Chapter4:あなたが欲しい
■Chapter4:あなたが欲しい
[5月中旬、週末の夜中の2時頃、所属しているサークル(文化系)の新歓帰りの朱音]
(ゆっくりと家の扉を開ける朱音と、ソファで横になってる主人公)
あ……あなた……
うん……ただいま……
え……?「元気がない」……?
そう……かしら。
(主「新歓でなにかあった?」)
うん……たしかに今日はサークルの新歓で食事会だったけれど……
……私は……いつもどおり……よ?
ん…………
えっと……えっとね…………
………………
(朱音、主人公の座っているソファに近づく)
…………!(主人公を軽く突き飛ばし、ソファーの上に倒す)
(倒した主人公を押し倒すように覆いかぶさり、耳元で)
(/息荒らげに、絞りだすようなか細い声で/)
私ね……私……
あなたが……欲しい…………
……意味くらい……わかるでしょ?
このまま……私……あなたと一つになりたい……
あなたが欲しいの…………あなたと……したい……
もう心の準備は……できてるわ。
ね……?いいでしょう?
ん……ちゅ、ちゅる……んぷ……
(耳にキスをする朱音を抑える主人公)
んぁ……やぁ……
なんで……抵抗するの……?
私の事……好きなのでしょう?
私の事……愛していてくれてる……のよね?
だったら……お願い……
私……あなたのものになりたい……
本当に愛されてる……証拠が……欲しいの……!
ねえ……あなた……
好きなのなら……愛しているのなら……いいでしょう?
もっと好きになるために……もっと愛するために……
私達……繋がりましょうよ……
(主人公のシャツに手をかける朱音)
あなた……あなたぁ…………!
(擦り寄る朱音を落ち着けるために頬を軽くはたく)
…………ぇ…………
あなた……私の事……ぶったの……?
今……私に手を上げた……の?
なんで……?なんでそんなこと……?
やっぱり……本当はあなた、私の事、愛してないんでしょ?
だから……だから今、私を拒絶したんでしょ?
(主「ひとまず落ち着こう」)
私は冷静よ?(全然そんなことはない)
冷静だからこそ、あなたと恋人同士であることを……愛し合っていることを確認するために……
…………なのに……なのに……!
……うぇ……うぇぇん…!
[数分間泣き続けた後]
(泣きじゃくりながら、時々しゃくりあげたり)
なぜなの?私達、恋人同士なのよね?愛し合ってるカップルなのよね?
結婚しようって誓い合ったのに……なぜ……
なぜ私のことを抱いてくれないの……?
学校で他に好きな人ができたの?それとも私の事にもう飽きてしまったの?
それとも…………私が……私が吸血鬼……だから……なの?(言葉に出すことすらも躊躇うように)
「違う」?
違うなら……私を受け入れて……
愛してるって囁きながら、私と一つになって……
(ひとまず落ち着かせようと、自分の腕に爪を立て出血させる主人公)
……あなた……!
あなた……なにをしているの……?
私はそんなことを望んでいるわけじゃないわ……
私は……私はただ…………んぐぅ!(傷口を朱音の口元に押し付ける)
んやぁ……こんなの……ダメ……!
ん……んぅ……んちゅ、ちゅ、ちゅぷ……
(腕を舐めながら/)
(時々鼻をすすったり、泣いている素振り/)
どういうことなの……あなた……
私はただ……普通の女の子として……
普通の男の子がするように……愛して欲しいだけなのに……
こんなの…………こんなの…………あぐ!(朱音、主人公の腕に噛み付く)
(/腕を舐めながら)
(腕に噛み付いたまま、血を啜りながら)
こんなのずるい……ずるいわ……
わたしためにあなたが自分を傷つけるのはダメだって……言ったのに……
う……うぅ…………
これじゃ……私が全部悪いみたいじゃない……
私が……私が普通じゃないから……
私が吸血鬼だから、あなたと一つになれないみたいじゃない……!
あぐ、う……んちゅ……
吸血鬼の女の子としてじゃなくって……
一人の人間として……
一人の女の子として……愛して欲しいだけなのに…………
んぐ、ん、ぷぇ……はぐ、んく……
う、んちゅ、ちゅ、ぁく……ちゅ、じゅる……
こんな……こんな扱い……んぅ、ぷ……
辛い……辛いよぉ……!
はぐ、んく……
……もう、全然わけが分からない……
あなたの腕を噛んでるだけなのに……こんなにもあなたの愛情が伝わってくる……
舌も、口も、お腹も、胸も、頭の中も……あなたの愛で……熱い……
私をそれだけ愛してくれているのに……
なのに……なのになぜ私を……ちゅる、んく……
私を抱いて……くれないの……
だって……だってこんな風に自分を傷つけてまで……
おかしいわ……
あなた……痛くないの?
