Track 3

7回目の公園

//珠理奈が公園のベンチに座ってる。 //主人公が歩いてやってくる。 //↓【9】 【珠理奈】 「おかえりなさい。  先に来たので座ってました」 【珠理奈】 「いえ、今日はなんていうかブランコじゃなくて、  ベンチのほうがいいと思ったので」 【珠理奈】 「って、お疲れですよね。  隣、どうぞ」 //言おうと思っていて、さりげなく言ったつもりがそうじゃない感じです //「となり……どうぞっ(えいやっ)的な //主人公隣に座る。 //↓近めの【11】 【珠理奈】 「なんか、ちょっと違う場所に座ってるのに、  全然景色が違うみたい」 【珠理奈】 「ブランコのきしむ音もならないから、  やけに静かに感じるのもあるかな」 【珠理奈】 「今日はいろいろと話すことがあるんですけど、  時間は大丈夫です?」 【珠理奈】 「じゃあ……ふふっ、大人の時間第7回目にして初!  実は今日、褒められたんです」 【珠理奈】 「今実習してるところには、  一番怖い看護師さんがいるんです」 【珠理奈】 「派手に怒ったり、嫌味を言ったりしなくて、  こう……物静かな人で」 【珠理奈】 「どっちかっていうと無表情で、  口数も少ない人なんです」 【珠理奈】 「逆に怖いと思いません?」 【珠理奈】 「その人はいつも『ここがダメね』って、  ストレートに端的にズバッと言ってきて」 【珠理奈】 「最後に必ず、  『改善策を次まで考えておきなさい』って」 【珠理奈】 「そして自分なりに考えて、  次のときに『考えてきました』って言おうとすると」 【珠理奈】 「いつも、  『私に言わなくていいから、実践しなさい』ってだけ」 【珠理奈】 「私だけじゃなく、みんなも怖がってるんです」 【珠理奈】 「その看護師さんから今日、帰り際に呼び止められたんです」 【珠理奈】 「そして、『前回の反省、できていたわよ。  頑張りなさい。できるんだから』って」 【珠理奈】 「私、泣きそうになって、  急いでここへ来たんです」 【珠理奈】 「……まだ泣いたらだめだと思ったから」 【珠理奈】 「普通にここで報告したかったのかな。  あとお礼も」 【珠理奈】 「ここで何度も話を聞いてくれたおかげで、  少しずつ私が変われてること」 【珠理奈】 「……ありがとうね」 【珠理奈】 「ふふっ、面と向かって言うと恥ずかしい」 【珠理奈】 「隣だけどってツッコミ、来ると思いました」 【珠理奈】 「……いつもここで話していると、  嫌なことを忘れられるくらい楽しいんです」 【珠理奈】 「ほんと、最近は頑張れる自分がいて……」 【珠理奈】 「反面、私ばっかり助けられてるって考えちゃって、  なんか、もどかしさも出てきたんです」 【珠理奈】 「助けられてる? 私何もしてませんよ?」 【珠理奈】 「話しているだけで役に立っているんですか」 【珠理奈】 「ええ、楽しいですよ。  ここへ来るのが楽しみだし」 【珠理奈】 「ああ、でもレポートとかもあるから、  毎日来られないのが残念かな」 【珠理奈】 「本当は毎日話したりしたいなんて、  わがままを言ってみたいんですけど……」 【珠理奈】 「ふふっ、冗談でも『それでもいいよ』って言ってもらえると、  気持ちが楽になります」 【珠理奈】 「実は、なんかこう……変な緊張っていうか、  意味もなく落ち着かなくなっちゃってたりして」 【珠理奈】 「あはは……」 【珠理奈】 「…………」 //ドキドキして言葉が出ない感じの吐息か何かを。 【珠理奈】 「……うん、上手くいったときだからこそ、だよね」 //自分に言い聞かせる感じです。 【珠理奈】 「よしっ」 //立ち上がる。主人公の前へ //↓【9】 【珠理奈】 「あのっ」 【珠理奈】 「あの……これからも話を聞いてほしいのと、  話をして欲しいのとが、ありまして」 【珠理奈】 「でもそういうのは、その……わがままというか、  おねだりというか……」 【珠理奈】 「とっ、とにかくそういう感じだと思うんです」 【珠理奈】 「それを言えるのは、たぶん……世間一般で言えば、  えっと……」 【珠理奈】 「なんていうか、あはは……その、  彼女が彼氏に対してするような振る舞いで、ですね……」 【珠理奈】 「だから……ですね……。  つまり……ですね…………」 【珠理奈】 「……彼女の席が空いてたら、  ゎゎ、私なんかはどうかな~……なんて……」 【珠理奈】 「そんなことを、恥ずかしながら思ってみた次第でして……」 【珠理奈】 「いきなりでびっくりしたかもしれませんが、  これは結構本気で考えまくったことだったりで」 【珠理奈】 「恋愛とか色恋とか無縁でここまで育っちゃった私なので、  こう、上手く言えないなぁ~って感じではあるんですが」 【珠理奈】 「わかってるんです。  