Chapter17_いっぱいの愛を
■チャプター17:いっぱいの愛を
[3月1日・卒業式の後の夕焼けに染まる教室にて]
(教室の隅のほう、カーテンに隠れてキスをしている二人)
(/キスしながら)
ちゅぷ、んちゅ、ちゅむ、んちゅる……【※正面至近距離】
はぷ、ちゅ、ちゅる、んちゅ、れちゅ、んぷ……
んちゅ、んちゅ、ん、んく、んぷ……ぷはぁ……
卒業……しちゃったね……
「泣いてなかったな」って……
だって、あなたと一緒にこれからを歩めるんだって思うと、別れの悲しさよりも希望の歓びのほうがずっとずっと強いもの……
冷たい人だって思われてないかしら?
「幸せそうな顔をしてたから大丈夫」?
ふふ、そうかしら。
……うん、最初に出会ってから、もうすぐ1年……
恋人同士になってもうすぐ半年……かな?
うふふ、最初はこんな風に、夕暮れの教室で、隠れてキスし合うような仲になるなんて思ってもなかったわ……
思えばあの時、あなたが怪我をしてくれなかったら……あなたと出会うこともなかったかもしれないのよね……
……変な言い方かもしれないけど、怪我してくれてありがとう……
「怪我がなくてもきっと出会えてた」?
運命って言いたいのかしら。
ふふ、結果論ね。でも……ちゅむ、んぷ……私もそう思えるから……不思議……
運命……こんなにお互いにぴったりだって思えるような相手に出会えたのは、運命って言った方が早いのかもしれないわね……
私の……運命の王子様……ちゅぷ……
(キスしながら/)【少し離れる】
ぷぇ……なに?「話がある」?
大事な話?これからのことなのね……
うん、同じ大学に受かってよかったね。
これからはもっともっと一緒に居られる……のよね?
(ポケットから、いびつな形のシルバーリングを取り出す)
ん……?何これ……指輪……?
「正式に婚約を申し込みたい」?
…………!(驚きで言葉を失う様子)
……えへへ、私、嬉しい。
そういえば、最初に結婚したいって言ったのは私だった……
あの時は半分冗談だったのよ?
あなたが私のことを好きって言ってくれなかったから……
ふふ、あの頃のあなたが嘘みたいに、最近は「好き、好き」ってみってくれるようになったわね。
(照れる主人公)
恥ずかしがらなくていいのよ……
私はそんなかわいいあなたも好き……
あ、話が逸れちゃったかしら。
……えっと、実はどういう風に返答すればいいのかって作法、知らないのよね……
だから自己流だけど、許して?
……はい、喜んでお受けします!
「意外と普通」?
べ、別に変わったことをしようとしたわけじゃないんだからいいの!
んふふ……婚約かぁ……
これで私たち、恋人同士から婚約者にレベルアップしたのね……
んふ……素敵……(うっとりと)
あなた……あなた……(夫を呼ぶみたいに)
ううん、呼んでみただけ。
だってもうほとんど夫婦みたいなものでしょう?
だから、なんとなく呼んでみたかったの。
でも、高校の卒業式で婚約だなんて、世間的にみたら早すぎるかしら?
でもいいの……私とあなたなら、きっと大丈夫。
……心配が全くないわけじゃないわ。
だけど、私達なら、きっとなんだって乗り越えていける。
手を繋げば、どこまでも羽ばたけるものでしょ?
えへへ、大好き。だーいすき!
(おもむろに上着を脱ぎ、自らのシャツのボタンを外そうとする主人公)
ふぁ……突然上着を脱いで、どうしたの!?
ダメよ……まだそう言うのは心の準備が……
……え?首筋を指差して……
「婚約成立の記念に」……「飲んでいい」……?
あなた何言って……
「随分前に風邪で寝込んでたときに、飲みたいって言ってるのが聞こえたから」……?
風邪で寝込んでたときって……!
え!?あ、あの時起きてたの!?!?(恥ずかしさから激しく動揺)
うそ……やだ……恥ずかし……
うぅ……あなた、酷いわ……
(「飲まないの?」と主人公)
いや……飲む……飲みます……飲ませてください!
なんかこのやり取り……デジャヴ……
……でも、ここから飲むのは注意しなきゃいけないことがいっぱいあるのよ。
やっぱり大きな血管があるところだから、場所を間違えた大変なことになっちゃう。
それに、量が出るからあなたの意識が遠くなっちゃうかも……
……もう一度聞くけど、本当に……飲んでいいのね?
