Track 2

お礼のお食事会

//駅前 けっこう賑やか。車の通りもある //舞結が横から声をかけてくる。 【舞結】 「こーんばーんわっ」 //主人公が舞結を向いたので、正面向かい合う状態に。 【舞結】 「あ……もしかして待たせちゃいました?」 【舞結】 「今来たところならよかった~。  家を出る時、遅れそうだったからちょっと慌てていたんです」 【舞結】 「はい、家から来ましたよ?  なにかまずかったです?」 【舞結】 「制服から着替えていないですね。  もしかして、制服は嫌いですか?」 【舞結】 「あはっ、ですよねですよね。  男の人で制服が嫌いって人、なかなかいないですよね」 【舞結】 「って、立ち話してるのもあれですし、  早速行きましょうか」 【舞結】 「ああ、お父さん、  お仕事のトラブルで来られなくなっちゃったんです」 【舞結】 「なので、お父さんからもらってきました!  じゃじゃーん! 諭吉ブラザーズ!」 【舞結】 「これで好きなもの食べてきなさいって。  まじでお父さん神」 【舞結】 「そうですね。  って……二人じゃまずいですか?」 【舞結】 「あはっ、だから制服で来たんです。  家族っぽいですし」 【舞結】 「お店にはお父さんが来られなくなりましたって言えばほら、  兄弟みたいじゃないですか」 【舞結】 「ねっ、お兄ちゃんっ」 【舞結】 「あれっ?  もしかして、そういうの苦手でした……?」 【舞結】 「まんざらでもないって顔してますよ、ふふっ」 【舞結】 「ああっ、からかったわけじゃないですっ。  ただちょっと、嬉しくなったからつい」 【舞結】 「えっ……そう呼んでもいいんですか?」 【舞結】 「それじゃあ遠慮なく!  じゃあいきましょ、お兄ちゃん」 //足音 【舞結】 「ここに来るの久しぶりなんですよ~」 【舞結】 「前に来たのは、私の誕生日の時ですね。  お祝いはいつも外食なんです」 【舞結】 「つまり……ふふっ、特別なお店なんです。  いい雰囲気ですよね、ここ」 【舞結】 「こういうお店は好きですか?」 【舞結】 「あはっ、たまに来るならっていうの、わかります。  いつも来るようだと、ありがたみがなくなっちゃいますから」 【舞結】 「あれ……もしかして緊張してます?」 【舞結】 「実は私もちょっと緊張してます。  いつもはお父さんと来ているので」 【舞結】 「あー、たまにお姉ちゃんも一緒のときがありますね」 【舞結】 「お姉ちゃんは今、一人暮らしをしているんです。  だから、家にはいないですね」 【舞結】 「……よかった~。  お姉ちゃんに興味持たれたらどうしようって思いました」 【舞結】 「今は、私と一緒なんですからね」 【舞結】 「あ……でも、制服でこなきゃよかったかな。  かえって落ち着かないや」 【舞結】 「……あはっ。  お兄ちゃんと一緒だから大丈夫、いただきましたっ」 【舞結】 「やっぱりいいですね。  年上の男の人って感じします」 【舞結】 「どのへんが……ですか。  うーん……全部?」 【舞結】 「なんか落ち着いているし、おしゃべりな私でも、  嫌な顔しないで話を聞いてくれますし」 【舞結】 「LINEも返信してくれますしね」 【舞結】 「楽しい……ですか?  私との会話が?」 【舞結】 「……ありがとうございます。あはっ」 【舞結】 「うざいとかめんどくさいとかあったら、  ちゃんと言ってくださいね」 【舞結】 「じゃあちゃんと言うって、  ……は、はい、なんでしょう……?」 【舞結】 「気軽にいつでも……?  それでいいんですか? ほんとに?」 【舞結】 「た、たしかに今までも気軽にいつでもみたいでしたけど、  一応それなりに送るときは悩んで――」 【舞結】 「……なんでもないですっ。  今のなしっ。消去消去っ!」 【舞結】 「うぅ、そこは年上の余裕で聞き流して欲しかったです」 【舞結】 「……女子高なので、男の人と話す機会は、  ほとんどないんですよ」 【舞結】 「あるとしたら、お父さんと先生くらい」 【舞結】 「だからっていうわけじゃないんですけど、  今回はなんか嬉しくって……」 【舞結】 「あっ、べ、別にいつも男~男~って、  変に飢えてるわけじゃないんですよっ?」 【舞結】 「ただ……まわりの子と同じくらいには、  いろんな憧れとか興味とかもあるので……」 【舞結】 「……って、恥ずかしいこと言わされてます。  思いっきり言わされてますっ」 【舞結】 「できることならなんでもって、  今なんでもっていいましたよね?」 【舞結】 「なんでも、ですよ?  オールOKってことですよ?」 【舞結】 「わぁ、年上の余裕……」 【舞結】 「感心しちゃいました。  あはっ、じゃあ一つだけ、なんでものお願いをしますね」 【舞結】 「これからもLINEとか電話とかしてください。  あー、あと……」 【舞結】 「こういうお食事とかも行けたらなぁとか思ってみたり」 【舞結】 「あっ――!  お小遣いは貯めてるので、お金はちゃんと出します!」 【舞結】 「となると、お食事……というよりは、  ごはんって感じになっちゃいますけど」 【舞結】 「ふふっ、出さなくていいよって言うと思いました。  