Track 3

Chapter3_ふつうの恋

■チャプター3:ふつうの恋 [チャプター2の1月後、10月上旬・主人公の教室・放課後] そろそろ指、治ったかな?【※前方中距離】 ね、ちょっと見せてみて…… 大丈夫だって。 もうホームルームも終わって、クラスメイトはみんな帰っちゃったでしょ? ほら、手を貸してみて…… うーん。まだかさぶたが残ってるね……【※前方近距離】 あ……この指。 この人差し指、私が最初にもらったとこ…… かさぶたは取れてるけど、傷痕、残っちゃってる……ね…… ごめんね、あなたの手、傷物にしちゃった…… 大丈夫。ちゃんと責任は取ろうと思ってるわ。 え?「どんな風に取るつもりなんだ」って…… それは、大事な体に傷を残しちゃった時の責任の取り方なんて一つしかないじゃない。 ねぇ、私たち、結婚しよ? (驚き動揺する主人公) ふふっ…… ここであなたがOKしてくれたら、私を好きだって言ってくれたら、これが冗談じゃなくなるのになぁ…… まだ答えは……くれないのね。 うん、いいの。 私は待ってるから。 ……あのさ。 噛まないから、絶対に噛まないから…… この指、舐めていい……? (「何言ってるんだ」と主人公) あ、うん、ごめん。 私が、あなたの指が治るまで血液断ちするって決めたんだったね…… ……はぁ……はぁ。 でも、美味しそう…… だってだって! まだ治ってないところから、あなたの血の匂いがするんだもん! ドキドキしちゃう……じゅんわりしちゃうよぉ…… ……わかってる。指は舐めない。 ……ねぇ、知ってる?(いたずらっぽく) 医療の現場で、採血よりも手軽に行えて、患者さんの負担にならない診断方法として、最近注目されている方法があるの。 ちょっと舌、出してみて? うん、そんな感じ……はぷ(舌先を咥える・唇は触れてない)【※前方至近距離】 ちゅる、ちゅぷ、ちゅるんっ (舌を逃がす主人公) んもぅ、逃げないでよぉ~ うふふ……それにはねぇ、唾液を使うの。 確かに血液よりは味は薄いんだけどぉ……ちゅ、ぢゅる……(再び舌を捕まえられる) それでも、これで病気がわかったり、体調を測ったりできるのよ。 本当は血液が一番美味しいんだけど、それ以外の体液も意外といけるのよね、これが。 大丈夫……噛んだりしないから…… 優しく、優しく、舐めてあげる…… (/舌を唇で咥えたまま) ちゅる…… あ、唇はくっつけちゃダメよ? それだと……んぷ……キスになっちゃう…… それは、あなたが私と恋人同士になることを選んでくれたらの事だから…… ……もしこのままキスしたいんだったら……じゅる……今すぐオッケーくれてもいいのよ? そしたら……じゅるる……いちゃいちゃでラブラブなキス、してあげるわ……んちゅ…… ねぇ……好きって言って……? 好きって言いながら抱きしめてよぉ…… ちゅる、ちゅ、んちゅ ほら、あと1センチ……あなたが好きって言ってくれたら、このまま一つになれるのに…… ちゅ、ちゅる、ちゅ、んぷ、ちゅるる…… んぷ……本当にあなたって真面目なのね。 わかってる。あなたの思いは尊重してるつもりよ? じゃなかったら……ぢゅる……もう襲っちゃってるもん。 こんなに好きなあなたが目の前にいるのに、触れているのは舌先だけ……ちゅ…… ……あなたが思ってるより、ずっとずっと切ないんだよ? んぷ、ちゅるる…… 私もね、ただ単に血が美味しいからとか、あなたが優しいからとか、もうそんなので好きって言ってるわけじゃないのよ? もう私の心はあなたでいっぱいいっぱいなの。 好きで、好きで、苦しくて、死んじゃうよぉ…… ちゅる、んぷ、ちゅちゅぅ 美味しい……ちゅる、んちゅ……おいしい……! 単純に好みの味ってだけじゃないの。 あなたのだから……好きな人のだから……んぷ、んく……とっても美味しく感じるんだよ……? ちゅぷ……ねぇ、まだダメなの? まだ……好きになってくれないの? じゃあなんでこんな事、許してくれるの……? 女の子に舌を舐められるなんて、普通じゃないよ? こんな事、愛し合ってないとできないことなんじゃないの? 「お前は普通じゃないんだろう」って、確かにそうは言ったけど……ぷはぁ (舌を唇で咥えたまま/) (/少し怒った風に) じゃあ、私が普通の女の子じゃないからこうしてくれてるだけなの? もし私が普通の女の子だったら、こんな事許してくれないのかな? ……それとも、普通の女の子に好きって言われたら、あなたはオッケーするのかな? ねぇ、なんで黙るの? やめてよ……私があなたを責めてるみたいじゃない…… (少し怒った風に/) (一転、今の自分の感情を後悔する朱音) 違うの……私は……嬉しいんだよ……? こんな風に好きな人にこんなに近くにいることを許してもらえて…… こんな『普通じゃない事』もしてもらえて……嬉しいの…… 嬉しいのに……なんでこんなに……辛い……(涙ぐむ朱音) うぐ……ぐすん…… やめてよ……優しく撫でないで…… 抱きしめないで……やだ……ずるい……(ぽろぽろと大粒の涙がこぼれる) ……好きじゃないなら……ぐす……優しくしないで……よぉ…… (指で涙を拭く主人公) うぐ……ひっく……ぐす……ん…… やぁ……謝らないで…… (「僕は君のことが好きなんだ」と主人公) ……え……? 「好き」? 今、好きって言った……よね? 「好きだけど、まだ恋人にはなれない」…… はぁ……そうだよね……※ごめん。(希望のある落胆) 最近血を舐めさせてもらってないから、私、ちょっと不安定になってるみたい……【※前方中距離】 ごめん、ちょっと頭冷やしてくる…… よかったら先に帰ってて。 私のみっともないとこ、あなたに何度も見せたくないもの。 あ……でも、一つだけ聞かせて……? さっき言った「まだ」って言葉には、期待させてもらってもいいのかな……? (黙って小さく頷く主人公) うん、そっか。じゃあ安心ね。 きっとこのまま私があなたを変わらずに好きでいたら、大丈夫ってこと、だよね? ふふ、ありがとう。 こんな面倒ななんちゃって吸血鬼だけど、これからも嫌いにならないでくれたら嬉しいな。