はぁ……はぁ……
なんだか興奮してきちゃった……
時々舐めさせてくれるけれど、飲むって表現をするくらいに頂くのは初めてだから……
ありがとう。
……じゃ、頂きます……【※首筋付近】
あぐぅ……(歯を突き立てる)
(/首筋を咥えたまま/)
ふぁ……ごめんね、痛かったよね……
大丈夫よ……すぐにその痛みは甘やかなものに変わるわ……(しだいに恍惚状態に)
はぷ、んぷ、んく……(出血量が多く、舐めるというより飲み下す感じで)
しゅごい……いっぱい出てる……ぢゅるる……んく……
こんな量……すごくドキドキしちゃって……んぷ、ぢゅる……私が持たないわよ……
ぴゅぅーって出てるのがわかる……私の口の中、あなたの血の匂いでいっぱい……
匂いや味だけじゃなくって、温度も……ぢゅるる……喉越しも感じるの……ぢゅ、んぐ……
はぁ……はぁ……美味しい……んぐ、んく……美味しいよぉ……!
ふぁ……んぷ、んく、ん……
そうね、この味が私たちの出会いだったのよね……んちゅる、ぢゅぷ……
こんな私を、あなたは受け入れてくれた……んく、んく……
それがどれだけ嬉しかったか……んぢゅるる……んく……
(くしゃくしゃと頭を撫でる主人公)
んぁ……頭撫でちゃ……ゃぁ……
今はすごくドキドキしてるから、あんまり触っちゃ……やだぁ……
(そのまま髪を梳くように撫でる・それに反応する朱音)
んぷ……んく……んちゅ、ちゅるる……んく……
変な声……出ちゃうからぁ……ん……
ちゅる、ちゅ……んく……
や……やぁ……体が……熱いわ……
ぢゅる……ちゅ……んぷ、んぐ……
(耳元で「美味しい?」「好きだよ」などと囁く主人公)
ひゃぁ……らめ……耳元で囁くの……
飲むのに集中……できないわよ……
あ……ひゃん……ぷぁ……(口元から血が少量こぼれる)
ぁう……こぼしちゃった……
ごめんね……制服、汚してしまったわね……
うん、ありがと……もうお腹いっぱいよ……
このまま……ちゅぷ、れる……血が止まるまでこうしててあげるわ……
……ねえ、あなた。なんでこんな無茶なことを……
「私が喜ぶと思って」?
うん、私はとっても嬉しかった。
嬉しかったし、美味しかったし、気持ちよかった。
けど……これはもう封印したほうがいいかなって思うわ。
だってあなた、なんだか顔色悪いわよ?
それに声も震えちゃってる……
こんなに素敵な味わい方だけど、素敵すぎて癖になっちゃうとダメだと思うの。
喉やお腹まで熱いの……これは良すぎて、きっと中毒になっちゃうと思うから……
それに、私のためにあなたが辛い思いをするのは、私にとっても本意じゃない。
だから今度からは、今まで通り指や耳や、もっと目立たないところから、少しだけ、舐めるくらいの量をくれればいいわ。
んぷ、んちゅ、れりゅ……
私にはそれで十分……十分すぎるくらいに愛情を感じるのよ。
ありがと……んぷ、んむ……大好き……
んぅ……そろそろ止まったかな……?
ちょっと舌離してみるね……
(首筋を咥えたまま/)【※位置は変えずに】
んふふ、やっぱりお口で抑えてるとすぐに血が止まっちゃう……
傷口は……これから毎日舐めてあげるわ。
しばらくしたら目立たなくなると思う。
……だけど、痕はずっと残っちゃうのよね……
「見るたびに思い出しそう」?
……もう、バカなこと言わないでよ……
ねぇ、首筋からされるの、あなたはどうだった?
どんな感じだったの?
「頭がふわってして、心地よかった」……
そっか……それって、失血性のものじゃない……わよね?
……えっと、あなたさえ良ければ、またいつか、今みたいにさせて欲しいなぁ……
いいの!?えへへ……
でも、一年に1度とか、そのくらいのペースよ?
それに、今日みたいに急にするんじゃなくて、ちゃんと下準備をして、万全の体調の時にお願いしたいわ。
ふふ、そうね……じゃあ、1年後の今日でいいかしら?
私たちが次のステップに進んだ日。
婚約記念日に、またさせて?
ん、ありがと!
あ……ちょっと垂れてる……れる、れろぉ~、んちゅ……
ふふ、綺麗になった!
(廊下のほうからカツカツと誰かの足音が近づいてくる)
(/小声で)【※正面】
あれ?足音……誰か来る……!?
ちょっと、ほら、シャツのボタンとめて!
こんな姿見られたらさすがに危ないって……!
(小声で/)
(扉を開けて、担任がこちらに気づく)
……あ、先生!
いえ、ちょっといろんな思い出に浸っていたんですよ。
え?血まみれ……ああ!
はい、ちょっと彼、卒業式でテンション上がったのか鼻血出しちゃって……
それで拭いてあげてたんですよー
あは、あはは……
はい、もうそろそろ帰ろうと思います。
ここで過ごすのも最後なんだなぁって思うと、なんだか不思議な気分です。
ええ、先生もお元気で。