公園にて
//公園ですので、静かです。ブランコに乗ってるていだと、
//キィキィいうSEとかあるといいです
//左側2mくらいの距離で会話してます。
//↓【15】
【珠理奈】
「ブランコに乗るの、久しぶり」
【珠理奈】
「でも、こんな時間にブランコに大人二人って、
変な人に思われません?」
【珠理奈】
「えっ……さっきの私、涙目でした……?」
【珠理奈】
「ふふっ、いろいろと我慢してました」
【珠理奈】
「私、看護学生なんです。
それで実習が増えてきて……」
【珠理奈】
「……怖いんです。
失敗が許されないので」
【珠理奈】
「先輩も、失敗も、全部怖いです。
でも、逃げたくないんです」
【珠理奈】
「元々、臆病だったんですよね、私って。
だから、毎日怖がってばかり」
【珠理奈】
「いえ、いじめとかはないんです。
先輩が厳しいのは、患者さんのことがあるから」
【珠理奈】
「実際、みんないい人で優しいときもたくさんあって……」
【珠理奈】
「そんなの、わかってる。
わかってるんです」
【珠理奈】
「ただ、積もってしまって……」
【珠理奈】
「いえいえ、あの日も失敗したわけじゃないんです。
でもなんでなのかな……泣いちゃったの」
【珠理奈】
「……もしかして、あのタイミングでここで泣けって、
神様のお告げみたいなのがあったのかも」
【珠理奈】
「ほら、無言でミニタオル差し出して、
『使ってないから大丈夫』って渡してくれて」
【珠理奈】
「そのまま無言で立ち去る優しい人に、
励ましてもらえるぞ、って」
【珠理奈】
「そういうの、慣れてる人だったり?」
【珠理奈】
「うそ。
すごく自然だった」
【珠理奈】
「……どうしたらいいか迷ってた?
ほんと?」
【珠理奈】
「天然なんですね。
私もよく言われるんですけど」
【珠理奈】
「本人はまったく自覚なし。
これでも、気を張って生きてるつもり」
【珠理奈】
「それはそうじゃないですか。
見られるところで泣くのは、子どものすること」
【珠理奈】
「私はもう大人。
しっかりしないと……」
【珠理奈】
「……いけないんですけどね。あはは……」
【珠理奈】
「周りの友達も、みんな実習でテンパってるから、
愚痴をこぼすのは躊躇っちゃう」
【珠理奈】
「えっ? ……さっきもいいましたけど、
看護学生ですよ? 私」
【珠理奈】
「二十歳です。
って、歳を聞きだすの上手いですね」
【珠理奈】
「また言われた。
いつも、大人っぽいとか、落ち着いてるとか言われる」
【珠理奈】
「なんか素直に喜べないんですよね」
【珠理奈】
「ふけてるって意味じゃなく、
なんだろう……自分とのギャップかな」
【珠理奈】
「見た目がそうだから気持ちも――って、
一生懸命思ってはいるものの……」
【珠理奈】
「これもさっき言った通り。
臆病だから」
【珠理奈】
「初対面じゃないですよね、私。
今日が二度目」
【珠理奈】
「うーん……悪い人じゃないと思ったから、
ここまで来てみたんですけど」
【珠理奈】
「大声を出すようなことするんですか?」
【珠理奈】
「ですよね。
じゃあ別に大声を出す必要はないかな」
【珠理奈】
「でも不思議と、あれこれ話せる気がしたから。
今も、普通に言葉が出てくる」
【珠理奈】
「人見知りでは……ないと思うかな。
患者さんともよく話しますから」
【珠理奈】
「愚痴ならいつでも聞くよなんて言われたら、
しょっちゅう話したくなりますよ」
【珠理奈】
「あ……でもそれじゃあ私が成長しないか。
自分への不満が愚痴のほとんどなんだし」
【珠理奈】
「あの……いつでも話を聞いてくれるというなら、
いっこお願いしたいんです」
【珠理奈】
「お願いっていうか約束も、かな」
【珠理奈】