こんな風に……あぐ……噛み付いているのよ?
こんなに血も出てる……のに…………
(ここらから少しずつ正気に戻り始める)
ねぇ……おかしいわよ……あなた……
少しだけ血を貰ったり、首筋から貰うのよりもずっと……ずっと痛いでしょう?
なぜそこまでして……私を遠ざけようとするの……?
私だったら……きっとあなたをとっても心地よくしてあげられるのに……
痛いのよりも……そっちのほうがいいはず……よね?
こんなことしないで……私を…………抱いてくれれば……
うぅ…………
(/腕に噛み付いたまま、血を啜りながら)
(/泣きじゃくりながら、時々しゃくりあげたり)
(朱音が少し落ち着いたのを見計らって抱きしめる主人公)
あ……ゃ……だめ……
そんなふうに抱きしめないで……
あなたことを信用できなかった私に……そんなに優しくしないで……
……うぐぅ……んぅ…………
ごめんね…………私…………
ごめん…………本当に…………ごめんなさい…………
うぐ…………ぐすん………………
………………ん…………
(落ち着きを取り戻した朱音)
(涙ぐんだ感じの話し方/)
私ね……怖かったの……
学校でいろんな人と仲良くなって、お友達も何人かできて……
でね?私達の話を……あなたがどれだけ素敵かということをお話する機会があって……
「惚気」?まあ、そうなるの……かしら?
当然他の子にもそれぞれ付き合ってる彼氏がいたりいなかったりするのだけれど……
私達の関係は……その……
「綺麗すぎる」って……言われたの。
他の子達が「何人と付き合ってきた」だとか「どれだけの経験があるのか」なんて話に花を咲かせてる時に、
「私はまだそういうことはしたことがない」って言ったら、「それは絶対におかしい」って……
思春期の男の子は彼女が一緒にいると……その……
「我慢ができないものだ」って……みんなはそう言ってた。
その時に、わたしは少しだけ……ほんの少しだけよ?
あなたのことを疑ってしまったの。
………………
でも……でもさっきのあなたを見て、それは間違いだって思い知らされたわ。
だってこんなにボロボロになってまで、わたしを止めようとしてくれた。
あれは拒絶なんかじゃない……
わたしの為を思っての行動だって……嫌っていうくらいに伝わってきたの。
あぁ、私はなんてバカなことをしてしまったんだろうって……今、すごく後悔してる……
ごめんなさい……本当に……本当に…………
許してくれ、なんて言えないわ。
だってあなたの腕……(主人公の腕を見る)
ほら……こんなに酷いことに……
私……なんてことを……
さすがに……呆れたかしら?
私の事……嫌いに……
んぅ……!(もう黙れとばかりに唇を奪う主人公)
ん、ちゅ、ちゅる、んぷ、れりゅ、ちゅ……
んぁ……やぁ……こんなの……ダメだわ……
れりゅ、りゅぷ、ちゅ……だって……あなたの血で、汚して……ちゅ、んぷ……しまうわよ……
はぷ、ちゅ、れりゅ、ちゅ、ちゅぷ…………ぷはぁ……
はぁ……はぁ……はぁ…………
……ほら、あなたの服も顔も、血まみれじゃない……
……ありがとう。
やっぱり、あなたでよかった。
あなたじゃなければ、私を抑えることも、許すことも、できなかったんじゃないかしら。
あなたが私のことを、本当に、本当に大切にしてくれているから……
……心の底から愛してくれているから……
………………
(/涙ぐんだ感じの話し方)
……えへへ、ありがと。
私、ちょっと変だったわよね。
あなたと私、どう考えても普通の関係なんかじゃないのに、
普通のカップルの恋愛事情なんかに感化されるなんて……
十分わかってたはずなのに……ね。
きっと私、疲れてたんだわ。
生活環境が変わって、毎日が幸せでいっぱいだけれど、まだ慣れきってはいなかったみたい。
でも、もう惑わされることはないわ。
だって、こんなにかっこ悪い私を見ても、こんなにあなたを傷だらけにしてしまっても、あなたは私を愛してくれている。
それを知ったのだから、もう私に怖いものはないわ。
……腕……痛い……わよね?
(腕の傷を舐めながら/)
んちゅ……れる、れりゅ……
いつもみたいに……れぷ、んちゅ……血が止まるまで舐めててあげるね……
ちゅ、れりゅ……ごめんね……錯乱してたとは言え……んぷ……こんなにしちゃって……
ちゃんと指は動く?しびれるような感覚はない?
