射精実験
「さて、実験の段階としてはそろそろ本番、といえる行程に差し掛かっている」
「きっと、先ほどから待ち望んでいたのだろうけれど……次は、ここ。男性器。ペニス」
「性差によって最も違いが現れる部分ね。私も、男性の肉体についている実物を、しっかりと観察する機会は、初めてと言ってもいい」
「先ほどから、主に耳や乳首への刺激で、膨張を続けているあなたのペニス。これから観察、接触、刺激を行っていくわ」
「膨張時の全長は現在、11.7cm……日本人男性としては平均値の範囲内」
「直径は2.8cm……。……問題ない……」
「包皮は仮性包茎。現在、亀頭の半分ほど露出している。……少し、手で……捲れば……、……完全に露出を確認」
「色、形、ともに正常。……少々、左に歪曲している傾向が見られるが、それ以外は一般的な形状の範囲といえる」
「……(すん、すん)……仮性包茎のためか、明確なアンモニア臭を感じる」
「……ぺろ……れろ……。反応よし。先ほどのような刺激臭による風味はあるものの……味自体は無味に近い」
「それでは、指でペニスに触れていく。……亀頭、尿道口……かりくび……」
「包皮小帯……俗に裏筋と呼ばれるわね……快感を得るにはここが一番効果的という男性は多い」
「さらに……包皮ごと握り込むようにして……“かわおな”状態、で……。亀頭への刺激が鈍くなるから、長い時間、快感のみを得るにはうってつけ……」
「……しこ……しこ……。……ああ。休憩を挿んだとはいえ、もう、興奮は十分高まってしまっているのだったわ」
「それならば、いっそ過程をとばして……」
「……ぺろ。れろれろれろ……」
「舌と口での刺激に移行する。私にあるのは知識だけだから、実際の技術はそれほど快感を得るのに向かないでしょう」
「んぁ……む……あぁむ……あぁ……、ほら、きっと、快感より痛みが……」
「じゅるる……、ふぇ? イク? ちょっとまって、もう……んんんっ! むぅううううううううっ!」
「ぷはぁっ……、けほっ、えほっ……。はぁ……はぁ……」
「ぅえ……精液、の、あ、味は……もむもむ……んぐっ、ごくっ……」
「独特の苦みと臭み……知識と感覚を、紐づけておかないと」
「ふぅ……少し想定外だったわ……。なぜかしら。私の技術は、決して高くないと自己評価を下しているのだけれど……」
「あなたの性的嗜好と関係があるのかもしれないわね。正直に教えて」
「……やっぱり。精神的な部分が大きかったのね」
「私があなたのペニスを口に含んだという事実だけで、あの状態からのオーガズムには十分だったと」
「得心したわ。ありがとう……と言っていいのかしら。心境としてはなんとも言えない」
「はぁ……しかし、これでは十分な記録ができたとは言えないわ。もう少し、時間をかけて行為を記録しないと」
「……射精によってペニスの縮小がみられるけれど……刺激によって再度勃起させることは可能のはず。……もう一度、がんばって」
「そー……と……いまなら、こうして手でいじっても……。むしろ、こちらのほうが適しているはず」
「私の唾液が残っているから、快感も増しているのではないかしら。根元から握って……ぐに……ぐに……」
「あぁ、容易に大きさを取り戻してきたわね。もう少し、だよ……。……しこ……しこ……。しこ……しこ……」
「……うん。申し分ない……。それではもう一度、……いただきます」
「ぺろ……れろ……ぇ……れぉ……ぇろぇろえろ……ちゅ……ちゅぱ……じゅう……ちゅる……ちゅう……」
「ふぁ……あ……あむ……もご……もむ……んぅ、んっ、ん……」
「もご……もむ……ちゅ……んっ、ん、んあっ、あむ、あむ……」
「……んっ、んぅ……何? どうしたの?」
「ぷはぁ……なにか問題が起きたわけではないの? れろ……えろ……」
「…………、では、こうさせることが、目的……。……あぁ、上目遣いで、顔を見られながら、だと……興奮が高まるのね」
「注文に答えるのも癪だけれど……様々な条件を試す意味で、了承するわ。あむ……」
「んっ、んっ……んぅ。……じゅう……もむもむ……。……どう? 興奮する?」
「じゅるるるる……じゅる……じゅ、ちゅ……ぷはぁ……れろれろ……あむ……もむ……もご……」
「もむ……もむ……ほぁ……。ねぇ……、きもちいい?」
「じゅぷ……じゅぷ……じゅる、じゅるる……おぐ、もむ……ん、ん、っ、イく? また、イくのね?」
「はむっ、じゅ、ぷ、じゅ、じゅっ、ぐっ、いいわよ、好きなだけ、出して……あむ、あむ、もぐ……もむ……ずる、ずず……」
「お……んっ、んっ、んっ、んんっ! おっ、む、んんんんんんぅぅぅ~~~~~!!」
「ん……む……、ん……じゅ……んんぅ…………」
「んぇ……あ……うぇ…………ぅ、ぷ……はぁ……」
「さすがに……さっきより量と濃度は少ないけれど……、記録には十分ね」
「二度も飲み込むよりはと、吐き出してみたけれど……これでは手が使えないわ……後始末をするから、少し待っていて」
「これで、あなたのペニスを消毒しながら拭くわ。ちょっと冷たいけれど……我慢してね」
「…………ん…………ふぅ…………ん…………すぅ…………はぁ………………」
「綺麗になったわ。……あと、全身も、濡れタオルで拭いてあげる。気になるところがあったら言って」
「…………ん…………んぅー、ふぅ……ぅ、……はぁ…………ん……っ……しょ…………すぅ…………はぁ…………ん、っと…………はぁ…………」
「……あ……。……ん、ふ……ぅ、……ん…………ん……っ……すぅ…………はぁ…………すぅ……はぁ…………、……っと……」
「……ふー。……おしまい。……さて、服は着せてあげられないけれど、せめて毛布をかけてあげる」
「ええ。死んでしまったからと言っても、睡眠欲は存在するわ。疲労感もあるでしょう」
「この世界では、体の調子はまず、精神の状態に依存するの。心に激しいショックを受けたら、体も動かなくなる。比喩でもなんでもなく」
「今から睡眠休憩とするから、精神をできる限り、リセットして」
「……あなたにとっては、最後の夜になるわ。……ゆっくり、おやすみなさい」