「いい報告を増やしていきたいんです。
だからこれからも話を聞いてもらえればなぁって」
【珠理奈】
「検査官みたいな?」
【珠理奈】
「あはは、厳しくでいいですよ。
望むところです」
【珠理奈】
「私は片親で妹もいて、だから私がしっかりしないと、
なんていうかダメなんですよね」
【珠理奈】
「妹のほうが明るくてしっかりしてるかも」
【珠理奈】
「あ……それはないか。
あの子、ドジだし」
【珠理奈】
「姉妹揃って――になっちゃいけないから。
私は……うん、頑張ります」
【珠理奈】
「ああ、もしなにか愚痴とかあったら、
逆に私に話してくださいね」
【珠理奈】
「そういうのにきちんと言葉を返せるようになれれば、
患者さんのケアも上手くなると思うので」
【珠理奈】
「もてそう、って、なんでです?」
【珠理奈】
「美人? 私が? うわぁ、ほめられた」
【珠理奈】
「ええ、もてますよ。
おじいちゃんおばあちゃんには大人気」
【珠理奈】
「おかげで演歌とか囲碁とか将棋とか、
けっこう憶えちゃって」
【珠理奈】
「なんかもう、大人の仲間入りしてる」
【珠理奈】
「あっ、ひどいなぁ。
老けてるなんて」
【珠理奈】
「笑いごとじゃないです。
これでもまだ二十歳二十歳」
【珠理奈】
「……かざらない人ですね。
気を遣わずに話してくれてるの、伝わります」
【珠理奈】
「やること憶えることは他にもあって、
そっちが優先度高いのに」
【珠理奈】
「……そうですね。
負けていられない」
【珠理奈】
「本当になれます? 私。
いい看護師に」
【珠理奈】
「どうだろって、そこでそれはずるい」
【珠理奈】
「なりますよ。
そのために、少しお手伝いしてください」
【珠理奈】
「そのかわり私も、あなたのお手伝いしますので」
【珠理奈】
「いっこ? はい、なんです?」
【珠理奈】
「定期的にここで、ですか。
夜の公園で?」
【珠理奈】
「なんかわくわくしますね。
くすっ、面白そうです」
【珠理奈】
「ああ、確かに昼間は私たちも来られないし、
来れたとしても子どもたちの遊び場だし」
【珠理奈】
「大人の時間、って感じですか」
【珠理奈】
「大人が夜の公園のブランコに座って語らう大人の時間。
世界観すごい謎ですね、あはは」
【珠理奈】
「……でも、そういうの好きですよ。
いろいろ忘れたり薄めたりできそう」
【珠理奈】
「いいんですか?
ここに来るって約束になっちゃいますよ?」
【珠理奈】
「LINE聞きだすのうまいですね。
やっぱ慣れてる気がする」
【珠理奈】
「ダメだったら、バッグから携帯出したりしません」
【珠理奈】
「ああ、でも私、あまり携帯見ないので、
それだけはわかってもらいたいかな」
【珠理奈】
「学校のこととか病院のこととかに集中してると、
携帯の存在すら忘れちゃう」
【珠理奈】
「……あはは、当たり。
集中っていうより、必死で見る余裕なんかないの」
【珠理奈】
「でも、お昼ご飯とか帰る前とかは見れますよ」
【珠理奈】
「ふふっ。
二人でシャカシャカしてるの、おかしい」
【珠理奈】
「来られそうなときは連絡しますね」
【珠理奈】
「えっ、なにか違います?」
【珠理奈】
「あ……そうですね。
話したいとき、報告したいときに連絡します」
【珠理奈】
「私だけじゃなく、あなたもですよ?
じゃないと不公平ですから」
【珠理奈】
「さて、と。
お腹が空いてきたので帰りますね」
//ブランコから降りる
//離れての立ち位置距離3mくらい。
//↓【9】
【珠理奈】
「大丈夫です。
駅までそんなに距離ないんですから」
【珠理奈】
「あぁ、えっと……」
【珠理奈】
「――話聞いてくれてありがとう」
【珠理奈】
「それでは、失礼しますっ――」
//SE走り去る足音