Track3 右耳のみみそうじ
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;Track3 右耳のみみそうじ
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;環境音。囲炉裏焚き火のみ
;SE ガサゴソ動いて、ひざまくら(体横たえる)
;3
「えへへへっ、あいやん――<さわさわ>
今度はお耳の穴の中まで、
ふぇいすまっさーじしたげるさけなー」
「今日はな? ひよな?
診療所から、ええもんわけてもろーとるのし」
;SE 綿棒の筒から綿棒取り出す
「んふふ? あいやん、これ知っとー?
……(呼吸音)――わ、さすがあいやん、
もう知っとったんねー」
「『綿棒』いうんな、これ――んふふっ――
ひよな? これでな? 診療所でおみみそうじしてもろて、
とーってもきもちよかったさけ。
あいやんにも、これつこぉてお耳のおそうじ、したげるな?」
;3口寄せ囁き
「(ふーーーーーーっ)――ん?
あいやん、ええこ。
お耳、ふだんからきれいにしとるねぇ」」
:3通常
「ほんなら最初は……ん……(呼吸音)――
ゆっくり、ゆっくり――<綿棒耳かき>――
ふ――(呼吸音)――ん……<綿棒>」
「これ……ん――<綿棒>――
掬ったり削ったりじゃなく――<綿棒>――
先っちょにくっつけて……(呼吸音)――よっ――
えへへっ、おっきいのとれたー」
「けっこうとれるもんやなぁ。
ほいたら……ん――<綿棒>――え?――
あ――<綿棒>――うん。いったよ? 診療所――
<綿棒>――おっきな道沿いの……ええと――(呼吸音)」
「ああそう。そこそこ、有島診療所――ん……<綿棒>――
あそこ、ええなぁ。ひよみたいなあやかしも――<綿棒>――ちゃあんと、みてくれはるもんなぁ――<綿棒>」
「え? ……(呼吸音)――あー、診療所にいったんはな?
んと――<綿棒>――ひよ、な、おひざ――<綿棒>――
ちとかいだけ、すりむいてしもうたことがあったんよ」
「ひよな? ふだんはふよふよ――<綿棒>――
お空に浮いて、飛んどるやんなぁ――<綿棒>――
けどな? おちびはんらが――<綿棒>――
『いいなー』やら、『せなかのせてー』らやら――<綿棒>――さわぐ、さけ――<綿棒>」
「おちびはんら――いうか――<綿棒>――
人間と、いっしょにおるときは――<綿棒>――
ふよふよ浮くかんと――<綿棒>――歩くように、しとるんよ――<綿棒>」
「ん……<綿棒>――ほんでな? こないだな?――
<綿棒>――
おちびはんが、ひよのお帽子いたずらしよってとりよったけん――<綿棒>――
『はよーにかえしー』って、おっかけっこになったんよ――<綿棒>――」
「そしたらな? ひよな? ん……(呼吸音)――
……ひよ、走ったりあんまり得意じゃなくて――<綿棒>――
地面の上だととろくさいさけ――<綿棒>――
ずでーってころんで……(呼吸音)――
おひざ、すりむいてしもーたん」
「ほんで、な? <綿棒>――
おひざ、痛ぉて――じんじんしてきて――びっくりして――<綿棒>――
ひよ、ちとかいだけ……(呼吸音)――なきべそ、かいてしもーたんよ。
そうしたら、な? ――<綿棒>」
「ん……<綿棒>――
ひよからにげまわっとった、おちびはんが――<綿棒>――
すっとんでもどってきて――<綿棒>――おぼうし、かえして――<綿棒>――
『ごめんなさい、ひよせんせえ、だいじょうぶ?』って――(呼吸音)――」
「おちびはんの方がさかしまに、泣き出しそーになってしもーて――<綿棒>――
なぐさめんとって思うたけどな? ひよ、おひざいたかったさけ――<綿棒>――
おひざいたいいうたら……<綿棒>――おちびはんらが集まってきて――診療所のこと――おしえて……ん――(呼吸音)――ちとかいまってな?」
「……<綿棒>――
ん……<綿棒>――
っと……(呼吸音)――
んんっ、ん――<綿棒>――」
「ああ、にげよった――(呼吸音)――
ほんなら……うん。
あいやん? ちとかいだけ、あご、もちあげてな?
