くものじゃないのかしら。……、男の子事情って奴? まぁいっか」ごしごし
妹425「んんっ……(もぞもぞ)、ふぅ……。前回もびっくりしたけど、今回も今回ね。
ま、今回は……その……、前に私を……、寝ながらだけど、襲ったことの貸しを返して貰ったってことで。それで自己解決ー。
ふぅ……、こーやって心の整理をしないとやってられないわー」
妹426「……。全部、兄さんのせいだから」
妹427「だから、こうして……兄さんで清算させて……?」
妹428「私の、雑念の捌け口。そして、煩悩の根源たる兄さん?」
妹429「ふふっ。……罪深い人……」
妹430「……いつまで、我慢し続けられるかしらね、私は」
妹431「ふぅ……。変わらないでいてね……。……兄さん……」