Track 2
■02
終わってなかったから機嫌が悪くなったのか?
なるほど、確かに邪魔をしてしまったことになるからな……そうか。
つまり本来、私が来るはずではなかったから、思う存分しようと。
確かにマスターベーションは、私にも見せたくはないものだろうな。
それが恥ずかしいものなのだろうとはわかる……しかし、何というか。
ニーニも、そういうコトをするのだな……え。
いや、さすがに聖人君子と思ってはいないが……いやいや。
別に汚いとか、けがらわしいなどとは思っていないぞ?
健康な男性なら普通にすることなのだと、保健体育の授業で聞いた。
まぁ……本来なら、私と性行為をすればいいだけの話であると理解はしている。
ま、待った待った。
先ほども言ったが、私たちはまだ学生の身。
おいそれと子供を作るわけにはいかない。
それはニーニもわかっているだろう?
うむ。
だからマスターベーションをすることになるワケだな……しかし、なんだ。
何故しなければならないんだ?
するものだ、とは聞いても。
何故なのかは聞いていないからな。
はぁ……気持ちいい?
マスタ……長いな。
日本語では自慰だったか?
あぁそうそう、オナニーな。
オナニー。
自慰よりは言いやすいか……それで。
オナニーをするのは気持ちいいから?
だが、気持ちいいことなら他にもあるだろう?
何なら、私が肩を揉んでやっても……そうか、そういう気持ち良さとはまた違うのだな。
ふーむ。
気持ちいいことを邪魔されたとなれば、不愉快にもなるだろう。
しかも恥ずかしいから、私には見られたくない……そうか。
では、オナニーをするのは今夜私が帰ってからか、明朝……。
なんだ?
は、はぁ!?
何故私がニーニのオナニーを手伝わなければならないっ。
そもそも見られるのが恥ずかしいのだろう?
だったら……いやだから、性行為はお互い社会人に……。
だから、オナニーをすればいいではないか。
それとも何か?
本当は見られたかったのか?
恥ずかしさを押してまで気持ち良くなりたいと?
ニーニにはそういう性癖があったのだな。
いや、いい。
また一つニーニのことに詳しくなれたのだから嬉しい。
幼い頃は夏と冬にしか会えず、昨年越して来てからようやく家も隣同士になれて、以来、日参させてもらっていたが。
まだまだ私に、ニーニの知らない部分があるのだとわかった。
未来の嫁であっても同一人物ではないのだから、こうして少しずつ分かち合っていけばよいのだと……ん?
あぁハイハイ。
見られたいのだったな……う、うーむ。
しかしニーニの恥ずかしい部分を見せられるのは、私としても恥ずかしいが……うむ。
性行為は駄目だ。
私はまだ赤ん坊を育てられる自信がない。
愛するニーニとの子供は全身全霊を持って育てたいからな。
性行為……セックスは私が母親になる自信が付いた時にお願いしたい。
それでは駄目だろうか?
ニーニは今すぐ子供が……。
私との愛の結晶が欲しいか?
……あぁ、もちろん私も欲しいとも。
だからこそ、セックスはしっかりと計画を立ててだな……避妊?
そうか、妊娠しないための方法もあるのだったな。
ちなみに、今その避妊するための方法は……ない?
なんだ、結局駄目ではないか。
だからこそのオナニーなのだろう?
それを、私が見てあげればいい……違うのか?
そうだろう?
たとえどんなに恥ずかしいことであっても、目を逸らさないと約束しよう。
恥ずかしいのはニーニであって、私自身ではないのだろう?
だから……え?
わ、私も恥ずかしいことを!?
むぅ……私にも恥ずかしさを要求するのか。
確かに、その方が平等だな。
喜びの時も悲しみの時も真心を尽くすのが夫婦なのだから、恥ずかしささえも分かち合おうということか……。
よし、わかった。
ニーニの言うことはもっともだ……ん?
何故ガッツポーズを取る。
はぁ、もっと早く言えば良かった?
何だ、我慢していたのか。
私がニーニの願いを無下にするわけがないだろう。
ましてやニーニの快楽のためとあれば、嫁としては協力せざるをえまい。
ふふっ、おかしなニーニ……愛しているのだから、何でも私に言ってくれ。
ニーニの願いなら、叶えたいからな。