7回目の公園
//珠理奈が公園のベンチに座ってる。
//主人公が歩いてやってくる。
//↓【9】
【珠理奈】
「おかえりなさい。
先に来たので座ってました」
【珠理奈】
「いえ、今日はなんていうかブランコじゃなくて、
ベンチのほうがいいと思ったので」
【珠理奈】
「って、お疲れですよね。
隣、どうぞ」
//言おうと思っていて、さりげなく言ったつもりがそうじゃない感じです
//「となり……どうぞっ(えいやっ)的な
//主人公隣に座る。
//↓近めの【11】
【珠理奈】
「なんか、ちょっと違う場所に座ってるのに、
全然景色が違うみたい」
【珠理奈】
「ブランコのきしむ音もならないから、
やけに静かに感じるのもあるかな」
【珠理奈】
「今日はいろいろと話すことがあるんですけど、
時間は大丈夫です?」
【珠理奈】
「じゃあ……ふふっ、大人の時間第7回目にして初!
実は今日、褒められたんです」
【珠理奈】
「今実習してるところには、
一番怖い看護師さんがいるんです」
【珠理奈】
「派手に怒ったり、嫌味を言ったりしなくて、
こう……物静かな人で」
【珠理奈】
「どっちかっていうと無表情で、
口数も少ない人なんです」
【珠理奈】
「逆に怖いと思いません?」
【珠理奈】
「その人はいつも『ここがダメね』って、
ストレートに端的にズバッと言ってきて」
【珠理奈】
「最後に必ず、
『改善策を次まで考えておきなさい』って」
【珠理奈】
「そして自分なりに考えて、
次のときに『考えてきました』って言おうとすると」
【珠理奈】
「いつも、
『私に言わなくていいから、実践しなさい』ってだけ」
【珠理奈】
「私だけじゃなく、みんなも怖がってるんです」
【珠理奈】
「その看護師さんから今日、帰り際に呼び止められたんです」
【珠理奈】
「そして、『前回の反省、できていたわよ。
頑張りなさい。できるんだから』って」
【珠理奈】
「私、泣きそうになって、
急いでここへ来たんです」
【珠理奈】
「……まだ泣いたらだめだと思ったから」
【珠理奈】
「普通にここで報告したかったのかな。
あとお礼も」
【珠理奈】
「ここで何度も話を聞いてくれたおかげで、
少しずつ私が変われてること」
【珠理奈】
「……ありがとうね」
【珠理奈】
「ふふっ、面と向かって言うと恥ずかしい」
【珠理奈】
「隣だけどってツッコミ、来ると思いました」
【珠理奈】
「……いつもここで話していると、
嫌なことを忘れられるくらい楽しいんです」
【珠理奈】
「ほんと、最近は頑張れる自分がいて……」
【珠理奈】
「反面、私ばっかり助けられてるって考えちゃって、
なんか、もどかしさも出てきたんです」
【珠理奈】
「助けられてる? 私何もしてませんよ?」
【珠理奈】
「話しているだけで役に立っているんですか」
【珠理奈】
「ええ、楽しいですよ。
ここへ来るのが楽しみだし」
【珠理奈】
「ああ、でもレポートとかもあるから、
毎日来られないのが残念かな」
【珠理奈】
「本当は毎日話したりしたいなんて、
わがままを言ってみたいんですけど……」
【珠理奈】
「ふふっ、冗談でも『それでもいいよ』って言ってもらえると、
気持ちが楽になります」
【珠理奈】
「実は、なんかこう……変な緊張っていうか、
意味もなく落ち着かなくなっちゃってたりして」
【珠理奈】
「あはは……」
【珠理奈】
「…………」
//ドキドキして言葉が出ない感じの吐息か何かを。
【珠理奈】
「……うん、上手くいったときだからこそ、だよね」
//自分に言い聞かせる感じです。
【珠理奈】
「よしっ」
//立ち上がる。主人公の前へ
//↓【9】
【珠理奈】
「あのっ」
【珠理奈】
「あの……これからも話を聞いてほしいのと、
話をして欲しいのとが、ありまして」
【珠理奈】
「でもそういうのは、その……わがままというか、
おねだりというか……」
【珠理奈】
「とっ、とにかくそういう感じだと思うんです」
【珠理奈】
「それを言えるのは、たぶん……世間一般で言えば、
えっと……」
【珠理奈】
「なんていうか、あはは……その、
彼女が彼氏に対してするような振る舞いで、ですね……」
【珠理奈】
「だから……ですね……。
つまり……ですね…………」
【珠理奈】
「……彼女の席が空いてたら、
ゎゎ、私なんかはどうかな~……なんて……」
【珠理奈】
「そんなことを、恥ずかしながら思ってみた次第でして……」
【珠理奈】
「いきなりでびっくりしたかもしれませんが、
これは結構本気で考えまくったことだったりで」
【珠理奈】
「恋愛とか色恋とか無縁でここまで育っちゃった私なので、
こう、上手く言えないなぁ~って感じではあるんですが」
【珠理奈】
「わかってるんです。
妹より不器用だし、失敗も多くてそれはもう大変で」
【珠理奈】
「でも……でもこれから頑張っていくって、
しっかりと心に誓いましたし」
【珠理奈】
「今回の件で、やればできるかもって自信も、