あ、うん――そう。この角度で――
ん……<綿棒>――
と――<綿棒>――」
「あ、んっ――<綿棒>――
よぉし――(呼吸音)――っ――(呼吸音)――
えへへっ、奥にあったの、とれたのしー」
「ん……(呼吸音)――あとちょこっとできれいになるな――ん? あ、そうそう。
診療所の話の途中やったのし」
「んとな? ――<綿棒>――
それでひよ、診療所――<綿棒>――いってみたのし。
けどな? ひよ、送り雀――あやかしやさけ――<綿棒>――
おいはらわれるかもしれんなーって――<綿棒>――
ちとかい恐(おとろ)し思とって――<綿棒>――」
「で、診療所いったらな。
べっ甲の深い色みたいな――<綿棒>――
きれいな茶色の髪の毛しとる――<綿棒>――
おねーはんがいよってな?」
「『こんにちわぁ。今日は、どんなご用ですか?』って、
にっこにこ聞いてくれよったさけ――<綿棒>――
ひよもな? 『あ、これ、おとろしことないな』って思うて――<綿棒>――」
「『ひよな? あやかしやけど、おひざすりむいていたいさけ、いたくなくしてほしいのし』――って、おねがいしたのし――<綿棒>――
そしたらな? べっ甲の髪のおねえはん、な?――<綿棒>――」
「『はぁい。わかりました。それなら問診票を一緒につくりましょうね』って、いうてくれて――<綿棒>――
ほんで、な?――<綿棒>――」
「ひよ、あやかしやさけ……<綿棒>――
あいやんに教えてもろうてるけど――<綿棒>――
それでも字、まだ上手にはかけひんやんなぁ――<綿棒>――おねえはん、したら、な?――えへへっ」
「『字を書くのお手伝いしましょうか?』っていうてくれて――<綿棒>――
せやさけひよ、‘もんしんひょー”やらいうややこし書類――<綿棒>――ぜぇんぶ、ちゃあんと、残らずきっちり書けたのし」
「したらな? 『順番までおまちくださいねー』て、べっ甲の髪のおねえはん――<綿棒>――
ひよに、やさしういうてくれてな?
せやさけひよ――<綿棒>――おひざじんじん痛いけど――いいこで順番、まっとったんよ」
「しばらくたったら、
『ひよさーん、送り雀のひよさーん』って――
<綿棒>――
扉のむこーから、べっ甲の髪のおねえはんとは、また別の声が――<綿棒>――してきて、な――<綿棒>――っと」
「ん……(呼吸音)――うん。
あんな、あいやん? ちとかい待ってな?」
;3 口寄せ囁き
「(ふーーーーーーっ)――ん。
あいやんの右のお耳――んふふっ、
これですっかりぴかぴかやんなぁ」
:3 通常
「ほんなら、仕上げは、ちりがみ使こて――
<SE ティッシュ箱かたぬく>」
「やさしぅやさしぅ、お耳の中をふきふきしたるな?
ん……(ティッシュで耳内拭く)……
ふ……(ティッシュふき)――
んっ――(指に力いれて全体をごしごしやる)
――んふふっ――でぇきた」
「ほんならなー。次は左のお耳をやるのし。
したらな、あいやん? ひよが、合図をするさけな?」
「『いち、にい、ごろーん』ってひよがいうさけ……
ひよがいうたら――うふふふっ――
ひよのおひざの上であいやん、
ごろんして、左のお耳、上にむけてな?」
「ほんならな、合図するさけ……(呼吸音)――
『いーち、にーい、ごろーーーーん』」
;環境音FO