実験開始
「実験は実時間にして約24時間、明日の24時までとする。その間、あなたには一般的とされている性的接触、および愛情表現などの対象となってもらう」
「あなたから積極的に何かしようとする必要はない。自然に受け入れてくれれば……、それでいい、よ」
「まずは……身体的接触の前に、触覚以外での反応を試す」
「あなたの視線の動き、脳波、脈拍、血圧、呼吸などの信号は、覚醒前から実験終了まで常に観測、記録している」
「そして、私の脳に先ほどから浮かんでいる、ある仮説を実証したい」
「こうして近付いて……。椅子に座ると……、……ええ。私の下着、丸見え、だね?」
「……視線の集中、ペニスのわずかな膨張を確認」
「やはりあなたは、私みたいな外見に、肉体的刺激を伴わずとも、性的興奮を覚える嗜好があるの?」
「……了解した。蔑むような意図はないし、むしろ好都合。初期段階から、大きな反応が期待できる」
「視覚以外にも考えてはいたけれど……実証にはこれだけで十分だったわ」
「では、これより身体的接触に移る。まずは……手に触れる」
「……さわ……さわ。……手の甲から、指先へ」
「……手を握るわ。握り返してくれても、そのままでも、構わない。……ぎゅう…………」
「これだけ体格に、手の大きさに差があれば、与し易いと見られる可能性も当然想定していたけれど、抵抗する気はないようね。……助かる」
「たったこれだけの接触で、随分と大きい反応が観測できているわ」
「あなたにとっては、他人と手を触れあうという行為も、珍しいことなのね?」
「私も、こうしてちゃんと男性と触れ合うのは……生前、幼い頃にパパと交わしたスキンシップ以来かしら」
「……男性以外? そうね、それに比べれば頻繁に。……あの子達は積極的すぎる」
「さて。このまま全身の反応を確かめる前に、これを済ませておきたい」
「キス。接吻。口づけ。……比較的容易に行うことのできる、粘膜同士の接触」
「文化圏によって差異はあるものの、愛の表現、誓いの儀式として用いられるわね」
「では、早速だけれど。……ゆっくり顔を近付けるわ」
「ん。……唇をもっと突き出して。……そう」
「……ん……んんぅ……。……ちゅ……ちゅぱ……んえ……」
「……っは……何? 驚いた? ……いきなり舌を口腔内に挿入することは、あまり一般的ではなかったかしら」
「あの子はいつもこうなのだけど……」
「もう驚かないで。この段階では舌を絡める以上のことはしないわ」
「はい、もう一度。……ん……」
「……ちゅ……じゅぷ……ちゅぱ……、……んん……んむ……ちゅ……ちゅう……」
「……ん……ちゅ……、じゅ……ん、んん……むむ……ちぅ……んぁ……」
「……むむ……れろ……ん……むちゅ……ん……、むぅ……じゅ……ちゅ、ぷはっ」
「……ふぅ……。目が熱を帯びているように見受けられる。呼吸も……単に息苦しかったというだけではないようね」
「快感は感じられたかしら? ……わかった。記録しておく」
「インターバルをはさんで、もう一度、実行するわ」
「今度は、舌を動かしてもいい? ……駄目と言われても、やめる気はないけれど」
「軟口蓋や口腔底、歯茎にも、舌で触れてみたい」
「うん……いく、よ……。ん……ふ……ちゅ……じゅう……ちゅぱっ……」
「んぅ……るる……もご……んん。えれ……れろ。れろれおえお……」
「ぁ……ん……んえぇ……。えぉ……むむ……じゅ……もご……えぉえぉ……」
「ぅぐ……ん、むぅ。んんん……じゅ……じゅぷ……ちゅぷ……ぷぅ……」
「ん……ぅー……糸、引いて……ぺろ。」
「……扇情的な表現として知識にはある。……どう? 興奮は高まった?」
「……わかった。記録」
「……ふぅ……。……数分だけ休憩とするから。次の実験のために、息を整えておいて」