Chapter2:新(婚)生活初日
■Chapter2:新(婚)生活初日
[4月頭、学校の近くにある1DKの学生向け賃貸マンション]
えっと、こういう時ってどう言えば正解なのかしら……
ただいまっていうのは違う気がするけれど、もう私達の部屋なんだからお邪魔しますっていうのも違う……わよね?
え?「よろしく」って言うの?
うふふ、なんだかそれ、かわいい。
そうね、今日から暫くの間住まわせてもらうわけだし、そういうのもありかも知れないわね。
それじゃ、入りましょ?
(部屋に入るふたり)
こんにちは。今日からここに住む者です。
暫くの間、よろしくお願いします。
……ちょっと、あなた何笑ってるの……?
「まさか本当に言うなんて」って……
~~~!
あなた、私をからかったのね?
んもう……酷いわよぉ……
……全く、恥ずかしい……
むぅ…………
ほら、早く上がりましょう?
いつまでも玄関に立ってても仕方ないわよ。
[部屋の中へ入っていくふたり]
「予算内で」って決めたとはいえ、なかなかいい部屋よね、ここ。
1DKだけどお部屋も広いし、お風呂とトイレは別だし、
特にキッチンが広めなのが、私の中では決め手になったの。
だってあなたの為に、美味しい料理を作ってあげたいもの。
(ガスコンロに火を入れようとする朱音)
あれ?
うーん……もしかして、ガスってまだ止まってるのかしら?
確かどこかに案内の紙があったわよね……
(主人公、紙を見つける)
あ、そうそうそれそれ。
あ~~……ガスの開栓、明日って書いてあるわね……
うーん…………
ま、今日は越してきたばっかりだし、ご飯はどこかお外に食べに行きましょうか。
この辺りにどんなお店があるのか、あとで散歩がてら一緒に見に行きましょ?
あ……ガスが止まってるということは、お風呂も沸かせない……わね。
近くに銭湯とかってあるのかしら?
駅からここまでの間には見かけなかったけれど、学生街みたいな感じのようだし、きっとあるわよ。
……と言うか、あってくれないと困ってしまうわ。
ここに来るまでにちょっと汗をかいてしまったし、そんな体であなたと触れ合うのは気が引けるから……ね。
[近所の銭湯から出てくる朱音]
おまたせ、あなた。
ごめんね?髪を乾かすのに時間がかかっちゃって……
家の中ならまだしも、髪が濡れたまま外を歩くのはちょっと……
(朱音、主人公に寄り添う)
あれ?あなた、お風呂上がりなのに体、冷たいわね……
あ……もしかして私、待たせちゃってたのかしら……
うう……ごめんなさい……
(朱音を抱きしめる主人公)
あ……
…………
「私が暖かいからそれでいい」って?
そんな人を湯たんぽみたいに言わないで欲しいわ……
ん……私、暖かいかしら?
髪を乾かしてる間に冷えちゃったと思ったのだけど……
そうね、今日は少し寒いから、待ってる間にあなたのほうが冷えてしまったのね。
……そうなったのは私のせいなのだし、思う存分抱きしめてもらっていいわよ。
(朱音の髪に顔を沈める主人公)
ひゃぅ……!(ゾクッとする朱音)
……ふぇ?「いい匂いがする」?
ぁ……そんな風に……私の髪……嗅いじゃ……嫌ぁ……
んぅ……こんな道の真ん中で……もう……
これから学校で顔を合わせる人もいるかもしれないのに、その人の私達への最初の印象が『道端で抱き合うようなバカップル』だったら恥ずかしいわ……
(主「嫌ならやめるけど」)
あ……いえ、抱きしめられるのは嫌じゃないの。
ただ、ちょっと変な声が出ちゃうから、それが恥ずかしくって……
私、最近気づいたのだけれど、あなたがいつもわたしの髪を愛してくれているからかしら?
あなたがわたしの髪に触れるだけで……なんていうか、幸せな気持ちでいっぱいになってしまうの。
だから……あまり人前で髪に触れないで欲しいなって……思う。
恥ずかしい声だから、あなた以外には聞いてほしくないわ……
ん……ごめんね……?
その分、誰も見てないとこではいっぱい愛してくれていいから……
うぅ……なんだかこんなこと、口に出して言うの恥ずかしいわね……
本当はあなたには私の事、無制限に愛して欲しいって思ってるの。
私もあなたのこと、いつでもどこでも愛したいもの。
でもね?さっきみたいにされると、わたしの中のあなたへの好きがどんどん大きくなって、
……ん、ちゅ、ちゅむ……(唇を奪う)
って、どうにか発散させないと変になっちゃいそうで……
人が見てる前でこんなこと、さすがにあなたも困ってしまうでしょう?
うん、わかってくれたならいいの。
「じゃあ今は誰も見てないからいいよね」って……
いや、あの、そういうことじゃなくって……
あなた、私をからかってるでしょ……?
(主「バレた?」)
わかるわよ。
その目、私をいじって喜んでる時の目だもの。
んもう…………バーカ。
……えっと、このまま晩御飯食べに行く?
それとも一度家に戻るのかしら。
(主「このまま行こうか」)
そうね、せっかく温まったんだもの。
冷えてしまう前になにか食べたほうがいいわよね。
あなたはなにが食べたい?