妹より不器用だし、失敗も多くてそれはもう大変で」 【珠理奈】 「でも……でもこれから頑張っていくって、  しっかりと心に誓いましたし」 【珠理奈】 「今回の件で、やればできるかもって自信も、  少しはつきましたし」 【珠理奈】 「なんていうか、とにかく頑張りますから」 【珠理奈】 「だから……」 【珠理奈】 「――だから、私を彼女にしてもらえたらなぁ~……なんて」 【珠理奈】 「お――思い切って、お願いしてみましたっ」 【珠理奈】 「お返事、できればお願いします」 //ここまで主人公とは目を合わせず、早口空元気みたいな 【珠理奈】 「えっと……それはつまり……」 【珠理奈】 「私が彼女でもいいってこと……です?」 【珠理奈】 「あ……ぅ……」 //顔が真っ赤になってきています 【珠理奈】 「あの……隣に戻って、いいでしょうか」 【珠理奈】 「す……座ります」 //珠理奈が隣に戻る //↓近めの【11】 【珠理奈】 「……さっき座ってたときと、世界が違って見えます」 【珠理奈】 「いつもの夜の公園なのに、  なんか違って見えるんです」 【珠理奈】 「………………ふふっ」 【珠理奈】 「ああ、おかしかったわけじゃなくて、  自然とこう、こみ上げてきたっていうか」 【珠理奈】 「……顔が、にやけちゃうんです」 【珠理奈】 「嬉しいに決まってるじゃないですか」 【珠理奈】 「中高一貫の女子校でしかも勉強ばっかりしてたから、  恋なんてしたことなくって」 【珠理奈】 「今も勉強やら実習やらで必死で、  それ以外のことにまったく余裕もなくって」 【珠理奈】 「そこに突如として現れて、  話してるうちにドキドキが増えていって……」 【珠理奈】 「友達に話したら、恋だから告っちゃえって言われて……」 【珠理奈】 「臆病だから、ダメって言われたらどうしようって、  そればっかり考えてたんですけど……」 【珠理奈】 「今日はいいことがあったから、  いつもよりはポジティブな気持ちになってて」 【珠理奈】 「それで、かなり気合いを入れての告白だったんです」 【珠理奈】 「……全部伝わってたんですか?」 【珠理奈】 「やっぱりわかりやすいのかな、私」 【珠理奈】 「えっ? なんですかその、丁寧語100%って」 【珠理奈】 「最初の頃はため口っぽいのがまざってた……あー……」 【珠理奈】 「大人っぽくとか、できる人っぽく振舞うとか、  必死に考えながら毎日を過ごしていたから……」 【珠理奈】 「ええ、今は自然な自分だと思います」 【珠理奈】 「穏やか……。  ほめ方っていうか、言葉選び上手いですね」 【珠理奈】 「臆病とか引っ込み思案とかをポジティブに変換したの丸わかり」 【珠理奈】 「でも……穏やかかぁ……」 【珠理奈】 「そうですね。  しっくりこないのは、むしろ逆だよなぁなんて思ったので」 【珠理奈】 「日々どったばた。失敗するわ忘れるわで、  あれこれ右往左往してるうちに時間が過ぎていく」 【珠理奈】 「……うん、そんな毎日」 【珠理奈】 「あー、でもこうしてここで過ごしている時間は、  いつも穏やかでした」 【珠理奈】 「これからも……?  本当に……?」 【珠理奈】 「……ふふっ。  にやけちゃう」 【珠理奈】 「ここ以外でも……一緒にいられるんですよね……?」 【珠理奈】 「それとも忙しいです?」 【珠理奈】 「なんて聞いた私も、かなり忙しいとは思うんですけど」 【珠理奈】 「時間は作るもの、って先輩がいつも言ってました。  それを実行する時が来たって感じですね」 【珠理奈】 「あ、今度家に遊びに行ったりしてもいいです?」 【珠理奈】 「私の家は今は何人たりとも踏み込ませるわけにはいかないので」 【珠理奈】 「ゴミはちゃんと捨ててますよ。  掃除も洗濯もしてます」 【珠理奈】 「そうじゃなくて、レポートとか資料とかで、  本当に足の踏み場がないんです」 【珠理奈】 「ワンルームの入り口からベッドまで、  ほそーくカーペットが見えるだけ」 【珠理奈】 「両脇は物でいっぱい。  だからそれを整理するまでは、私の家はアウトです」 【珠理奈】 「だから私が遊びに行くってことでいいです?」 【珠理奈】 「料理は自信ありますよ。  家のごはんの手伝いもしてましたし……」 【珠理奈】 「高校の頃は私が作っていたんです。  だから任せてください」 【珠理奈】 「って、そろそろ時間ですね」 【珠理奈】 「ふふっ、気にしないでいいなんて言われたら、  もっとって言いたくなりますね」 【珠理奈】 「でも、明日提出のレポートがあるので、  そこはしっかりこなさないと」 【珠理奈】 「勉強も、生活も……そして恋も。  全部……全部全力でしっかり向き合いたいんです」 【珠理奈】 「くすっ、そう言ってくれると思いました。  はい、頑張りますので応援しててくださいね」 【珠理奈】 「私も、応援してますので」 //↓【10】 【珠理奈】 「じゃあ、私はこれで。  あとで連絡しますね」 //↓【9】 【珠理奈】 「あっ、そうだ」 【珠理奈】 「ふぅ……えっと、ふつつかものですが、  これからもよろしくお願いします」 【珠理奈】 「それじゃあ! ばいばい」 //珠理奈走っていく