Track 1

■01

あ~、やっと帰ってきた~。 お帰りなさ~い……ねぇねぇ、さっき一緒にいた人、誰? ……うん。 見てた。 ……駅前でね。 ちょうど見かけたの。 キレーな人だったわねぇ~? 彼女? と問うまっさか~。 お兄ちゃんに限ってそんな……違うわよね? 彼女なんて作ったりしないでしょ? ……ねぇ? ……ま、まさか。 え、えぇ? ちょっ……彼女なの? えぇえ? うっそ~! お兄ちゃんに彼女……お兄ちゃんに恋人ぉ……そんなぁ~。 だ、だって、お兄ちゃんの恋人は私がなるって言っておいたのにっ。 むぅ~、妹だから何? そんなの。 うぅ、そんなの関係ないって言ってくれたのにぃ……十年前でも百年前でも、言ったものは言ったでしょ! い、いいのっ。 私たちは生まれる前から恋人同士だったんだからっ。 うぅ~、酷いわ、お兄ちゃん。 一足先に進学した上に、私以外の子とお付き合いするだなんて……じゃ、じゃあ、これから週末のデートは? えぇ~っ、そんなぁ~……うぅう。 お母さ~ん、お兄ちゃんが嘘ついた~……だって、恋人は私だけだって言ってたもん。 大きくなったら結婚もするって……うぐっ。 兄妹で結婚できないのは、それは、ほら……。 日本以外に住めば大丈夫! ……じゃない? うぅ。 ヨーロッパの方なら同性婚できる国だってあるんだから、近親婚できる国だって……それはない。 あ、そうなのね。 あうぅ。 んも~、お母さんの馬鹿ぁ。 ただでさえ落ち込んでるのに、そんな現実突きつけないでよ~……っと! お兄ちゃん!? ちょっとお話があります。 すぐ私の部屋に来るようにっ。 いいから、お母さんは黙ってて。 これは私とお兄ちゃんの問題なの。 ……そうよね~? ……そうなの! 最近のお兄ちゃんは、ちょっと勝手が過ぎるわ。 私が納得できる話を、ちゃんとしてもらうんだからね。 ふぅん? それでお兄ちゃんは、ホイホイついて行っちゃったってワケ? ……はぁ。 怖いって何よ、怖いって。 そうねぇ、何だか迫力のある美人さんだったとは思うけど。 しかもお金持ちで、頭も良くてスポーツ万能? そんな出来過ぎな人、本当にいるのね……じゃあ、何でそんな人がお兄ちゃんに……って。 んふふ、それはまぁ、わかるけど♪ だってお兄ちゃん、格好いいもんね~。 スラッとしてて、背が高くて。 もちろん顔も良くて、声だって綺麗で……ううん? これで私の贔屓目じゃないってことが証明されたわ。 お兄ちゃんはもっと自分の容姿に自信を持つべきよ! ようやくお兄ちゃんが日の目を浴びる日が来た……って! それで他の女の子に目を付けられて、あまつさえ奪われたら意味ないじゃないの~! うわ~んっ。 何で交際オーケーしちゃうわけ? ……だから、逆らったら怖いような人、好きなわけじゃないでしょ? 好きでもない人と交際するなんて良くないわ。 おかしいの。 でしょう? わかってるじゃないの。 だったら、明日にでも断って……あう~。 確かに、フラれるならともかく、フったりしたらどんな報復されるかわかったものじゃないわよね。 はぁ~……う~ん、そう? まぁ、そうかもしれないわね。 そんな人なら、すぐに飽きてフってくれる……うぅう。 それも何かイヤ! 弄ばれてるだけじゃないの。 そんな人にお兄ちゃんの経歴を汚されたくないわ。 ……この私に愛されてるっていう、輝かしい経歴よ! ……そうでしょう? ありがたいわよね。 だったら、もっと喜んでっ。 んふ、ふふふ……ん~♪ お兄ちゃんに撫で撫でされるの好き~……ん、んん……ほら、もっと。 この世で一番お兄ちゃんを愛してる人に、感謝の撫で撫でを贈ってちょうだい? ん……んん、んっふ……ぁん、んん……お兄ちゃぁん♪ ……んん、んはぁ、あぁん、んん……お兄ちゃん、好きよ。 大好き……愛してるわ。 お兄ちゃん、あぁん、お兄ちゃん。 んはぁ、はぁ、はぁはぁ、あっふ、んぅん……あっ。 あぁん、もっと撫で撫でぇ。 んん、ほっぺもね? んん……そうそう。 お上手ぅ、うふふ。 んん、んぅん、ぅん、んっふぅ。 んん、ん。 んぅう、うぅう~……んっはぁ~。 あ~ぁ、私とのデートの時間が減っちゃうなんて。 お兄ちゃんはそれでいいの? 良くないわよねぇ……ねぇってば! むぅ~……本当に? すぐフラれる? それならいいけど……うぅ、何だかイヤだけど、他の人と一緒にいるお兄ちゃんは見たくないから、しょうがないわよね。 でも、早くね? そうっ。 お兄ちゃんが、実は顔がいいだけじゃなくて、優しくて気が利いて、優しくて撫で撫で上手で、優しくてあったかいところは、その人に知られないようにするの。 お兄ちゃんが素敵な男性であることは、私だけが知っていればいいのよ。 だから早く、フラれてきてね? ……んふ、ふふふ。 そしたら、私がヨシヨシって慰めてあげるから。 そうよ~? こうして……撫で撫でして~、スリスリして~、んふふ。 フラれた悲しみに沈むお兄ちゃんを、いい子いい子ってしてあげるから……ん? あ。 そ、それもそうね。 フラれたいんだから、フラれて沈んでちゃ駄目よね! フラれて喜ばなくっちゃ! ばんざーい、ばんざーいって。 ふふふ、一緒に喜んであげるっ……そしたらね? こう……。 ん~っちゅ♪ ……って、してあげる~。 ふふっ……んん、ん~っちゅぷ、ちゅっちゅっ、んっふ、んぅん。 んっ、んっ、うっちゅ~。 んはぁあ、はぁ、はぁはぁ。 あぁん。 そういえば、チューも久しぶりね。 ……ふぅ。 すっかり安心しきってたから。 だから、私とお兄ちゃんが恋人同士ってことにね? 隣にいるのが当たり前だったから。 こういう、素直な愛情表現を忘れてたわ。 これからは、いっぱいしなくっちゃ。 チューとか、手をつないだりとかねっ。 一時的に恋人のフリをするだけの人にはできないことを……。 ねぇ、いいでしょ? ……だって、すぐに私の所に戻ってきてくれるんだもんね~? んふふ……ありがとう、お兄ちゃん。 大好きよ。 愛してる……だからぁ、ちょっとだけ、ね。 お口にも……ッチュ♪