Track 7

4-1.眠れないから、少しお話

 ……ご主人。  まだ、起きていますか?  いえ……少し、眠れなくて。  よかったら、ちょっとだけお話しませんか。  ……はい♪ ありがとうございます。  …………。  明日は、お休みですよね。  ご主人、何かご予定はありますか?  ……何も? 本当ですか?  では、また一緒にお出かけしませんか。  ご主人と、ご主人の住む街を、もっともっと知りたいです。  ……ありがとうございます♪  楽しみが一つ、できました。  今日は、とってもいい夢が見られそうです。ふふっ♪  …………。  ……あの。  ご主人は、何か“夢”はありますか?  はい。寝ているときに見る夢ではなく、未来について想うときの夢です。  ……いえ。なんとなく。ただ、聞いてみたくなっただけです。  …………。  ……なるほど。  それは……とっても素敵ですね。ご主人らしい、良い夢です。本当に、ご立派です……♪  ……わたし、ですか?  私は……  少し前までは、平和な暮らしをすることが夢でした。今日のご飯を心配しなくてよくて、明日に怯えなくていい毎日が、憧れでした。  でも、今はもう……全て叶ってしまいました。  というより、想っていた以上に、幸せになってしまいましたから……  これ以上望むのは、何だか、おこがましい気もするんです。  ご主人と、ずぅっと一緒にいられれば、それでいいと、思っています。  ん……。  ……違う?  ……ふふっ。そう、ですね。  確かに。幸せの限界が、一人一人に決められているわけじゃありませんから……  ……もっともっと、幸せを願っても、問題はないのですね。  でも……そうは言っても、難しいですね。  ご主人のお傍にいること以上に幸せな夢が、他にあるとは考えられません。  ふふっ♪  ……ご主人の体、本当に、温かいです……。  本当に……ずっとこの中にいられればいいと、思います……。  ……はい。もう、不安はありません。  私が望む限り、ご主人のそばにいてもいいんだ、というのは……ちゃんと、分かっていますよ……♪  ご主人……。  ……あの。ふと、キスをしたくなってしまったのですが。  よろしいですか?  ……はい♪  ん……ちゅう……ちゅっ、ちゅう……ちゅう、れろ……ちゅう……ちゅっ、ちゅう……ちゅっ、ちゅっ、ちゅう……。  は、ぁ……。  ……うふふっ♪  大好きです。ご主人……。  心の底から、あなたのことを、愛しています……♪  ……でも。  そういえば、一つだけ……夢、というか、目標は、あるかもしれません。  自分で、自分を守れるようになりたいです。  私は今、とっても幸せですけど……でも、ご主人に甘えっぱなしだな、とも思うんです。  別に、独立してお店を開きたい、というわけではないんですけど……  ご主人のように立派になりたい、と思います。  独り立ちしても、問題ないような……そんなダークエルフになりたいです。  ……でも、それには、壁があることも分かってます。  私にはあまり、できることがないのです。  ……弓、ですか? いえ……確かに、エルフは弓が上手い種族ですが……私は、生まれのせいで、あまり弓を持った経験がないので、幼い頃から狩猟でならしているエルフと比べると、どうしても劣ります。  こう聞くのも、変ですけど……ご主人、私は、どうすればいいと思いますか?  ……頭がいい、ですか? 私が?  それは……さすがに、言い過ぎです。  …………。  確かに、お店にある魔導書の場所は、かなり覚えていますけど……完璧ではないですし、毎日働いているから、自然と覚えただけで……。  ……ご主人は全然覚えていないのですか。でも、ご主人は裏での業務が中心ですから、仕方ないかと……。  ……読み書きも? はい、ある程度はすぐに覚えられましたが……それは、ご主人の教え方がとてもよかっただけです。  …………。  ……そう、なのでしょうか。私は……勉強が向いてるのでしょうか?  とすると……  ま、魔法、ですか。魔法の勉強を、もっと本格的に……?  ……ご主人。この前のことは、とても反省していますから、忘れてもらえると嬉しいです……。  え? ……本気で仰っているのですか。  …………。  あ……そう、言われてみれば……。  確かに、精神操作の魔法が自分に跳ね返ってきたのは、上手く発動が成功していた、ということでもあります……。  初めてで成功したということは……私、才能がある、ということなのでしょうか……?  …………。  ご主人に、そう言ってもらえると……本当にそんな気がしてきました。  ありがとうございます、ご主人。では、魔法の勉強を、もう少し頑張ってみます。  使い物になるくらい、上達したいです。  …………。  ……そっか。  私にも……できそうなことが、あったんだ……♪  ふふっ♪ なんだか、とっても嬉しいです、ご主人……♪  私、頑張ります。たくさんたくさん、頑張りますね。  いつか……胸を張って、ご主人の隣に立てるように!