第3話・ここ一番のなんとか
■第3話・ここ一番のなんとか
[近所のモールの中の鍵屋で合鍵を作った後、近くのカレー屋(ココイチ)で]
(向かい合って席に座ってるふたり)
えへへ……ありがとうございます。キーホルダーまで買ってもらって……
これ、一生大事にしますね、お兄さん。
(主「そんな大げさな」)
いえ、大げさなんかじゃないです。
好きな人に、その人の家の鍵をもらったんですよ?
むしろお兄さんは、事の大きさをもっと自覚してください。
……こんなに肯定してもらえることってなかったので、私にとってはとんでもない大事件なんです。
それに、今日もご飯、食べに連れてきてもらって……
作家さんってそんなに儲かってるんですか?
(主「女の子一人養うくらいは余裕余裕」)
えへ……そう言っていただけるのは嬉しいですが、食費は女の子一人分じゃ収まらないと思いますよ。
もちろん、お兄さんが節約しろっていうなら、そういう生き方も知ってるので対応可能です。あまり無理はしないでくださいね。
それで、今日は(注文していいのは)いくらまでですか?
(主「二千円かな」)
……本当に大丈夫なんですか?二千円もあれば十分お腹いっぱいになれますね。
……うーん……とはいえ、逆にほぼ無制限みたいなものなので悩みますね……
それでは、ポークカレーのご飯500グラム、甘口で……
トッピングはチキンカツと、ロースカツと……あとビーフカツにしましょう。
残りは、えっと……それじゃ、イカサラダも追加で!
これでちょうど二千円です!(463+206+290+290+360+391=2000)
(主「ぴったりだ」)
えへへ……こういう計算は得意なので……
でも、外食でお腹いっぱい食べていいなんて、夢のような暮らしですv
お兄さんはあんまり食べない人ですか?
(主「月ちゃんが食べてるとこ見るのって楽しいから」)
ん……私の食事は見世物じゃないですよ?
んふふ……でも、そういう事言われるのも新鮮です。
なるべく安く、それでいて量を食べようと思ったら好きなものって食べられないですから、あんまり人とご飯に行ったりもできなかったですし。
誰かと一緒に食べるのって、やっぱり幸せな事なんだなって思いました。
(主「僕も、一人で食べるよりも何倍も楽しいよ」)
えへ……これに関しては私もお兄さんもウィンウィンの関係みたいですね。
それでは注文しましょう。ボタン、押しますね。
[ご飯を食べた後、帰りの夜道]
(いっぱい食べてお腹いっぱいの二人)
【右側・近距離】
はふぅ、お腹いっぱいです。
お兄さん、ありがとうございます!
でも、毎日こんなにいい思いさせてもらってたら、体重計に乗るのがちょっと怖いですね……えへへ……
(主「月ちゃんって体重何キロ?」)
【正面・近距離】
む……女の子に体重のこと聞くのはマナー違反ですよ?
でもまあ、何度もお兄さんの上に乗っかったので、大体はわかるんじゃないでしょうか?
私、結構軽いですよ。身長の低さもありますけど。
(月の両脇を抱えて持ち上げて見る)
ひゃっ……ちょっとお兄さん、こんなとこで……
(主「めちゃくちゃ軽い」)
えへへ……でも、さっきのカレーも入ってるので、お腹空いてる時はもっと軽いですよ。たぶん。
(持ち上げた月を降ろす)
おっと……へへ……
お兄さんはちょっと重そうですよね。おっきいですし、私の倍くらいですか?
おっきな人にぎゅってされてると落ち着くので、(拾ってくれたのが)お兄さんでラッキーでしたね。
お兄さんもちっちゃいのが好きみたいですし、そんな二人は相性抜群……なんちゃって。
ふあーあ(あくび)……でも、お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃいました。
今日は鍵もご飯も、ありがとうございました。
とっても、とっても幸せ……でした。
(少し罪悪感がある月)
……私、お兄さんのお仕事の邪魔になってないですか?
わざわざ外出に時間取らせて、鍵やご飯にお金使わせて、その分お仕事進まなかったら損ばっかりなんじゃないかなって、少し心配です。
(主「毎日こんな感じだよ」)
そうなんですか?
(主「何もない毎日に面白い要素が加わってワクワクしてる」)
ふへへ……それならいいです。
そうですよね……一人よりも二人……悪いことはない……ということにしておいてください。
私も、お兄さんの生活に彩りを加えてあげられるよう、お手伝いさせてもらいますね。