れる、んぷぅ……そう、神経は大丈夫みたいね……ちゅる……よかった…………
まだ……じゅる、ちゅ……血が止まらない……れる、ちゅぷ……
ねぇ……んぁ、んりゅ……もし良かったらでいいんだけど……あなたの考えを……ちゅぷ……聞かせて欲しいなって……
(主「まだ大学生なんだし焦ることはない。それに、そういうことはその場のノリや勢いでするべきことじゃない」)
(主「予期していない事態になった時に一番大変なのは君なんだから、そんな状況を作ってしまうのは耐えられない」)
んぷ、ちゅる……れりゅ……じゅるる、ちゅ……ん、ぅふ……ん……れる……(舐めながら頷く感じ)
そう……貞操観念だけじゃなくって、わたしのことまでしっかり考えてくれていたのね……
なのに……ちゅ、れりゅ……私がそれを疎かにしてしまって……
本当に……どうお詫びをすればいいのか……わからないわ……ん、ぷちゅ……
ごめんね…………りゅ、ちゅる…………
…………ありがとう。
……ちゅ、ぁぷ、れる、れりゅりゅ……ちゅ、んぷ…………
……れぷ、ん、ぁぷ……ちゅる、んりゅ…………ぷは…………
はぁ……はぁ……
…………酷い出血は収まった……かしら。
垂れてるとこも……れりゅ、れぇろ、れる、んちゅ……
(/腕の傷を舐めながら)
……ふぅ。
…………ねえ、あなた?
これから私達の間に、いろんな問題が起こったり、今日みたいに揺らいでしまうことがあるかも知れない。
だけど私は、どんなことがあってもあなたを、あなたの私への愛を信じているわ。
だから、もしまた私が道を見失ってしまった時は、また思い出させて欲しい。
自分勝手なお願いごとで申し訳ないけれど、頼んでもいいかしら?
(頷く主人公)
えへへ……ありがとう。
それと……何か償いを、って言う訳じゃないけれど、約束させて欲しいの。
いつかする結婚の、その日までは……
お互いに清い体でいましょう、って。
うん……指切り。
(指切りをするふたり)
うふふ……こんな血まみれの指切りなんて、他の誰もしないと思うわ。
特別な……他の誰とも違う私達だから出来る、特別なことだって、そう言ってもいいのかしら。
………………
……あなたの服、また汚してしまったわね。
あぁ……わたしの服も真っ赤…………
赤い服のペアルック……だとか言ったら怒られちゃうわね。
せっかくあなたが好きって言ってくれた服だったのに、勿体無いわ。
今度はこのソファみたいに、血が付いても目立たない色のお洋服を選んだ方がいいかしら。
って、あ……
このソファ……血が付いてるとこ、黒くなるから目立っちゃてるじゃない…………
……ソファにも、あなたの血の匂いが染み付いちゃったわね。
あなたにはわかるかしら?
今、この部屋じゅうにあなたの匂いが満ちているの。
それに、あんなに血を飲んじゃって……わたしの息も、あなたの匂いがする……
すぅ~って、息を吸えばあなたから、部屋からの香りが……
ふ~って息を吐けば……私の中からあなたの香匂い……
あなたの血で濡れた服を着て、あなたの息遣いを感じて、あなたの匂いに包まれて……
本当に今の私は、持てる感覚の全てであなたを、あなたの愛を感じているの。
あんなに酷いことをした私なのに……それでもあなたは私を愛してくれる。
あなた……ずるいわ。
そんなに愛されてしまったら……私だって、もっともっと愛さなきゃいけないじゃない……
全身全霊で愛してもまだまだ足りない……そんな気持ちを覚えてしまうくらいに……
あなたからの愛が……嬉しい……
(キスしながら/)
ん……ちゅ、ちゅる……あなたの血の味のキス……
以前、あなたが私のために自分の舌を噛んだ時以来の味……れりゅ、ちゅ、んむ……
……またあなたにこの味を味わわせることになるなんて……
自分の血の味なんて、全然美味しくないでしょう?
「わたしの味と混ざって、これはこれでいい」……?
それはどういたしまして……と言うべき、なのかしら?
でも……やっぱりあなたの血って不思議……
あんなにぐちゃぐちゃになってた私を正気に戻してくれたり……
今だって……さっきの事、申し訳なくってすごく後悔してるはずなのに……
とっても落ち着いた気分になってる……
ごめんね……こんな女の子で……こんな変態な女の子で……
ちゅ、んちゅ、れりゅ、んぅ、んぷ……
ちゅる、ちゅ……好き……んぷ、ちゅ……大好き……
んぷ…………ぷはぁ…………
(/キスしながら)
はぁ……
……ありがと。……もう、大丈夫。
………………
……やっぱり、そんなに簡単に血、止まらないわね……
こんなにめちゃくちゃにしちゃって……私……本当にどうかしてた……
ちゅ、れりゅ……
あ、もしかして傷口舐めちゃうと痛いかしら?
