Track 3

ひよせんせーのお手玉教室(ハンドリフレ)

;9 「♪ 新町通りの おみかん屋    おみかん一貫 いく――ありゃ」 :環境音  囲炉裏 F.I 「あいやん、あんがいぶきっちょさんやなー。 ほんならな? ひよな? もっかい、おてだまのコツ、おしえたげるな?」 「あんな? おてだまはな? おてだまがぽーんとお空にういとる時間を、なるたけぜぇんぶおんなじにすると、やりやすいのし」 「せやさけ、左手から右手に送って、右手でぽぉんてお空にほるやりかたのお手玉は、実はえらいむつかしいのし」 「でなくて、右手と左手でじゅんぐりにぽおんぽおんて高くほおって、 逆の手でそれをじゅんぐりにつかまえて。 またじゅんぐりにほおてくほおが、見た目はややこしけど、ずっとずうっとやりやすいのし」 「な、あいやん。こまではええ? ひよのいうこと、わかってくれた? ……(呼吸音)…… えへへー、ちゃーんとわかってくれとるねー。さすがあいやん。うれしいなぁ」 「ほんならな? 2個からもっかい、やりなおしてみよ?」 「♪ 新町通りの おみかん屋    おみかん一貫 いくらです 五百――ありゃ」 「わえやなぁ。どしてもポロって、とりこぼしてしまうなぁ」 「……ひょっとしたらあいやん、つかれてとるんとちゃうん? な、な? あいやん。右の手ぇ貸して? 右の手ぇ」 ;2 「ん――っと―― わわ! 二の腕のお肉ガッチガッチやんなぁ。 こないになっとって、痛いことない? ひゃっ!?」 「はふぅって、今の声…… ツボをおしたん、えらい効いたん?」 「ふんふん……(呼吸音)……はぁはぁ。 なるほどなー。 ほんならあいやん、手と肩に、つかれがたまってしもとるんやなー」 「ほんならな? ひよな? あいやんのつかれ―― えへへ、ほぐしてあげるのし。 まずは肩たたきしたげるからな? あいやん、ひよに、おせなむけて? おせな」 < SE ガサゴソ動く > ;5 「んふふー、あいやん、ひよよりずーっとおっきなおっきな背中やなぁ。 ひよのこと、さんびきくらいおんぶできそな大きさやのし」 「ほんならな? お肩たたくな? んーー(呼吸音)――<肩叩き音>―― どおお? あいやん? え? 『もっと強く?』 ええよー、ほんならなー」 「んしょっ――<肩叩き音強>―― ん~~っ――<肩叩き音強>―― こらしょ~っ――<肩叩き音強>――」 「はぁ……はぁ……はぁ…… これなら効いた? あー、ええあんばいならよかったのし~」 「けどな? ひよな? これ、えらいつかれるのし。 せやさけ、やっぱり肩叩きよして、ツボ押しするな?」 ;2 「まずは右手の……ここ――ん~~~っ」 「んふふっ、効いとるねー。 ふはーって声、いた気持ちよさそうで、 ひよもなーんや、『やったー』いう感じするよし」 「もっかい――んっ……(呼吸音)―― ん――(呼吸音)――え? あ、ええよ? ひよに聞きたいことなら、なんでも聞いてくれてかまわんのし」 「うん……(呼吸音)――んっ――呼吸音――。 あー、『三匹くらいおんぶできそー』ゆうたんは、 ただのたとえばなしやのし――っと」 「あいやん、息がおちついてきたなぁ。 ほんなら、右手の手三里(てさんり)はもうええねー。 こんどは、な? 左手かして? 左手」 ;8 「えへへ。ほんなら、こっちも――んっ――(呼吸音) ――んんっ――(呼吸音)―― ああ、あいやん、まっことえらいつかれためとるんねぇ」 「手三里のツボはな? ん……(呼吸音)―― 特に胃腸がつかれてるときによぉ効くツボやのし。 え? (呼吸音)――ああ、そらそうやねぇ」 「旅の疲れは、確かに手足と胃腸にきそう…… ん――(呼吸音)――やし―― 念入りに――(呼吸音)――ツボ押し、したげんと―― ん――(呼吸音)――なぁ」 「あ。うん。そうそう、話の続きな? ん――(呼吸音)―― 三匹は、単なるたとえばなしで――んっ、(呼吸音)―― 仲間とか家族と、一緒にくらしとるとか、ないのし」 「ん――(呼吸音)――と、ここはこれでよさそうやのし。 ほんなら、今度はこのまま手首の付け根の―― 養老(ようろう)のツボ、ほぐそーな? んっ――(呼吸音)――」 「あははー、効いとる。