……と言っても、まずはどんなお店があるのかを調べないと、だったっけ。
美味しいお店、あるといいわね。
[1時間後、ご飯を食べて帰宅するふたり]
ただいま~
あの洋食屋さん、美味しかったぁv
やっぱりこういう街には安くて美味しいお店がいっぱいあるみたい。
学生の味方!って感じで、私達、もう来週から大学生なんだなぁって実感が湧くわ。
私、去年まではあんな感じだったし、特に親しいお友だちがいたわけでもなかったから、
今日みたいに所謂学生向けのお店みたいな所に入るのってちょっと憧れてたの。
一緒に行く相手がお友達じゃなくって、もっともっと大切な人っていうのは予想外だったけれど。
【徐々に至近距離まで】
銭湯だって初めてだったのよ?今日は人が少なかったからまだ良かったけど、結構恥ずかしかったんだから。
家にいた頃には絶対に体験できなかったこと。
あなたと出会わなければ、味わうことのできなかったこと。
今日ここに来てようやく気付いたけれど、あなたは私をあの暗闇から救い出してくれたのよね。
ありがとう。
……あなたと出会えて……よかった。
うふふ、面白いわね。
あなたとの出会いはたった一度。
その一度きりの出来事に、いろんな事で、何度も感謝をしてる。
これからも、また新たに感謝することはあるでしょうね。
だったら私はその度にありがとうって言うわ。
『ありがとう』、『好き』、そんな気持ちを伝える言葉は何度言っても言われても、悪いものじゃないものね。
大好きよ、あなた。
大好き、大好き……
ん、ちゅ、ちゅる、ん、んぅ、ぷちゅ……(キスを交わす)
……えへへ。
……そういえば、そろそろ気付いたかも知れないけれど、まだ届いてない荷物がいろいろあるのよね。
お洋服や本なんかは届いてるんだけど、今一番必要な寝具がなくって。
やっぱり個別に送らないで、ちゃんと引越し業者に頼むべきだったかしら……
(少し離れた所から毛布を持ってくる朱音)
【右側中距離から正面近距離】
幸い毛布が1枚だけあるのだけれど……あなた、これで足りるかしら?
(主「君はどうするんだ」)
私?私はいいのよ。
前にも言ったとおり、風邪とかを引きにくい体質だから。
でも、あなたは違うでしょう?
だからこれはあなたが使って。
今日は冷えるから、少しだけでも暖かくしないとね。
(毛布を朱音にかける主人公)
ふぇ?毛布はあなたが使ってって言ったでしょ?
私は大丈夫だから……
あ……(そのまま抱きしめられる朱音)
……んもう……また私を湯たんぽにするの?
うん、いいわよ。
あなたがそれを望むのなら、私は。
それに……あなたにぎゅって抱きしめられるの、好きだもの。
少し寒いこんな夜でも、心も体もポカポカになれる。
あなたと一緒なら、乗り越えられないものはないの。
……もう、寝ちゃうの?
あはは……うとうとしちゃってるわね、あなた。
今日は大変だったから、疲れちゃったのかしら?
それとも、お腹いっぱいで眠くなっちゃった?
でも、座ったまま眠ると、体が痛くなってしまうわ。
ほら、寝転がって……
あ……私もあなたの方を向きたい……
えへへ……私からもぎゅってしちゃお……
(囁き声)
好き……大好き……愛してるわ……
この位置……あなたの胸の鼓動が伝わってくる……
眠らないといけないのに……私までドキドキしてしまって、眠れなくなりそうだわ……
やっぱりちゃんとしたベッドが必要かしらね……
一応敷布団はこっちに送っているのだけれど、必要だったら買いに行きましょうか。
他にもこの部屋には足りないものがいっぱいね。
最低限の家電はあるけれど、食器や本棚……
今日みたいに寒い日のために暖房器具もあった方がいいし、これからの季節には扇風機なんかも必要よね。
まだこの部屋には生活感が足りないわ。
部屋中に転がってるダンボールも早く片付けて、この家をもっと私達の色に染めてしまわなきゃ。
少なくとも、こんなふうに寄り添って寝なきゃいけない状況はどうにかしたいものだわ。
悪いものじゃない……むしろとってもいいことだと思うけれど……
きっとこんな毎日が続くと、そのうち睡眠不足になってしまうわ。
大好きな……大好きなあなたとこんなに密着してたら、いろいろと抑えられなくなってしまいそうだし……ね。
あら?あなた、もう寝ちゃったのかしら?
もう……私の気も知らないで、のんきな人。
そんなあなたも……んちゅ……(頬にキス)
大好きなのよ……
それじゃ、私も眠ろうかしら。
………………
………………
………………
やっぱり眠れない……
うーん……あなたの方を向き直したのはやっぱり失敗だったかしら……
だってこんな近くにあなたの顔があって、なにもしたくならないほど私は年をとってはいないわ……
ちゅ、ん、ちゅる、んぷ、ちゅる、れちゅ……
ただでさえ好き過ぎてどうにかなっちゃいそうなのにこんな距離……
寝てるとこにキスしちゃうなんて、私、卑怯よね。
でも、先に眠っちゃったあなたも悪いんだから。
……もう。涎垂れてる……
れる、れちゅ……
ちゅ、んむ、はむ、ぁぷ、ちゅ……
…………うぅ……またキスしちゃった……
『据え膳食わぬは…』っていうものね……
だけど……ダメ。無限ループだわ、このままじゃ。
…………そうだ、いいこと考えた。
ちょっとだけ下に行けば……
(正面至近距離少し下)
うふふ……あなたの胸……
大好きな人の胸に顔をうずめて眠れるなんて、私って幸せものね。
……あなたと一緒に居られれば、私は幸せ。
お世辞でも何でもなく、冗談抜きでそう思えるから、不思議。
それだけあなたのことを愛しているの。
本当に、運命なんでしょうね。
私はこうやってあなたの胸に……収まるために生まれてきたのよ。
んふふ……幸せ。
暖かくて……大好きで……心地よくて……幸せで……
もう言葉じゃ表現できないわ……こんな気持ち……
………………
…………好きよ、あなた。
(以下寝息)
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