03
ここ数日、痴漢は現れていない。
それは喜ぶべきことなのに、私は心のどこかに物足りなさを感じていた。
痴漢行為に対する怒りや嫌悪感がなくなったわけではない。
やはり不愉快ではある。
けれどもそれ以上に、あの強烈な快楽が私の体を捕らえ続けているようだった。
通学の電車に乗るだけで胸が、そして股間がうずく。
キョロキョロと周囲を見回して、それらしき人を捜してしまう。
もちろん、顔を知らない相手だ。
捜したところで見つかるわけがない。
だいいち、相手が学生なのかサラリーマンなのかすらわかっていないのだ。
知っているのは、手と体付き、そして熱さ。
大きくてゴツイ手が、私の乳房をまさぐる。
意外にも乱暴ではなく、優しささえ感じられる。
自分で乳房を握ってみるが、痴漢の手の大きさとは違いすぎる。
乳首を摘まんでも、感覚が違う。
パンツの上から股間を撫でても、パンツの中に指を潜り込ませてみても、私の細い指では頼りなく、男らしさなどあろうハズもない。
けれど……体の奥の火照りは思い出せる。
あの官能も。
その日……私は生まれて初めての自慰行為に耽ってしまった。
帰宅してからも制服を脱がず、ベッドに横たわることもなく。
自分の部屋で立ち、目を閉じて電車内であることを妄想する。
まずは制服の上から乳房を揉む。
自分で揉んでも、それはただの乳房であって大きさや柔らかさに何か感じることはない。
男の人がオッパイを好きなのはわかる。
痴漢も、楽しそうに揉んでいた。
乳首のあたりを擦ってみると少しだけゾクッとした。
こそばゆく、快感が生まれそうな感じがわかる。
私は急いで制服の中に手を突っ込んで、ブラジャーの上から乳房を握ってみた。
やはり自分のオッパイはただのオッパイなのだけど、目を閉じて、痴漢の動きを思い出しながら揉むと、背筋がゾワゾワとしてくる。
乳首を押してみると、じんわりとした快楽があふれ出す。
ブラを外さず、無理矢理手を潜り込ませる。
乳首が硬く尖っていた。
普段は柔らかいのに、どうしてこんなにすぼまっているのだろう……まさか、摘まみやすくするため?
体が勝手に反応しているのだろうか。
硬くなった乳首は、摘まむとキュンとした。
乳房全体を揉んでも快楽はなかったけど、乳首にはある。
摘まんで捏ねてみると、明らかな快感があった。
同時に吐息が熱くなったのにも気付く。
私は左手で口を塞いで、右手で乳首を転がし続けた。
まずは左の乳首……摘まんで引っ張ると、ジンジンとした甘い痺れが湧き上がる。
もちろん右の乳首も同じようにする。
心地良さに喘ぎが漏れるが、ここは電車の中……誰かに見つかるようなおかしな声を出すわけにはいかない。
現実でもキッチンにはお母さんがいるから、喘ぎ声を聞かれるわけにはいかない。
もっと乳首を弄りたくて、ブラを外す。
もちろん、制服は脱がないまま。
右の乳房を、左の乳首を、交互に色々と弄くり回すと、全身に快楽が滲んでくる。
これはいい兆候だ。
もっと快感を味わえる。
私の手は自然と股間に向かっていた。
スカートの上からはまどろっこしいので、最初からパンツに、その内側へと指を伸ばす。
陰毛がまるで自分のものではないような感触。
私はあまり陰毛が多い方ではないと思うのだけど、指先をくすぐるショリショリとした感じは楽しい。
ちょっと摘まんで引っ張ってみる。
痴漢はこんなことはしなかったけど、されてみたいと思えた。
快楽の欲求はどんどんとエスカレートした。
乳首をキュッと摘まみながら、女性器に手を伸ばす。
まず最初にふれる突起がクリトリスであることはもうわかっていた。
性に敏感な部分なのだ。
自分でさわってみてもビリッと強い刺激があるのがわかる。
それは快楽の痺れ。
乳首よりも小さな突起が、指先に当たる。
コロコロとした不思議な感触と、同時に湧き上がる女性器の官能。
痴漢が執拗に弄ろうとしていたのがよくわかる。
ここをさわると気持ちいいと知っているのだ。
例え痴漢相手でも、クリちゃんを触られると感じてしまう。
そして……その快楽に溺れてしまう。
乳首を、痛くないギリギリの強さで摘まむ。
中指と薬指でクリトリスを擦る。
乳首にそうするように、指先でクリちゃんを挟んでみる。
ビクンッと体が跳ねた。
脳天まで痺れさせる性の快楽。
ここは気持ちいい。
クリトリスは気持ちいい。
乳首もいいけど、クリちゃんは別格だった。
何度も擦り、摘まみ、押し込む。
息を潜め、声を殺し、頭の中で激しく喘ぐ。
そして……来た。
全身を駆け巡る激しい痺れ。
快楽に体が跳ね上がり、頭の中が真っ白になる。
絶頂……アクメ……オルガスムス。
私は、イった。
自分で女性器をいじくって、快楽でイってしまった。
脱力して立っていられなくなる。
ベッドに倒れ込んで、息を荒げる。
ジンジンとした甘い痺れが体中を駆け巡り、絶頂の喜びで心を溶かす。
私はもう、この快楽の虜になっていた。
パンツを脱ぎ、股を開いて、女性器に手を伸ばす。
クリちゃんから下へ、性器の谷間へ。
陰唇と呼ばれるそこは、ねっとりと濡れていた。
愛液だ。
セックスをするために女性器はとろける。
それは膣に男性器を挿入する助けとなる。
男性器……ペニス……オチンチン。
あの痴漢は私とセックスがしたいのだろうか。
それはそうだろう。
男性の性欲はペニスに集約されるという。
いくらオッパイを揉んでも、クリちゃんを弄っても、ペニスが気持ち良くなければ男性は本当に喜べない。
けれど……電車の中で、セックスができるのだろうか。
隣に他人がいる場所で?
いや。
電車から連れ出される。
そしてホテルへ連れて行かれる……きっとそうだ。
あの痴漢は、私とセックスするために破廉恥な行為を繰り返していたに違いない。
セックス……性行為……。
私が?
これまで彼氏どころか男友達さえいなかった私が、セックスできるのだろうか……このトロトロになった女性器に、見知らぬ男性のペニスが入ることはおかしくないだろうか。
私は、セックスよりも……こうして、クリトリスを弄られていたい。
オッパイを揉まれ、乳首を摘ままれて捏ねられて、抓られて引っ張られて、押し込まれて乳房全部を揉み込まれたい。
愛液で濡れたクリトリスもしっかりと摘まめば大丈夫。
濡れれば濡れるほど快感は強くなって、絶頂感も増していく。
その日、三回絶頂したところで軽く意識を失った……最高の快楽だった。