Chapter10_温度と湿度と匂いと味と
■チャプター10:温度と湿度と匂いと味と
[チャプター9の続き・30分程度後]
じゃーん!お待たせ!【※正面中距離】
朱音特製のたまご粥でーす!
……とは言っても、私はあなたのお母様が用意してくれてた材料を調理しただけだけれど。
本当にいいお母様ね。
あなたでも料理できるように、随分と細かい手順が書かれたメモが一緒に置いてあったわ。
あ、熱いから、私がふーふーってしてあげるわ。
ふー……ふー……
はい、あーん……
ふふ……どう?おいしい?
「うちの味がする」?
そりゃそうよ。だってレシピはお母様のものなんだもん。
……いつか、ちゃんとした私の手料理を振舞ってあげたいわ。
あなた、朝ごはんは洋食派?和食派?
へぇ……和食派なんだ。
じゃあ、お味噌汁作る練習しとかなきゃだね。
あなたの好みの具材で作ってあげる。
そしてあなたはその匂いで目を覚ますの。
絵にかいた新婚さんって感じ、しない?
うふ、うふふふっ
あなたの好きなものも苦手なものも、教えてね?
私、いいお嫁さんになるから。
素敵な夫婦になりましょうね。
……気付いてた?
昨日から、私があなたを呼ぶ時の「あなた」は、「旦那様」って意味のものに変えているの。
「気づけるわけない」?
ふふ、当然だわ。だって今考えたんだもん。
でも、嘘じゃないわ。
ねぇ、あなた。
好きよ。大好き。
「意識すると恥ずかしい」……
うふふ……まだ慣れるのには時間がかかりそうね。
だって、言ってる私もドキドキしてるもの。
……あら、お粥もういいの?
私の心配はいいのよ。今は自分のことだけを考えて?
確かに、私も昨日の夜から何も食べていないけど……
はーい、わかったわ。
(「はい、あーんして」と主人公)
え?食べさせてくれるの?
えへへ……なんだか恥ずかしい……
あーん……はむっ
もぎゅもぎゅ……
うん、おいしい。
さっきちょっとだけ味見したんだけど、その時よりもいい味……
あなたと間接キスしてるから……かな?
うふふ、なぁに?気付いてなかった?
あなたって時々天然さん。そんなところも、大好きよ……
ね……間接キスもいいけど、直接キスもしたい……なぁ?
えぇ~!?ダメなの?
「寝汗でベトベトだから、お風呂に入ってくる」?
うん、わかったわ。
じゃあ私、どうしてたらいい?
私もお着替えした方がいいかしら?
ずっと制服のままだから、しわくちゃになっちゃってる……
……でも、学校から急いで来たから、着替え持ってきてないのよね……
よかったら、お洋服を貸してもらえないかしら。
今日はまだ帰りたくないの……昨日学校で会えなかった分、あなたと一緒に居たいの!
……探してきてくれるのね。ありがと。
(「一緒にお風呂に入ろうか」と主人公)
一緒にお風呂は、まだちょっと恥ずかしい……かな。
(今のは冗談だと告げる)
冗談?もう、からかわないでよぉ……
でもそのうち、そんなスキンシップも普通にできるようになるのよね。きっと。
……それまでに体重落としておかなきゃいけないわね。(小声で)
え?ううん、なんでもないのよ、なんでも。
それじゃ、お風呂いってらっしゃーい。
(部屋から出て行く主人公)
……ふぅ。
(さっきまで主人公が寝ていたベッドに倒れこむ朱音)
あなたのベッド……まだ暖かい……
随分と辛そうだったものね、汗でちょっと湿ってる……
えへへ……あなたの匂い……
すんすん……
んふふ~、これ好きぃ……(徐々にトロっとした声に)
はぁはぁ……脳に直接響いてくる……
枕も……しっとりしてる……
あとで干しておかなきゃね。
(枕にキスを)
ん……ちゅ……ちゅむ……
好き……んちゅ……
こんなこと……私、変態さんっぽいかな……ちゅ……ちゅる……
あなたに変態なんて言えた立場じゃないわね……んふ……んぷ……
でも……んちゅ……あなたの温度と湿度と……ちゅる……匂いが……とっても美味しいの……
ごめんね……こんな変態な女の子で……ごめんね……
ちゅぷ、ちゅる、はぷぅ……んぅ……
なんだか私、ぼーっとしちゃってる……
(掛け布団を頭からかぶる)
ベッドも枕もお布団も……全部あなたの匂いがするんだもの……
こうやって頭からお布団かぶってると、あなたに包まれてるみたいで、夢見心地……
好き……ちゅぷ……好き……はぁ……はぁ……ちゅる……
好き……好き……大好き……んぷ……大好きぃ……!(声を殺した叫び声)
…っ……………(息切れしたような吐息)
……は!!!(ガバッっと布団をあけると、扉のところにいた主人公と目が合う)
あなた……いつからそこにいたの……?
「布団をかぶってもぞもぞしてるあたりから」?
~~~~!!(布団に顔をうずめる)
やぁ!こっちこないで……!
やだよぉ……恥ずかしい……
「私のかっこ悪いとこも恥ずかしいとこも、全部見たい」?
なんだかその言い回し、ちょっといやらしい……
やぁ……顔見ないで……
たぶん真っ赤で、涙目で、みっともない顔してると思うから……
(主人公に、半ば強引に顔を見られる朱音)
あ…………
もう……笑わないでよ……
あなたが悪いのよ……こんな、あなたの匂いでいっぱいの部屋に私一人残して行っちゃうんだもの。
(そのまま主人公に抱きつく)【※正面至近距離】
はぁ……でもやっぱり生のあなたが一番ね。
お風呂上りで暖かくて、シャンプーの香りもする……
すんすん……えへへ……
とっても甘い……甘やかな香りね……
(朱音の髪に顔をうずめる主人公)
あぅ……やぁ……私の匂いなんて嗅がないでよ……
私だってお風呂はいってないのよ?汗臭いわ……
いい匂いがする……?
んみゅ……そこ……首筋はやめて……
くすぐったい……んゃ……
(朱音の首筋に口づけする主人公)
……っ…………ふ…………
……もういいでしょ?満足した?【※正面近距離】
全くあなたってば……こんなの変態だわ……
あ、着替え持ってきてくれたんだ。ありがとう。
「ついでにお風呂も入ってくれば」って?
そう、私も入るだろうってわざわざ沸かしてくれたの……
うん……じゃあお言葉に甘えさせてもらいましょうか。
服は洗濯機に入れておけばいいのね、わかったわ。
じゃ、行きましょ?
「なんで僕まで」って……
だって私、あなたの家に来るの初めてなのよ?
キッチンくらいはわかったけれど、お風呂場は教えてくれなくちゃ、わからないわよ。
……でも、着替えは覗かないでよね?
さっきも言ったけれど、まだ素肌を晒すのは恥ずかしいから……
わかってる?そう……ありがと。
わがままな私のことを理解してくれるとこも、素敵だって思うの。
大好きよ。……大好き。