やっぱりここも効いとるねー。 ここはな? ん……(呼吸音)――肩と腕のつかれとな? んっ……(呼吸音)―― あとな? おめめのつかれにも、よー効くツボやのし」 「ん……(呼吸音)――ゆーかな? もともと―― んっ……(呼吸音)――ひよ……送り雀には―― (呼吸音)――家族も、なかまも、おらへんやのし」 「送り雀は――ん――(呼吸音)――あ、 養老ももうよさそうやのし。 ほんなら、また右手にもどらしてなぁ?」 ;2 「ん……と、右手の養老――あ、ここやのし―― ん――(呼吸音)――ああ。うん。さっきのつづき」 「送り雀は、人を守るために産み出された―― んっ――(呼吸音)―― 人の願いの結晶みたいな、そんなあやかしなんやって。 ん――(呼吸音)―― ものべののカミさんが、ひよにそー、おしえてくれたのし」 「え? なにからって…… ふふっ――ん――(呼吸音)―― そらそうやなぁ。あいやんがもし知っとたら、 ひよも、ここにおらんかもしてんしなー」 「あんな? ん……(呼吸音)―― ひよはな?――(呼吸音)―― “送り狼”いうあやかしから、人を守るために産み出されたあやかしやのし」 「ほへ? ちゃうちゃう、そんなんとまるでちゃうよー ん――(呼吸音)―― 『お酒を飲ませて酔っ払っったおなごはんを家まで送る』 なぁんてあやかし、ひよな? んっ――(呼吸音)―― 見たことも聞いたこともあれへん――よしっ!」 「えへへー、ほんなら、しあげに手のひらのツボおしたげるよし。 んっ――しょっ」 :1 「ほんならな? あいやん、両手一緒に、ひよにまるっとあずけてな?」 「手のひらってな? ひっつけおーてるだけでもつかれ、 やわらこーなるのし。 せやさけ――ん……(呼吸)―― まずはこーして、ひよが両手で、 あいやんの両手、つつんだげるのし」 「けど……(呼吸音)――あいやん、おてておっきいなぁ。 ちとの手ぇやと、だいぶんはみ出しちゃうよのし」 「ほんなら、な? 両手とも、指と指の間をいっぱいにひらいて、ひよに手のひらむけてなぁ?」 「ん――そー。そうしたら――<手が重なり、こすれあう> えへへ――ええ塩梅やなのし――ん……(呼吸音)――」 「ゆびとゆび、こないにいれちがいにしたら―― ん……(呼吸音)―― てぇちいそーても、指の間を――<てこすり>―― こしこし、ほぐしてあげられるのし」 「ん……<手擦り>――ふっ――(呼吸音)―― ああ、そう――送り狼のはなしやったなぁ」 「送り狼はな? こわぁいあやかし。 夜道で音もたてんとひっそり、 歩いてる人間のあとをつけて、そうして――(呼吸音)」 「がぶーーって! 噛み付いてまるごと食べてしまうあやかし。 え? 食べられた人間? そんなん、死(い)んでまうにきまっとるよし」 「あ――あいやん、手、ちょこっと冷えたなぁ。 固くなってしもたのし。 せっかくほぐしちょったんにー」 「ほんなら……ん…… えいっ――(呼吸音)――あはは、やっぱり効いとるのし」 「ここな? 合谷(ごうこくいうて)ツボの王様みたいなツボなんよ。 乱れた気持ちを落ち着けて、体の流れも、それで整えてくれるツボやのし」 「せやさけ……んっ――(呼吸音)―― このまましばらく――ひよがこうしてあげるさけ。 あいやん。深呼吸したら、もっと気持ちが楽になるのし」 「え? ひよといっしょに? えへへ、あいやん、あいやんなのに甘えたさんやなー。 ええよ? ほんなら、いっしょに、な?」 「すってーーー (すーーーーっ) はいてー (はーーーーっ) もっかいすってー (すーーーっ) もっかいはいてー (はーーーーーっ)」 「ん! あいやんのおてて、またポッカポッカになったなぁ、 これならきっと、お手玉、上手にできるのし」 「ほんなら、な? もっかい、お手玉ためしてみよー? <足音>――あ、その前に――」 ;3 顔寄せささやき 「あいやん、ほんまにありがとねぇ。 “送り狼”のこと、ちゃあんと思うて、怖がってくれて」 ;10 「んふふっ? ほんなら、お手玉しよなー。 ひよな、おてだましやすいちっこいおみかん、 あいやんに選んであげるさけ」 ;環境音 F.O.