「痛いけど、優しくて気持ちいい」……
優しくなんか……ないのに……
んりゅ、れぷ、ちゅ、れぇろ、れろ……
こんなにひどい傷跡……学校で「どうしたの?」って心配させちゃうわよね……
「犬に噛まれたことにする」?
なんだかそれ、私のことを犬って言ってない?
ううん、いいの。
私のことをかばってくれてるのよね?
だったら……私は何も言うことはないわ。
それに私だって、たまにあなたのことをペットみたいだなぁって思うことあるもの。
……別に変な意味で言ってるわけじゃないわ。
私が何をやってもその素敵な声で慰め、癒してくれる。
昔家で犬を飼っていたことがあったのだけれど、あの子もそうやって落ち込んだ私を癒してくれる事があったの。
人とペットの関係だって、私達みたいな関係だって、あまり相違のないものなのかもしれないわ。
だって……家族、なんですもの。
……話がそれてしまったわね。
………………
ごめんなさい。
こんな風に言っても、あなたの傷が消えてなくなるわけじゃないのにね……
今まで何度もあなたの血を頂いてきたけれど、場所によっては痕がしっかり残ってしまってる。
最初……あなたの血の存在に浮かれて後先考えないで、あなたのことを省みないで残してしまった指の傷跡……
それにこの間……卒業式の後、教室で首筋から貰ったところも……
……え?
「これは傷じゃなくて、絆の証」?
うふふ、なぁにそれ。
………………
でも、嬉しい。
あなたは、私の勝手でつけてしまった傷跡ですらも愛してくれているのね。
本当にしょうがない人。
そんなに私を愛して、どうするつもり?
既にあなたのことで、あなたからの愛でいっぱいの私を、破裂でもさせるつもりなのかしら?
…………大好き。
……ごめんね?こんな夜遅くに帰ってきて、こんなこと……
もう外、ほんのり明るくなってるみたい。
そういえばあなた、なんであんな時間まで起きていたの?
遅くなるって予め言ってたのだから、先に寝ててくれても……
(主「そしたらおかえりって言ってあげる人がいなくなるから」)
……そう、私が帰ってくるのを待っててくれたのね。
なによ、あなたのほうが犬みたいじゃない……
え?いいえ、なんでもないわ。
腕……もう大丈夫?
そうだ、消毒を……
(朱音を抱きしめる主人公)
ふぇ?どうしたの、急に抱きしめて……
「眠くなってきた」?
だめよ……腕の傷、放って置いたらまた悪くなっちゃうわ。
「大丈夫」じゃ……もう……
……私のためにずっと起きて待っててくれていたのよね。
眠くても仕方ないわ。
【正面近距離】
うん、じゃあ今日はこのまま寝ちゃいましょうか。
私も一緒に、眠ってもいいかしら?
(頷く主人公)
うふふ、ありがと。
(ソファに深く座り、身体を傾けるふたり)
………………
………………
………………
ねぇ、あなた……
いつもいつも、わがままな私を見捨てないで相手してくれるのはとっても嬉しいんだけど、
時々はあなたもわがまま、言ってもいいのよ?
「じゃあぎゅってしてて」って……
もう、そういうことを言ってるんじゃないのに……
いいわよ……ほら。
ぎゅっ……って。
………………
私が帰ってきたら一緒に寝ようと思っていたのよね、きっと。
眠たい中で、それでもあんな状態の私を宥めてくれた。
私、あなたに無理をさせてしまってるわよね……
(朱音の頭を撫でる主人公)
ぁぅ……ん……
そんな撫で方……優しすぎる……
「無理なんかしてない」?嘘……
「好きでやってることだから」って言われても……
……うふふ……なるほどね。
こんな私でも……いえ、こんな私だからこそ、あなたは私を愛してくれているのだったわね。
でも気にするなって言われても、そんなの無理。
大好きなあなたが辛そうな顔をするの、一瞬だって見たくないもの。
さっきの……あなたが自分の腕に爪を立てた瞬間だって、私があなたの腕に噛み付いてる時だって、
とっても苦しそうな表情を浮かべてた……
私のために……ごめんなさい……
でも……でもね?
あなたがそこまで私のことを想っていてくれているからこそ、
私はあのまま、あなたを傷つけてしまわずに済んだのだと思うの。
もう何度目だっていう話かもしれないけれど、私、あなたと一緒でよかった。
あなたと出逢えて、よかった。
……あれ、もしかしてもう眠ってしまってるのかしら?
うふふ……おやすみなさい……あなた。
明日、起きたらちゃんと傷口の処置、してあげるわ。
私も泣き疲れちゃったし、今はこのまま……
あなたをぎゅっと抱きしめたまま……眠らせて……ね……
ぅん…………ん…………
んふ…………くぅ…………
すぅ……………………