第13話 メイドさんと春の海
第13話 メイドさんと春の海
海を見ている二人
メイド「……春の海か……あぁ、すまねぇな……自分で言い出したのにぼーっとしちまって」
主人公「ここが……」
メイド「そう、ここが私の生まれた海らしい……あの水平線にうっすら見える小さな島に人魚族の集落はあったらしいよ……まぁ私は覚えちゃいないんだがな」
主人公「今はもう……」
メイド「あぁ、今はもう誰も住んじゃいねぇらしい……たまに漁船が立ち寄るくらいだとよ……私の帰る場所はもうねぇんだ」
メイド「それでもよ……この場所に来たら心が折れちまう気がしてたんだ……死んでもいいからあの島に戻りたいって思えちまうような……そんな……あ」
手を握る主人公
メイド「……心配すんなご主人、踏ん切りを付けられるって思ったからこうして来たんだ……不思議だな……寂しい気持ちや悲しい気持ちなんてちっとも湧いてこねぇ……眺めているとただただ懐かしさだけを感じるよ」
メイド「へへ、むしろここまでバスで20分の方が辛かったよ……わ、悪ぃか!乗り物苦手なんだよ……昔から」
メイド「(一呼吸)……故郷(ふるさと)の未練はもうねぇ……それどころか外の世界でも生きて行く勇気を貰えた気がするよ」
メイド「もちろんご主人にもな……で、私はどうすりゃいいんかね……花嫁修業も十分積んだし……ど、どっかにいい男でもいりゃダンナにでもなって貰うんだがな……ふふ」
メイド「……ご主人(見つめ会う)……ん、なんだ?自信ないのか?……くす、胸を張りな……
私の惚れた男は世界一いい男だよ♪……ご主人、大好き……んちゅ」
メイド「……私はずっと待ってるよ……ふふ、あとは何も言わねぇよ……いい女ってのは男を立てるもんだからな」
メイド「よっしゃあ、せっかく海まで来たんだ、もう春だし少し遊んでいこうぜ」