少しはつきましたし」
【珠理奈】
「なんていうか、とにかく頑張りますから」
【珠理奈】
「だから……」
【珠理奈】
「――だから、私を彼女にしてもらえたらなぁ~……なんて」
【珠理奈】
「お――思い切って、お願いしてみましたっ」
【珠理奈】
「お返事、できればお願いします」
//ここまで主人公とは目を合わせず、早口空元気みたいな
【珠理奈】
「えっと……それはつまり……」
【珠理奈】
「私が彼女でもいいってこと……です?」
【珠理奈】
「あ……ぅ……」
//顔が真っ赤になってきています
【珠理奈】
「あの……隣に戻って、いいでしょうか」
【珠理奈】
「す……座ります」
//珠理奈が隣に戻る
//↓近めの【11】
【珠理奈】
「……さっき座ってたときと、世界が違って見えます」
【珠理奈】
「いつもの夜の公園なのに、
なんか違って見えるんです」
【珠理奈】
「………………ふふっ」
【珠理奈】
「ああ、おかしかったわけじゃなくて、
自然とこう、こみ上げてきたっていうか」
【珠理奈】
「……顔が、にやけちゃうんです」
【珠理奈】
「嬉しいに決まってるじゃないですか」
【珠理奈】
「中高一貫の女子校でしかも勉強ばっかりしてたから、
恋なんてしたことなくって」
【珠理奈】
「今も勉強やら実習やらで必死で、
それ以外のことにまったく余裕もなくって」
【珠理奈】
「そこに突如として現れて、
話してるうちにドキドキが増えていって……」
【珠理奈】
「友達に話したら、恋だから告っちゃえって言われて……」
【珠理奈】
「臆病だから、ダメって言われたらどうしようって、
そればっかり考えてたんですけど……」
【珠理奈】
「今日はいいことがあったから、
いつもよりはポジティブな気持ちになってて」
【珠理奈】
「それで、かなり気合いを入れての告白だったんです」
【珠理奈】
「……全部伝わってたんですか?」
【珠理奈】
「やっぱりわかりやすいのかな、私」
【珠理奈】
「えっ? なんですかその、丁寧語100%って」
【珠理奈】
「最初の頃はため口っぽいのがまざってた……あー……」
【珠理奈】
「大人っぽくとか、できる人っぽく振舞うとか、
必死に考えながら毎日を過ごしていたから……」
【珠理奈】
「ええ、今は自然な自分だと思います」
【珠理奈】
「穏やか……。
ほめ方っていうか、言葉選び上手いですね」
【珠理奈】
「臆病とか引っ込み思案とかをポジティブに変換したの丸わかり」
【珠理奈】
「でも……穏やかかぁ……」
【珠理奈】
「そうですね。
しっくりこないのは、むしろ逆だよなぁなんて思ったので」
【珠理奈】
「日々どったばた。失敗するわ忘れるわで、
あれこれ右往左往してるうちに時間が過ぎていく」
【珠理奈】
「……うん、そんな毎日」
【珠理奈】
「あー、でもこうしてここで過ごしている時間は、
いつも穏やかでした」
【珠理奈】
「これからも……?
本当に……?」
【珠理奈】
「……ふふっ。
にやけちゃう」
【珠理奈】
「ここ以外でも……一緒にいられるんですよね……?」
【珠理奈】
「それとも忙しいです?」
【珠理奈】
「なんて聞いた私も、かなり忙しいとは思うんですけど」
【珠理奈】
「時間は作るもの、って先輩がいつも言ってました。
それを実行する時が来たって感じですね」
【珠理奈】
「あ、今度家に遊びに行ったりしてもいいです?」
【珠理奈】
「私の家は今は何人たりとも踏み込ませるわけにはいかないので」
【珠理奈】
「ゴミはちゃんと捨ててますよ。
掃除も洗濯もしてます」
【珠理奈】
「そうじゃなくて、レポートとか資料とかで、
本当に足の踏み場がないんです」
【珠理奈】
「ワンルームの入り口からベッドまで、
ほそーくカーペットが見えるだけ」
【珠理奈】
「両脇は物でいっぱい。
だからそれを整理するまでは、私の家はアウトです」
【珠理奈】
「だから私が遊びに行くってことでいいです?」
【珠理奈】
「料理は自信ありますよ。
家のごはんの手伝いもしてましたし……」
【珠理奈】
「高校の頃は私が作っていたんです。
だから任せてください」
【珠理奈】
「って、そろそろ時間ですね」
【珠理奈】
「ふふっ、気にしないでいいなんて言われたら、
もっとって言いたくなりますね」
【珠理奈】
「でも、明日提出のレポートがあるので、
そこはしっかりこなさないと」
【珠理奈】
「勉強も、生活も……そして恋も。
全部……全部全力でしっかり向き合いたいんです」
【珠理奈】
「くすっ、そう言ってくれると思いました。
はい、頑張りますので応援しててくださいね」
【珠理奈】
「私も、応援してますので」
//↓【10】
【珠理奈】
「じゃあ、私はこれで。
あとで連絡しますね」
//↓【9】
【珠理奈】
「あっ、そうだ」
【珠理奈】
「ふぅ……えっと、ふつつかものですが、
これからもよろしくお願いします」
【珠理奈】
「それじゃあ! ばいばい」
//珠理奈走っていく