でもだめです。出します」 【舞結】 「えっ……かっこつけさせてくれ……ですか」 【舞結】 「……充分かっこいいと思いますけど……」 //小声。まじ小声で。 【舞結】 「……じゃあ2回に1回は割り勘でいいですか?」 【舞結】 「やったっ。  これで、自動的に2回はごはんに行く約束になったんですよ?」 【舞結】 「あ……私はまだ学生だから時間があるけど、  やっぱり忙しいですよね」 【舞結】 「空けるって、わざわざそんな――」 【舞結】 「……空けたいから空けるなんて言われたら、  なんにも言い返せないです……」 【舞結】 「でもでも、絶対ですからね。  私、食べに行きたい店があるんです」 【舞結】 「インドカレー!  素手で食べられる系のお店なんです!」 【舞結】 「いっぺんしてみたかったんですよね。  テレビで見てて、美味しそうだなって」 【舞結】 「あー、素手は素手でも、右手で食べないとだめなんですよ?  左手はトイレ――」 【舞結】 「――はっ!?  あの……左手……は……その……えっと……」 【舞結】 「……そえるだけ、ってどういう意味です?」 【舞結】 「なんでもない、ですか。  じゃあ気にしないでおきます」 【舞結】 「はい?  ……何肉でも、お肉は大好きですよ」 //一応、「なににく」です 【舞結】 「いのししって食べたことないですね。  食べられるんですか?」 【舞結】 「まあ食べられそうではありますね」 【舞結】 「熊とかウサギも食べられるんですもんね」 【舞結】 「かかか、かぶとむしとかばったは虫じゃないですかっ。  あれはダメっ、絶対ダメですっ」 【舞結】 「あれっ、急に笑ってどうしたんですか?」 【舞結】 「あ……周りの人、見てました……?」 【舞結】 「良かった……。  声の大きさは気を付けないと……」 【舞結】 「私、ついおっきな声になっちゃうから」 【舞結】 「元気があっていいって言われても、  なんか子どもっぽくて嫌ですよ」 【舞結】 「おしとやかには……うぅ……ちょっと無理かも。  じっとしてるの苦手で……あはは」 【舞結】 「LINEに出てるって、性格が――ですか?」 【舞結】 「だって、送信ボタン押した瞬間に、  別の言いたいこと浮かんでくるんです」 【舞結】 「そういうときありません?」 【舞結】 「ですよねですよねっ。  そういうときは、気にしないで連投しちゃっていいですよ」 【舞結】 「いっぱい話して、もっと知りたいなぁって」 【舞結】 「……はい、興味っていうか、気になっているんです」 【舞結】 「だって、珍しいじゃないですか。  財布の中身も見ずに、交番へ届けるなんて」 【舞結】 「真面目な人なんだなぁって。  なのに、LINEでは気軽に話してくれるし」 【舞結】 「だからもっといろいろ話して、  いろいろ知りたいなぁって思ったんです」 【舞結】 「……だめです?」 【舞結】 「いいけど……けど、なんです?」 【舞結】 「はいっ、お兄ちゃんって呼びますっ!  忘れてました!」 【舞結】 「って、また大きい声だしちゃいました」 【舞結】 「あはっ」 【舞結】 「あ、料理来たかも。  あのジュ~って音は間違いないです」 【舞結】 「ここのハンバーグ、本当に美味しいんですよ。  いっぱい食べてくださいね」 【舞結】 「いえいえ、お礼なんですから、今日は遠慮なしですっ!」 //食事は飛ばして、店を出てからのシーンになるので、間のBGMを。 //駅前の雑踏(のSEで場面転換の表現を) //舞結は真正面。距離は1m 【舞結】 「今日はありがとうございましたっ」 【舞結】 「ごちそうしたのは、そもそもお財布のお礼ですから」 【舞結】 「そういう丁寧なところ、  さりげなく好感度アップですよ」 【舞結】 「ごはんの約束、忘れないでくださいね」 【舞結】 「ちなみに、時間が空いてるのはいつごろ……あっ、  やっぱいいです! 今すぐなんてわからないですよねっ」 【舞結】 「だから、あとでLINEか電話で決めましょう。  それでいいです?」 【舞結】 「やったっ。  じゃあまた連絡します!」 【舞結】 「あ……全然お兄ちゃんって呼んでなかったですね……」 【舞結】 「ごめんなさい。  舞い上がっちゃっててついつい……てへっ」 【舞結】 「そろそろ帰らないとまずいかな。  なにげに時間がやばかった」 【舞結】 「ってことでお兄ちゃん、またねっ」 【舞結】 「あれ、なにかまずかったですか?」 【舞結】 「あー……確かに帰り際にお兄ちゃんはまずいかもですね。  変な誤解されちゃいますね……」 【舞結】 「また今度のお楽しみで!」 【舞結】 「さてっ。  それじゃあ気を付けて帰ってくださいね!」 【舞結】 「はいっ、わかりました。  私も帰宅したらスタンプ送ります」 【舞結】 「あは……名残惜しい感じ」 【舞結】 「いつでも気軽に……でいいんですよね?」 【舞結】 「……そうします」 【舞結】 「……よしっ!  気合入れて……」 【舞結】 「それじゃあねっ!  また~!」 【舞結】 「ばいば~いっ!」 //舞結が走り去っていく。